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2022.07.16

ライフ

五輪3大会連続メダルを獲得した渡部暁斗の言葉「今この瞬間を充実して生きたい」

渡部暁斗

渡部暁斗


当記事は「The Wordway」の提供記事です。元記事はこちら(第1回第2回第3回)。

「昨日の自分を超える」をテーマに各界のトップランナーの言葉を音声とともに届けるメディア『THE WORDWAY』。音声を楽しみたい方はオリジナル版へ。

今回のアチーバーは、ノルディック複合・オリンピック3大会連続メダリストの渡部暁斗さん。

渡部さんは、2006年のトリノオリンピックに17歳で出場し、3度目のオリンピックとなる14年ソチ大会では個人ノーマルヒルで銀メダルを獲得。17年シーズンには、日本人2人目のワールドカップ個人総合優勝を果たし、世界から尊敬を集める「キング・オブ・スキー」の称号を得ました。

ワールドカップでは初優勝した11年シーズンから8年連続で3位以内を記録。18年平昌オリンピック、今年の北京オリンピックでもメダルを獲得するなど、長く世界のトップとして戦い続けてきました。

安定した成績を残すために必要な浮き沈みの少ないメンタルの保ち方、「成長」ではなく「変化」を求める考え方とはー。

渡部さんの「WORD」から、目標に向かい、昨日の自分を超えるヒントを見つけてください。

言葉①「過去も未来も関係ない。今この瞬間にフォーカスして生きていく」

Q:今年の北京オリンピックでは3大会連続メダル獲得という偉業を果たされました。5度のオリンピックを経験し、10年以上世界のトップで戦い続けてこられた中で、高いレベルで安定した結果を残し続けるために、大切にしてきた考え方のようなものはありますか?

「遊び心」は常に忘れないようにしてますね。何かに真剣に取り組んだり、やり始めると、どんどんやることが固まって、視野が狭くなってしまうと思うんです。

そこで、ちょっとした遊び心みたいなのを忘れないようにすることで、可能性の幅が広がっていく。本来その可能性の幅はあったはずなのに、自分でどんどん幅を狭めてしまうのを、なるべく解放しながら進んでいった方がいいなと思って、やっています。

Q:そういった「遊び心」の大切さに気付いたり、自分を客観視する力は、いつ、どのように習得されたのですか?

高校生になったぐらいですかね。高校に入ったタイミングでコーチがいなかったんですよ。僕は白馬高校というところなんですが、本当はスキーの名門と言われる高校に願書を提出しようとしていたんです。

ただ、提出の1週間前に、白馬高校の先輩から「暁斗、その高校に行ったら、短期的には強くなるかもしれないけど、俺はそこの選手を見てても、コーチに言われたことしかやってないし、本当に強くはなれないんじゃないかと思う」って言われたんです。

その言葉にハッとして、急きょ先生に「高校、変えます!」って。

Q:高校時代だけでなく、世界のトップ選手としては珍しい、キャリアを通じてコーチを付けずに競技を続けてきたそうですが?

そうですね。今も特定のコーチはいなくて、基本的にトレーニングは全部自分で決めています。あの時の先輩の言葉がなかったら、何も考えてない選手で、今ここにいないかもしれないですね。



Q:新たな挑戦を始めると、すぐに結果が欲しくなる人も少なくないと思います。どのように自分と向き合えば、やっていることに自信が持てますか?

ピラミッドを立てるのを想像してもらえばいいと思うんですけど、まず裾野を広げないと、積み上げていく「高さ」が出せないじゃないですか。

下が広ければ、最初は全然高く積み上げられないけど、それが最終的には大きいピラミッドになるみたいなイメージ。そういうイメージを持ってると、一見何をやってるか分かんないんだけど、最終的にはアイツが一番高いとこにいるっていう感じになるんです。

Q:自分が変わるためには、先を見すぎずに、今の「変化」に敏感になることが重要だということですね。

そう思います。過去も関係ないし、未来もあんまり関係なくて。正直明日死ぬかもわからないじゃないですか。人間なんて、生きてれば誰しも。

だからこそ今この生きてる瞬間っていう所に一番フォーカスして、そこを一番充実して生きた方がいいなっていうのは自分の中で常に思っていますね。


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