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2022.12.25

たべる

東京・三軒茶屋で新しいタコスの定義に挑戦する、メキシコ人シェフに迫る



当記事は「FUTURE IS NOW」の提供記事です。元記事はこちら


タコスが、新たな食カテゴリーとして取り上げられることが増えています。東京・三軒茶屋にある〈ロス タコス アスーレス〉は、タコスの再定義に挑戦するメキシコ料理店です。

古くからの伝統的な製法と日本の食材で、手軽なタコスとはひと味ちがう、新しいタコスを提供しています。そんな彼らが、2020年の外出自粛中に始めたサービスは、手巻きタコスの〈サバイバルキット〉。

ボックスの中には、自宅でタコスを楽しめるセットが入っています。そんな彼らに、タコスの未来、そしてコロナウィルスの影響と、その先のビジネスの可能性についてお話を伺います。

日本で人気のタコスは、本物のメキシコ料理ではない?



2018年にオープンした〈ロス タコス アスーレス〉の店主、マルコ・ガルシアさんが日本にレストランを開いた理由のひとつは、本物のタコスを紹介することでした。

「日本にあるほとんどのタコスは、アメリカ経由のメキシコ料理“テックス・メックス”です。メキシコには、ハードシェルのトルティーヤはないし、ブリトーもそんなに食べません。それに、日本のスナックや調味料に〈タコス味〉がありますが、タコスはトルティーヤで包んだ料理のこと。味付けのことではないんですよ」。

ガルシアさんは、昔ながらの「ニクスタマル」という製法で、タコスを作っています。メキシコの在来種のとうもろこし〈ブルーコーン〉をアルカリ性の水で茹で浸け置きし、お店で製粉して、1枚ずつ手作業でトルティーヤを焼き上げます。

メキシコの在来種のとうもろこしブルーコーン

メキシコの在来種のとうもろこしブルーコーン


「メキシコには、かつてマヤやアステカなど、たくさんの民族と文化がありました。食文化も地域ごとに多くのバリエーションがあったのですが、その中心はとうもろこしです。

メキシコ人にとって、日本人のお米と同じようなもの。とうもろこしは神聖なものなんです。現在は、大量生産・大量消費の時代になり、メキシコ在来種のとうもろこしは減少し、安価なとうもろこしを使ったトルティーヤに変わりました。手作りをする家庭も少なくなりました」。



その中でガルシアさんが伝統的な製法を守るきっかけになったのは、日本への留学と、メキシコ料理研究家のダイアナ・ケネディさんとの交流でした。

「東京は食べ物の聖地です。和食だけでなく、世界中の美味しいものが集まっていて、何を食べてもおいしい。三軒茶屋だけでも、これまでの人生で一番おいしいお店がいくつもあります。でも、メキシコ料理だけは飛び抜けて美味しいお店には出会いませんでした」。

留学を終えてメキシコに戻り、ケネディさんに、昔ながらのブルートルティーヤの作り方を教えてもらう機会がありました。それは、これまで食べていたものとは全く違う、食感も香りもいいトルティーヤでした。

「こんなにおいしいタコスがあるなら、世界にもっと広めたい。日本の食材を使ったら、もっとおいしいタコスが作れるんじゃないか。そう考えて、東京にお店を開きました」

“モダンメキシカン”が食のトレンド。世界中で進化するタコスとメキシコ料理



ガルシアさんは、現在、岩手の短角牛や豚肉、パクチーや大葉、山椒など、日本の食材を使ったタコス作りに取り組んでいます。

「サスティナビリティのことも考えて、日本の食材を使っています。日本の食材を使っているので、“和タコス”と呼ばれることもありますが、それは少し違います。ニューヨークの和食店の寿司は、“アメリカンスシ”ではないですよね。それに、タコスもトルティーヤで包めば、具はなんでもいいというわけではありません。

