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2022.09.10

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人生の壁は「壁ではなく山と捉えれば越えられる」裏千家茶道教授・北見宗幸さんの言葉

当記事は「The Wordway」の提供記事です。元記事はこちら(第1回第2回)。

「昨日の自分を超える」をテーマに各界のトップランナーの言葉を音声とともに届けるメディア『THE WORDWAY』。音声を楽しみたい方はオリジナル版へ。

今回のアチーバーは、一般社団法人茶道文化振興会理事長で裏千家茶道教授の北見宗幸さんです。

豊臣秀吉から、「茶聖」千利休が相談役として重用されたように、現代においても経営者や組織のリーダーたちがこぞってヒントを求める「茶」の世界。茶道文化発展のために幅広い活動をされている北見さんが考える、ビジネスに通じる茶道の教えとは何なのか―。

鎌倉時代から脈々と受け継がれてきた伝統に宿る「WORD」から、人生を豊かにするヒントを見つけてください。

言葉①「相手を喜ばせるために、その人の心を読む」

Q:「茶道」については、多くの人が漠然としたイメージは持っているものの、実際に触れた経験がなく、どこか難しそうという印象を持っているのでないかと思います。そもそも茶道とはどういったものなのでしょうか?

茶の道ですよね。まず道がつくというのは、柔道、剣道、武道、分かりやすく言うと、お寺さんで修行してるような思い、そこからのスタートですよね。

新しい人たちはそれを自分の道のように考えてしまうんですけど、元々は本来の道があって、そこに私たちが歩いている。それがたまたまお茶であったということです。

お茶の世界で言えば、いろいろな飲み方、お辞儀の仕方、そういうところから最初はスタートし、最終的にはお点前して、お茶をたてられるようになるところが目標ではあります。ただ、もっと深い目標がその道の中にはあるということです。



Q:作法を習得するだけが目的ではないということですね。

昔は、家に人を招き入れるというのは、その家が「うちは穢れてませんよ」っていうのを表す意味だったんですよ。客側も「汚れてません」と言って、その家に入るんです。そして、酒を飲む。それは、この家の水は汚れてないぞってことなんです。

そこから、喫茶法が入ってきて、1200年ぐらいからお茶を出すようになったと。つまり、日本人がお茶を出すというのは、「自分の家が汚れてないですよ」っていう意味で、アメリカとかのティータイムとは少し意味合いが違うんです。



Q:北見さんのもとには、多くの企業のトップが茶道を学びに来ていると聞きました。彼らは何を吸収しようと考え、また北見さんはそういった方達に茶道の何を伝えようとしているのですか?

お茶をやっているイメージっていうのは、利休と秀吉なんですよ。秀吉は天下を取っていて、利休は天下を取らせているんですよね。

お茶の先生というと偉いというイメージですけど、そうじゃなくて、天下を取る人たちをサポートしているのが茶人であり茶道なんです。そういった人たちが茶室で、どうして心を強くするのかというと、人の心を読むためなんです。

ほんの少しの所作でも相手の心が見えてくるし、例えば足が痺れてる人、少し動いたり、汗をふっと拭こうとしたり、それだけの所作で「あれ?暑いのかな?足痺れてるかな?」というのが分かるんです。



Q:茶道を学ぶことで、具体的にどうして相手の心が読みやすくなるのですか?

それは相手に美味しいお茶を出したいからです。普通のホームパーティーと一緒ですが、茶道にはそこにルールがある。そのルールの中で動けるっていうことは、余計心が読みやすいんですよ。

茶室でやると言えば、畳じゃないですか。だから来る人は「正座だな」と思う。そうすると正座に対して、どういう思いで皆さんが来るかなと考えるじゃないですか。そこで椅子が出ていたらどうですか。大喜びでしょう?…ということを考えるわけです。



Q:そういう能力の成長につながるから、ビジネスの世界の人が茶道を求めるのですね。

相手の心、どう思っているかという意識ですよね。相手と会って交渉するにしても同じです。ビジネスは1回きりで次はもう会わないって響きがあるように感じますが、商売は「商い(あきない)」。飽きさせないことで次もまた来てもらうというところがありますよね。

この時しかないから、最高のおもてなしをするんだっていうのが一期一会なんですけど、私はそうではなくて、もう1回会いたいと思ってもらうために最高のおもてなしをするっていう、一期一会があってもいいと思うのです。



Q:北見先生は伝統を守ることで、世の変化も美感に感じてこられたと思うのですが、時代とともに人と人の接し方、一期一会にも変化を感じることはありますか?

次の世代、今の10代の人達って、一期一会に気づかないんですよ。授業でも頭の中に入らない子が多いんですが、その原因の一つは携帯電話、スマートフォンだと思うのです。

何でも検索できるから、後から調べられると思ってしまいます。人の話を頭の中に入れようとしない。テレビよりもYouTubeで見るでしょう。すると、自分の見たいところに飛べて戻せるから、全部自分中心に動けるのです。

そうすると、この一瞬で話している時の、この一期一会のこの空間から逃げることができるのです。そして、大事なことに気づかないで終わってしまう。それが次の世代かなと思うのですよ。


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