▶︎この記事の画像ギャラリーを見る 古い車が好きなオーシャンズ読者は多いだろう。でも旧車はよく壊れるし、修理も整備も大変。燃費なんて、“逆に”凄い数字を叩き出してくれる。
そんな自分の愛すべき車が、フォルムはそのままに電気自動車に改造できるとしたら……。
旧車電動化の“駆け込み寺” オズモーターズの古川 治さん。ちょうど車検で入庫したビートルの電気自動車と。
実は筆者は約5年前、フィアットの1995年式パンダを電気自動車に改造して乗っている。
この“電気パンダ”を5年前に製作し、今や全国の個人や企業からさまざまな“EV化”の相談を受けるオズモーターズの古川 治さんに、最新の電気自動車カスタム事情を教えてもらった。
古いビートルにポルシェ、ランクルもミニもOK!
古川さんの愛車であるビートルの電気自動車。
古いビートルの助手席に座らせてもらった。古川さんの愛車だ。
彼の「じゃ、行きますよ」の声とともに、静かな、けれど強烈な加速力を体全身で感じる。彼の愛車は改造電気自動車。
見た目はどう見ても旧いビートルだが、中身は日産のリーフだ。
工場には絶賛“電動化”中のポルシェ911の姿も。
もともと車のアフターマーケットで商売をしていた古川さん。海外製パーツの輸入販売も行っていた。
10年以上前に既存の車を改造して電気自動車にする仕事も始めると、その技術力が評価され、今や全国各地のクラシックカーオーナーから電気自動車への改造を依頼されるように。
それどころか、最近は車関連のメーカーから電気自動車の部品開発の仕事がどんどん増えてきているという。
ビートルのリアを開けると、急速充電口と普通充電口がある。
「アメリカではもう2000年前後から、旧車を電気自動車に改造する文化が始まっていました」。仕事で何度もアメリカへ行き、時代の変化を肌で感じていた。
アメリカは自宅のガレージで愛車を修理したりカスタムするのが当たり前という文化がある。愛車を電気自動車に改造しようと思う人が出てきても不思議ではないだろう。
当時はまだゴルフカートのモーターやバッテリーを使った改造が主流だったが、「最近アメリカでは、テスラの中古車から取ったモーターやバッテリーを使うのが当たり前になっています」。
速度計はオリジナルのまま活かし、バッテリー残量のインジケーターなどが追加されている。
一方、日本ではテスラ車はまだそう多くない。そこで古川さんは日本でいちばん売れている電気自動車、日産のリーフに目をつけた。
現行型リーフの中古車を買って、そこから必要なパーツを取りだして組み込むのだ。「私のビートルもそうですが、1回充電すれば250km以上は走れますよ」(参考・カタログ表記で400km、現実的には250km)。
ちなみに約5年前に作ってもらった筆者の電気パンダは、80km程度しか走らない。5年でこれだけ伸びるなんて、やはり電気自動車の技術進歩は目覚ましい。
筆者の電気パンダ。このときは三菱のi-MiEVのパーツが使われたが、今では電気パンダの製作にもリーフを使用している。
バッテリーをどれくらい搭載するかは、予算に応じて調整してくれる。
クーラーも付けられるが、バッテリー容量が減るのを気にして付けないという人が多いそうだ。一方ヒーターは、キャンピングカーと同じFFヒーターを使うので、電気ではなく灯油などを使う。
依頼される車種は多種多様だ。
BMWのマイクロカー・イセッタからフィアットのパンダ、ビートル、ミニ、ランクル40、ポルシェ911…… たいていの車なら改造できるそう。
古めかしいステアリングと、中央の液晶モニター、シフトレバー代わりのつまみの“違和感”が面白い。
「古い車が多いですね。エンジンなどの駆動系が故障したりして『もう乗れないかな、でもまだ乗りたいな』というときに、電気自動車に改造して“延命”する感じです」。
「だいたい僕のビートルなんかそうですが」と古川さんは続ける。
「エンジンの頃って、たまにかからないときがあったので、コンビニに行っても怖くてエンジンを切れなかったんですよ。それに今どきの車からすればうるさいから、周囲から嫌な目をされることもあったし」。それがまったくなくなった。
もうコンビニへ恐る恐る出掛ける必要もない。だからエンジン車の頃と比べ、安心してより多くの時間乗ることができる。
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