プラスチックの代替素材「TIPA」をパッケージに採用。生ゴミ処理機などで生分解可能な、土に還る素材だ。
▶︎すべての画像を見る 以前オーシャンズでは
“注目の海外スウェットブランド”としてパンゲアを紹介した。
ベーシックなデザイン、豊富なカラーリングとサイズ展開。誰もが気負わず着ることのできる“ネクスト日常着”である。
しかしながらその服を裏側から覗いてみると、最先端の科学技術の結晶であると理解できる。
イノベーティブな素材開発こそパンゲアというブランドの核心部。その技術部門の責任者であるCIO兼共同創業者のアマンダ・パークスさんが、設立の経緯から語ってくれた。
科学とファッションの懸け橋となるブランド
取材に対応してくれたアマンダ・パークスさんはパンゲアのCIOであり、創業メンバーのひとりでもある。スタンフォード大学で機械工学と美術史を修め、MITメディアラボで博士号を取得。多くのテクノロジー企業やアパレル企業で製品開発のキャリアを重ねてきた、筋金入りの研究者だ。
「パンゲアが生まれる前の’18年当時、世界中の研究所や小さなスタートアップでは、画期的なマテリアルが続々と開発されていました。
しかしながら、このようなイノベーションが商業的、直接的にファッションと結びつくことはほとんどなかったのです。
そこで他の創業メンバーとともに、科学とファッションの懸け橋となるようなブランドをスタートしたというわけです」。
アマンダさんのような研究者をはじめ、アーティスト、デザイナー、ファイナンス、マーケティングといった各分野のプロフェッショナルがパンゲアに参画。
’18年11月、LA・ロングビーチで開催されたストリートファッションのイベント「コンプレックスコン」にてブースを出展すると、リサイクル素材をメインに使用したTシャツやパーカを発表。パンゲアの名はSNSを通じて全世界に発信され、一気に知名度を高めたのである。
車や煙突などから排出される煤を集めたのち、重金属を除去するなど精製して作られた「エアインク」。これを胸のメッセージ部分のプリントに使用している。生地はリサイクルコットンとオーガニックコットンの混紡素材。参考商品/パンゲア https://pangaia.com
パンゲアが他のファッションブランドと大きく異なるのは、自社にいわゆるR&D、研究開発部門を設けている点だろう。
一般的なアパレル企業は、製品に使用する素材をテキスタイルメーカーや商社から調達する。だがパンゲアでは素材開発から加工にいたるまで、常にサステナブルをキーワードに独自の研究を重ねているのだ。
「その場所を私たちは“パンゲア・ラボ”と呼んでいます。まさに素材開発の中枢ですが、科学的なコミュニケーションを拡大するための役割も果たしているんです。
例えばこうした取材に対する対応もそう(笑)。気候変動という大きな課題の中で、消費者へのメッセージやファッション業界全体へのイノベーションを促進することも、ラボの重要なミッションなのです」。
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