OCEANS

SHARE

  1. トップ
  2. あそぶ
  3. 家族の命を守る“川遊び”のマスト知識を専門家に聞いた「流されたら無理に泳がないで」

2022.08.13

あそぶ

家族の命を守る“川遊び”のマスト知識を専門家に聞いた「流されたら無理に泳がないで」



夏休みは山でバーベキューやキャンプを楽しむ人も多いだろう。肉や野菜で腹を満たし、冷えたスイカをかじったら、そのまま目の前の川にドボーンッ!……まさに理想的な夏の1ページである。

しかし、浮かれすぎには要注意。実際、川遊び中の事故は連日のようにニュースで報じられているのをご存知だろう。

そこで今回は、水難学会の理事で、東京海洋大学准教授の田村祐司先生にインタビュー。「万が一に備えて覚えておきたい川での心得」について話を聞いた。
田村祐司●東京海洋大学准教授。「マリンスポーツ実習における海洋体験が受講生に与える影響」など論文多数。水難学会の理事も務める。

そもそも、川で遊ぶのに適した服装は?

出典:河川財団『水辺安全ハンドブック』

出典:河川財団『水辺安全ハンドブック』


まず、同じ水遊びとはいえ、川と海では環境が大きく異る。
advertisement

海と違い、川は岩や人工物などの障害物が多いのが特徴です。また、川底は苔などで非常に滑りやすく、転びやすいので、水中でも滑りにくいリバーサンダルやヘルメットなどがあると安心です。

また、川釣りなどで直接水に入らない場合でも、水辺に近づくときはライフジャケットを着けましょう。これが川での死亡率を下げる最も効果的な方法です」。

河川財団『水辺安全ハンドブック』より。

(左)水際でおすすめの装備、(右)水に入るときのおすすめ装備。出典:河川財団『水辺安全ハンドブック』


水難事故の死因で大きな割合を占めるのが「溺死」。当然ながら、人間は水中では呼吸ができない。海水と比べ、川の水は浮きにくく、大きく息を吸っても体の数%程度しか浮くことができない

それでも、ライフジャケットさえ着用していれば、頭部が水面から出て呼吸は確保でき、生存率は跳ね上がる。「ライフジャケットなんて大袈裟だよ」などとは、ゆめゆめ思わぬよう。

出典:河川財団『水辺安全ハンドブック』

出典:河川財団『水辺安全ハンドブック』

もしも川に流されてしまったら……

ではもし、ライフジャケットを着ないで川に流されてしまったら……。

「流れが速いところでは人間の力だけで脱出するのは非常に難しいのが現実です。泳いで体力を消耗するのではなく、とにかく沈まないよう“仰向け”になって浮くことに専念して、救助を待ちましょう。その際に実践して欲しいのが『背浮き』です」。

背浮きの体勢(海上保安庁 HPより引用)

背浮きの体勢(海上保安庁 HPより引用


「背浮き」とは、大きく息を吸って、浮力を得た状態で口と鼻を水面から出し、呼吸を確保する浮き方のこと。背浮きさえしていれば、即座に溺れる可能性は低い。

「背浮きは、あごを上げてお腹を突き出す姿勢がポイントです。普段からプールで練習しておきましょう」。

流れが弱くなり、足がつくポイントに辿り着けばゆっくり上がるべし。焦って自力で泳ごうとすれば、体力が削られ、最悪の場合溺れてしまうかもしれない。冷静さを忘れないよう、事前にイメトレしておこう。

万が一、家族が流されてしまったら……



では、家族や友人が流されてしまった場合はどうか。

自力で救い出そうと川に入ることだけは絶対にNG。二次災害の可能性が高まってしまうだけです。とにかく近くにある浮きそうなもの(浮力体)を投げてあげましょう。オススメは大きなゴミ袋などです。

そして、すぐに119番に電話し、場所と状況を伝えて救助を要請してください。110番(警察)に電話しても、消防に共有して救助を呼んでくれるので、どちらでも大丈夫です」。

また、「目を離さない」ことも重要だと田村先生は指摘する。

「川の流れは思っている以上に速いので、ちょっとでも目を離すと対象者を見失う可能性があります。常にひとりは対象者を見ておくようにしてください」。

もちろん、これだけの役割をひとりで担うのは至難の業。緊急時には周りの人と声を掛け合い、協力して救助活動を行おう。
2/3

川で特に危険な場所はどこ?

出典:河川財団『水辺安全ハンドブック』

出典:河川財団『水辺安全ハンドブック』


もちろん、装備さえ整えれば安全というワケでもない。川によっては、入水そのものをやめたほうがいい場所もある。

「深い川や流れの速い川は危険だ、という認識は多くの方が持っているかと思います。しかし、川は天候などの影響で流れや水深が急激に変化する場所も多く、それはなかなか水上からは判別しづらいものです。

ですから、たとえ穏やかに見える場所でも急に近づかずに、よく確認してから入ることが大切。また、堰堤や関といった人工建造物の周りも複雑な流れが発生しやすいので、近づかないようにしましょう」。

田村先生によると、特に危険なポイントは以下のとおり。
advertisement

①「流れの中に白波や泡が立っているところ」
水中の岩などの障害物に流ればぶつかって波が生じていたり、急な落差で波が生じている危険性が。無闇に近づかないようにしよう。

②「川の幅が狭くなっているところ」
岩と岩の間など、急に水路が狭くなっている場所は下流に向かって吸い込まれるように流れが早くなっており、流される危険性も高し。

③「堰堤(堤防)」
堰堤とは、川を横断する背の浅いダムのこと。落差で滝のような流れが生じる。水流も複雑で、下流側から上流に向かう流れが発生していたり、滝壺のように底が深くなっている場所も。

④「川底が見えないところ」
川底は岩や溝で複雑に形成されている。水面は穏やかに見えても、水中の流れは激しいケース。濁っているところや底が見えないところでは泳がないこと。

⑤「水際にある大きな岩や崖」
川に面した大きな岩や崖。その水面下の部分は、水の流れで大きくえぐれている場合がある。岩の下に向かって強力な流れが発生しており、近づくと引きずり込まれる可能性も。

⑥「中洲」
川の中に存在する陸地(中洲)部分は、増水時に水没してしまう可能性がある。あまり近づかず、間違っても中洲でテントを張ることなどは避けよう。

とは言え、その土地に不慣れな人がいきなり見ても状況判断は難しい。基本的にはキャンプ場で指定された遊泳地など、安全な場所以外での遊泳などは避けよう。
3/3

次の記事を読み込んでいます。