権限委譲すればマネジメント力の育成になる
つまり、“チームをマネジメントする”チームを作ってみるということです。
部下の中にも面倒見のよい人もいれば、近い将来管理職を目指している人だっているでしょう。そういう人たちに、「ぜひマネジメントを手伝ってほしい」「君のつけたい能力を身につけるチャンスだから、トレーニングとしてぜひがんばってほしい」とマネジメントの一端を担ってもらうことをお願いしてみれば、決して悪い気はしないのではないでしょうか。
実際、いきなり管理職になってマネジメントをするのではなく、公式には管理職ではなくとも一部の業務を任されてやってみる(もちろん責任は管理職にありますが)ことは、人材育成の観点からもとてもよいことだと思います。
そして、彼らとチームでマネジメントを行うことができれば、マネジメント力全体も向上していきます。
自分の管理能力を鍛えるのは「自分の上司」の仕事
さらに、ひとりで管理業務をしなくてもいいというのは「下」のメンバーに協力を仰ぐだけではなく自分の「上」を使うということもお勧めです。
自分の上司は当然ながら管理職経験の長い人が多いと思いますので、まずは自分の管理の仕方についてのコーチングやスーパーバイジングを受けてもよいでしょう。
自分の上司としても、部下である管理職がきちんと管理をできるという「成果」を実現することがミッションなわけですから、部下である管理職からのヘルプを無視はしないでしょう。
部下である管理職を管理職として育てることも仕事です。足りないところを代行してくれるかもしれませんし、いろいろコツを教えてくれるかもしれません。
どんな管理職でも足りないところばかり
要は「管理職は孤独だ」とか「ひとりで抱え込む」とかせずに、部下でも上司でも使える周囲の人は誰でも使って、結局自分がすべきマネジメントを実現すればよいのでは、ということです。
私も多くの管理職の方々を対象にマネジメント研修などをこれまでやってきましたが、そもそも完璧な管理職などほとんどいません。
誰もが何かが足りない(私自身もそうですが)ので、それをなんとか補いながら頑張っているという人がほとんどです。
管理職層対象の360度評価サーベイ(マネジメント力のさまざまな項目について部下や周囲が評価する)などをする会社も多くありますが、みんな凸凹の結果です。
チームで仕事をする意味は「助け合い」
管理職に限らずですが、組織で仕事をする意味は、凸凹な人間同士が補いあって、助け合って、組織全体としては立派な成果を上げていくということにあります。
そういう「組み合わせ」でチームの力を最大化することこそが、管理職の仕事の本質と言ってもよいかもしれません。
そういう仕事をしていながら、管理職である自分だけは完璧でなくてはならないと思うと、「自分は管理職に向いていない」と悩んでしまいます。管理職である自分だって、誰かに補ってもらえばいいのです。
「辞めたい」と思うくらいなら、管理職の仕事をある意味誰かに「押し付けて」(要は役割分担、権限委譲ですが)しまい、集団指導体制を作ってしまってはいかがでしょうか。