「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは…… 料理といえば鍋の具材を切るくらいですが、庖丁工房タダフサは、使ってみて「おおっ!」と感動。ハンドルが手にフィットして、軽くて、とにかく切れ味が抜群。
うちのバイヤーが新潟県燕三条の展示会で見つけてきたのですが、触れた瞬間「いいな」と感じて即買いし、「万能包丁」といちばん小さい「ペティ」の二本を愛用中。好みがうるさい人にプレゼントしても、とても喜ばれます。
日常使いの包丁は海外のブランドではいくつか知っていましたが、探せば日本にもデザインが良くて機能性があって手入れもラクという、今の生活に相応しいモダンなプロダクトが見つかるんですね。刃に刻まれたロゴも、いかにも切れそうな感じがして気に入っています。
実は少し前に念願だった有次の包丁を買ったばかり。鉄製ということもあり、きちんと手入れをしないといけないので、時間ができたらゆっくり伝統の重みを堪能したいと思っています。
が、忙しい毎日にはタダフサの包丁がありがたい。クラシックなモノとモダンなモノを、両方使い比べてみるという楽しみ方もありますね。
刃渡り170mm(全長300mm)9900円/庖丁工房タダフサ(カバーコード https://coverchord.com)
庖丁工房タダフサの「万能三徳 170mm」庖丁工房タダフサは“これだけあれば十分”をコンセプトに、「基本の3本」と「次の1本」(4種)の計7本がラインナップ。こちらは肉や野菜、果物などを切る際に重宝する万能包丁。
タダフサは昭和23年創業で、現在3代目。最近、酒蔵や家具メーカーなどでも3代目が活躍していることが多いような気がします。家業の伝統をリスペクトしてDNAを受け継ぎながら、現代のライフスタイルに合わせてアップデートしたモノを作っている。
長く続いている産業は、どうやってその時代に合わせていくかが大事。それがうまくいっている会社は、世代間の考え方の違いなども乗り越えて、その次を見据えているんだろうな。
違う世界の空気も取り入れながら、常に伝統をブラッシュアップしていく気概が、名品を生み出していくのだと思います。
僕は特定の誰かから服作りを引き継いでいるわけではありませんが、大きな意味でファッションの伝統を受け継いで、それを自分なりにアップデートさせているつもりです。メンズの服は包丁と同じであまり大きく変えようがないけれど、どう進化させていくかをいつも考えますね。
いいモノって、いつだってその時代の空気感が宿っているのではないでしょうか?
[藤井隆行 プロフィール]東京を代表するブランド「ノンネイティブ」のデザイナーで、ファッションからライフスタイルまで一貫したこだわりを持つ。「次の展示会に向けて、いろいろリサーチする日々。海外に行ってないからか、最近銀座にばかり行っています。改めて、銀座って面白いですね」。
「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは…… 世の中のありとあらゆるプロダクツから、「ノンネイティブ」藤井隆行さんが独自のセンスと審美眼でモノをセレクト。デザインとは? 実用性とは? 買い物の醍醐味とは? ブランド名や巷の情報に惑わされず、本当に自分に必要なモノと出会う方法を指南。
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