ビジネスアイデアが生まれやすい場所
LAC横瀬で過ごす一日は、刺激的だ。周辺に豊かな自然があるため、棚田や川などに散策に行ってから気持ちよく仕事を始めることができる。
ランチは、飲食店で地元のグルメを満喫し、夜は他の宿泊者や町の人と交流しながら食事を楽しむなど、宿泊者たちは思い思いの毎日を送っている。
「地元の農家さんたちがよく野菜を提供してくださって、夜はそれを料理好きの方が率先して調理をしてくださることが多いですね。
『一緒に食べませんか』と声を掛けていただき、皆で集まっていただいています。先日はダンボール箱いっぱいにジャガイモをいただいたので、肉じゃがやみそポテトにして楽しみました」(新堀)
LAC横瀬のキッチン
週末には、宿泊者が企画したものづくりのワークショップや交流イベントなどが開催されることもある。フロアには寄付されたグランドピアノや電子ドラムもあり、音楽演奏が行われることもあって賑やかだ。
こうした宿泊者の動きについて、LACの事業責任者を務めるLIFULLの小池克典は「まさに狙い通り」と話す。
「東京で仕事をしていると、会議やイベントで名刺交換をする機会は多いのですが、結局そこから何か生まれることは少なくて。仕事が終わった後、雑談や食事をしているときに、人として好きになっていくことで、ビジネスでも連携できることが多いと思います。コリビングは、オンの時もオフの時も同じ場所にいれるので、何かが生まれやすい。そこが魅力なんです」
実際にここから形になったアイデアもある。7月、LACの隣接地に開設した不登校の子供たちにも開かれた教育機会を提供する場所「ナゼラボ」が開設された。放課後やイベントなど、地域に開かれた機会も設けられているため、教育や児童福祉関係の仕事をしている宿泊者が来訪し、新しい動きにもつながっている。すでに1人、ナゼラボを「科学コミュニケーター」としてサポートをしてくれる人も現れた。
「横瀬町の住民の皆さんが中心にいるコミュニティスペースがArea898。ビジネスの方が集まるのがLAC横瀬。そして教育が軸になっているナゼラボ。この3拠点で人が交流できる流れをつくっていきたい」(富田町長)
法人単位での契約も
横瀬町の人口は、40年後には2600人ほどに減少すると推定されている。富田町長はそれを食い止めるために、20年後に5500人くらいで下げ止まりさせ、人口が安定して皆が幸せに暮らせる状態をつくりたいという。
そのために今後は、中心地の活性化とともに、経済循環の構築にも力を入れる。町の中に増えつつあるLACなどの「拠点」を軸に、経済が回るように働きかけていく。その役割を担うのは、2021年9月に設立した地域商社「ENgaWA」だ。地元の特産物を活用した商品開発やサービスの運営などを手掛けている。
横瀬町に広がる棚田
LIFULLの小池によると、LAC横瀬には大手企業から法人単位での契約の相談も来ていて、ますますの活性化は見込めている。
「地域とのネットワークが構築できたり、すでにプロジェクトが走ったりしていることが、横瀬の売りになっています。我々としても、関係人口を増やすお手伝いをして、経済循環の構築に貢献していきたいと思います」(小池)