「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは……▶︎すべての画像を見る 実は今年4月に、ボルボの電気自動車(EV)に買い替えたんです。僕は葉山と東京の往復で毎日100kmくらい走るので、長らくCO₂排出が気になっていました。
もちろんリサイクルの問題や発電のことを考えると、EVに乗るだけで環境問題が解決するわけではありませんが、自分にできることから。
買うにあたり、まずEVっぽく見えないデザインであることが重要でした。妙にハイテク感を醸し出したデザインは古いと思うし、1000万も2000万もするラグジュアリー路線も何だか違う。
シンプルで機能的、でもディテールまでさりげなくセンスのいい、例えるならデザイン的にも精神的にもiPhoneのような存在感のEVがいいなと思いました。
SIMカードを入れて電話をしたり、話しかければ音声アシスタントが答えてくれたりするところも、そういえばiPhoneっぽい。マメに充電する習慣がつくところも似ています。
フィアットの電気自動車「フィアット チンクエチェントe」イタリアンデザインの良さと最新技術を両立させた「フィアット チンクエチェント」の電気自動車。シートはリサイクル素材を活用。普通充電&急速充電に対応し、最大航続距離は335km。写真はオーシャン グリーン(メタリック)。全長3630×全幅1685×全高1530mm 450万円〜
今回試乗させていただいた「フィアット チンクエチェントe」は、フィアットならではの愛らしさを受け継いでおり、全体の丸みを帯びたフォルムやロゴを象ったヘッドライト、インパネやインテリアにも曲線の美しさが際立って一見EVには見えません。
静かなのに速く、自動スピード制御などの先進装備が搭載されているのにEV然としていない。今後はこういった普通の顔をしたEVが主流になっていくのではないでしょうか。
それに伴って急いでほしいのはインフラの整備です。充電する場所はまだ限られているので、ロングドライブだとやはり不安。
サービスエリアの充電設備は複数台で同時に充電すると急激にパワーが落ちたり、宿泊先に充電設備があるかを確認しなくてはいけなかったり。
EUでは2035年にガソリン車の新車販売を禁止するそうですが、日本もこれからEV化を加速させるべき。それには、例えば賃貸マンションに充電設備を設けるなどさまざまな工夫が必要になりそうです。
今はハードルが高いように感じても、スマホがあっというまに普及したようにEVもすぐに常識になるのでは? 今以上に環境が整えば、乗ってみたいと思わせる魅力的なEVもどんどん登場するはずです。
[藤井隆行 プロフィール]東京を代表するブランド「ノンネイティブ」のデザイナーで、ファッションからライフスタイルまで一貫したこだわりを持つ。「海外アーティストが続々来日したり、野外イベントも復活したりとようやく日常が戻ってきました。そろそろ海外に行こうと思います」。
「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは…… 世の中のありとあらゆるプロダクツから、「ノンネイティブ」藤井隆行さんが独自のセンスと審美眼でモノをセレクト。デザインとは? 実用性とは? 買い物の醍醐味とは? ブランド名や巷の情報に惑わされず、本当に自分に必要なモノと出会う方法を指南。
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