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メジャースポーツ化のために不足していること

さて、ABEMAは「マイナーをメジャーへ」とすることに事業の指針を置く。つまり“サーフィンをメジャーへ”ということだが、MLBなどを担当してきたからこそ「足りていない」と感じることがある。まずは選手のメディア対応だ。

「たとえば格闘技では敗戦した選手ですら試合後のインタビューに対応します。格闘技界を背負っていること、魅せる者としてすべきことを理解しているからこそできる振る舞いです。

本音ではない部分や強がりが入っている可能性は否定しません。それでもカメラの前で自分の意見を伝えている。プロだなと感じます」。

画面の向こう側にいる不特定多数の人たちに言葉を届ける。しかもより多くの人に届くように、発する言葉を考える。格闘技の魅力が広く伝わり、できるだけ多くの人に格闘技が支えられることを期待しているから生まれる姿である。

そのようなアスリート然とした姿はメジャースポーツでは当然のように見受けられる。

プロサーファーにも世界で活躍する選手や日本代表選手を中心に同様の姿勢が見られるようになってきたと藪本さんは言う一方、JPSAが選手にメディア対応のレクチャーやトレーニングを施すなど改善の余地はあるとも考える。

家から海へ行く流れのなかで、試合やサーフィンに触れられるきっかけがほぼないとも感じる。

「車内のラジオで試合の情報は出てこないし、道中に寄るコンビニエンスストアなどではサーフィン用のワックスが売っているくらい。

でも野球やサッカーは駅からスタジアムへ行くまでの間にユニフォームを着た人たちを多く目にします。そういった点がサーフィンとメジャースポーツではまったく違います」。

換言すれば日本のサーフィンは伸び代だらけ。本気で発展を考えるなら、日本人選手が活躍したオリンピック後の今こそ、関わる人たち全体で策を講じることが大切だと説く。

半面、おそらく完璧な時代はやってこないとも思う。だから自らが最も大切にすべきは、思考と実験を続け、時代に即したプランを柔軟に創造して中継にのぞむこと。続けていくことが何よりもの力になるのだ。

そうして、やがて社会からの追い風が日本サーフィンに吹くことに期待もしながら、藪本さんは自身の生業に今日も邁進していく。

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渡辺修身=写真 小山内 隆=編集・文

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