ブランドや百貨店の垣根を越えたムーブメントを生むデニムの力
始めの一歩は、古着ならではの臭いと汚れを落とすこと。しかし洗濯代行業も手掛けるプロフェッショナルのノウハウを持ってしても、その臭いと汚れはきわめて手強いものだった。
「まず自社設備で洗ってみましたが、全然落ちなくて。素材をきれいにしなければ何も始まらない。洗い方を模索し、洗濯用洗剤を作っている知人に力を借りて、オリジナルの洗剤を開発しました」。
オーガニックな原料にこだわりつつ、デニムの汚れや臭いをしっかり落とす洗剤も開発。オンラインストアから購入も可能。左から洗剤3300円 600ml、洗剤1980円 100ml、アルカリイオン水1408円 500ml/すべてワンオーファイブ・デニムトウキョウ(ヤマサワプレス 03-5242-8377)
洗濯時に使用する馬毛ブラシ。地元足立区の「ブラシの平野」が製作した。
洗剤を入れた桶に「501」を半日漬け込む。次に洗剤を吹き付けながら、馬毛ブラシで丁寧に汚れを落とす。そして洗濯機で洗う。
最後は一本ずつ、ハンガーに吊るして天日干しだ。オートメーションではなく、すべて人の手で行う。
洗濯後の天日干しの風景。破れやほつれを丁寧に補修した、デニムパンツとしての「501」も販売している。程度により異なるが価格は3万円前後。
続く工程がデニムの分解。頑丈に縫い付けられたステッチを、目打ちのような道具を使い丁寧にほどいていく。左右前後の脚、ポケット、袋布、前立て、ベルトループといったパーツが取れる。
これもすべて手作業。このパーツが服の素材となる。
「最初に作った製品はダブルのライダーズジャケット。これは私のこだわりで、若い頃からライダーズが大好きだったんです」。
「501」のブラックデニムから作ったライダーズジャケット。オーセンティックなデザインが我々好みだ。14万8500円/ワンオーファイブ・デニムトウキョウ(ヤマサワプレス 03-5242-8377)
「501」を購入してから約1年が経過した’20年9月にブランドをローンチ。同時に、工場に隣接するスペースにショップをオープンした。これも自分たちで内壁を塗るなどした手作りのスペースであった。
ちなみに取材時(9月末)は改装中だったが、10月中にリニューアルオープンを果たす予定。ぜひとも実際に訪れていただきたい。
ブランドとしてのターニングポイントは、三越伊勢丹のバイヤーとの出会いだ。ワンオーファイブの噂を聞き、紹介を経て、工場を訪ねてきてくれたのだとか。この出会いがワンオーファイブの知名度を上げる契機を生む。
「デニムに対する思いをいろいろとお話ししました。これが今年の3月に伊勢丹新宿店で開催された『デニム de ミライ』実現の第一歩。
このイベントで70以上のブランドやアーティストが、ワンオーファイブのデニム生地を使ってリメイク作品を作ってくれたんです」。
今年3月に伊勢丹新宿店で開催された「デニム de ミライ」。ウィンダンシーやファセッタズムなど、70を超えるブランドやアーティストが参加したプロジェクトだ。積み上げられているのはワンオーファイブの「501」。いちブランドとしてもリメイクデニムやジャケットを発表。
三越伊勢丹、阪急阪神百貨店などの大手百貨店が企業の垣根を越えて開催したこのイベントの成功により、ワンオーファイブの名前は一躍全国区に。この取り組みは今年9月に発表された第40回毎日ファッション大賞で、話題賞を受賞した。
「ファッション業界の方々は誰もが、私と同じようにデニム好きなんです。だからこそ、ワンオーファイブの考え方に共感してくれたのかなと。『501』がつないでくれた縁だと思っています」。
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