まずは「中心地づくり」を
横瀬町は、豊かな自然が魅力の秩父エリアに属する。秩父エリアは、コロナ前までは年間で900万人以上の観光客が訪れ、コロナ禍でも80万人ほどが観光に訪れる人気観光地だが、横瀬町は人口8000人を下回る消滅可能性都市でもある。
そのため富田能成町長は、人口減少を喫緊の課題とし、多様性を実現する「カラフルタウン」を掲げてまちづくりに取り組んでいる。2016年には、町に人や事業やアイデアを呼び込むことを目的に、プロジェクト誘致の仕組みとして官民連携プラットフォーム「よこらぼ」を立ち上げ。実証実験に至ったものも含め5年で100以上の採択をしている。
よこらぼを通して、関係人口の拡大や、若年層の町への流入が少しずつ実現してきたため、その流れを深化させるべく、次に力を入れているのが町の「中心地づくり」だ。その中核を担っているのがLAC横瀬である。
LAC横瀬
「駅や役場から近く、町民会館や小学校もある中心地エリアの形成を進めてきたのですが、このエリアの中心にあったJAが支店統合の流れでなくなることになり、もぬけの空になってしまうということがわかって。そこでその場所を利活用できないかと考えました」(富田町長)
そこでまず、2019年に開設したのが町内外の人が交流できる公共施設「Area898」を開設。横瀬町役場まち経営課が入っているほか、自習やワークショップなど様々な用途で利用でき、オープンから1年で約4000人が訪れた。そして2022年5月、その隣にLAC横瀬を誘致した。
「Area 898は“官”が運営するスペースなのですが、我々はこれまで官民連携を進めてきたこともあり、もっと官民の隙間を埋めていきたいという思いがありました。そこで民営のLACを隣同士につくり、壁をなくせばいいのではないかと考えました」
Area898
実際に2つの施設はフロアがつながっている。LACのコミュニティスペースも、キッチンを含めて誰でも利用できるオープンなスペースになっているため、物理的に官民の交流が促進される。LAC側には一部宿泊者向けのワークスペースがあり、一般利用は1日500円となっている。
そこでは、LAC横瀬のコミュニティマネージャーで横瀬町の地域おこし協力隊でもある新堀桂子が、その交流に一役買っている。
「Area 898に町役場の方が常駐していたり、町長や副町長が日常的に足を運んでくださったりしているので、宿泊者の方とすぐにおつなぎしています。そこでの会話がビジネスにつながる、なんてケースもあります」
LAC横瀬の利用者は、毎月50人〜100人ほど。短い人は2、3日〜10日、長い人は数カ月単位で滞在する。通常のワーケージョン利用に加えて、新しいビジネスアイデアやライフスタイルを求めて来る人も多い。
LAC横瀬の宿泊スペース
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