例えば、おにぎりの具がバナナやチョコレートだったら違和感を感じるでしょう? それと同じように、僕のタコスも、あくまでメキシコ料理のセオリーに則しています。これは何千年もの長い時間をかけて、極められたものですから。ただ、メキシコから来たお客さんは、ここのタコスを食べたら驚きますね」。

ガルシアさんのように、新しいタコスへの挑戦は、今、世界中で起こっています。伝説的なレストラン〈NOMA〉の元副料理長・ロシオ・サンチェスは、コペンハーゲンでメキシコ料理をベースにしたレストランを開きました。

アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリアなどでも、“モダンメキシカン”がトレンドになっています。



「僕のお店もそうですが、タコスをコースで出すお店も増えました。日本料理の影響か、おまかせコースのあるお店もあります。僕のお店も、ディナーではそうしています(※現在夜は別店舗で営業)。

タコスも寿司と同じで、回転寿司のようなカジュアルなものもあれば、高級なものもあります。ストリートフードのタコスだけではなく、ぜひ多くの方に丁寧に作られたタコスも体験してほしいと思っています」。

アフターコロナの食文化は、環境や健康の意識が高まっていく



世界でメキシコ料理が注目される中、新型コロナウィルス感染が拡大し、各都市でロックダウンや外出自粛などの対策が行われました。

飲食店も休業を余儀なくされる中、ガルシアさんのお店では、〈サバイバルキット〉の販売という新たな試みを開始しました。

「お店で提供しているものと同じ、メキシコ在来種のトルティーヤと、4種類のタコスの具、2種類のサルサや、豆のシチュー、カヘータというキャラメルをセットにしています。

一般的な宅配システムではなく、お店のウェブサイトで販売しているのは、手間のかかる料理なので大切に食べて欲しいから。今、レストランはどこも苦しい時期ですが、東京の豊かな食文化は街の魅力です。どうにか乗り越えていきたいと思っています」。



ガルシアさんは、未来の食には、環境と健康という2つのキーワードがあるのではないかと語ります。

「生産者の方から聞いた話では、温暖化の影響で、今、食べている野菜は育ちにくくなり、将来はより暑い地方の作物が栽培されるようになるそうです。

メキシコのように、様々な種類の唐辛子やサボテンなども食べるようになるかもしれません。そして、今回の新型コロナウィルスの影響で、健康志向も強まるでしょう。とうもろこしは消化にいいので、タコスが日本に定着する可能性はあります」。

それでは、5年先、日本におけるタコスの未来はどうなっているでしょうか。

「タコスを始め、メキシコ料理がトレンドに終わらないことを願っています。10年前、インド料理のミールスを出す店はわずかでした。5年先は、メキシコ料理も今のインド料理くらい認知が広まって、地方料理の専門店が登場したら嬉しいですね。

今、日本で料理人を目指す人は、フランスやイタリアで修行しますが、5年先はメキシコに行く人が現れるかもしれませんね」。

Profile



マルコ・ガルシア

メキシコ・モンテレイ出身。上智大学に留学し、日本の食文化に触れる。帰国後、メキシコで郷土料理を食べ歩き、ダイアナ・ケネディさんの作るブルーコーンのトルティーヤに出会う。2011年、メキシコ・モンテレイでタコスのお店をオープン。2018年、東京・三軒茶屋に〈ロス タコス アスーレス〉をオープン。ブルーコーンから作るタコスが、大きな話題になる。https://www.lostacosazules.jp/
LOS TACOS AZULES
住所:東京都世田谷区上馬1−17−9
最寄の駅:三軒茶屋(徒歩8分)
営業:朝タコス 水〜金 9:00am-3:00pm (LO2:00pm)
土・日 9:00am-4:00pm (LO3:00pm) (アラカルト、予約不要)
電話番号:03-5787-6990

※夜はTACOS BARで営業中(完全予約制)


記事提供:FUTURE IS NOW

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