2006年にビーチクリーン活動を始め、ゴミを収集する機材「ビーチクリーナー」も独自に開発。
二輪と四輪の市場で世界をリードする世界的企業のホンダが、なぜそこまでして全国各地の砂浜を掃除するのか。担当者に話を聞いた。
技術で社会に貢献するためモノを作り、海を掃除する
本田技研工業(以下、ホンダ)の創業の地・静岡県浜松市に遠州灘はあるが、どうやら潮風の漂う土地柄が理由ではなさそうだ。そこで社史をひもとくと、もしや、というヒントが見えてきた。
1948年に創業したホンダは、’58年、のちに世界的なロングセラー商品となる二輪車「スーパーカブ」を発売し、’63年には四輪市場へ進出。
以来、バイクとクルマの印象を強く残し、’80年代から’90年代にかけてはF1界を席巻した赤白のマシンに熱狂する人を多く生み出した。
だが伝説的ドライバーのアイルトン・セナが登場するずっと前に、ホンダはマリン市場に進出していた。それは四輪事業へ進出した翌年のこと。’64年に船外機を発売したのだ。
船外機とは小型ボートのような船に装着させる取り外し式のエンジンであり、船をコントロールする舵、燃料タンクなどを一体化させた装置だ。同事業は二輪や四輪と並んで歴史が長く、参入時には新機軸を打ち出してもいる。
それまで主流だった2ストローク機関ではなく、4ストローク機関による船外機を世界に先駆け開発・販売したのだ。
では両者の違いは何か?’77年の入社以降、一貫して開発畑を歩んできた木村嘉洋氏は「環境負荷の違いです」と端的に教えてくれた。
「2ストローク機関は燃料とオイルを一緒に燃焼させるため、その燃えカスが排出ガスにまじり海中に放出されます。つまり、海を汚してしまう。一方の4ストロークも排出ガスは出ますが燃料にオイルを混合しないため環境負荷は低いのです。
創業者の本田宗一郎は環境意識の高い人であり、サイズが大きく高コストというネガティブな要素があったものの、環境を汚さない4ストロークの開発を推し進めたのです」。
続けて木村氏は「高い技術で社会に貢献することがホンダのポリシー」なのだとも言った。
なるほど、技術は世のため人のためとするモノづくりへの想い、マリン市場へ早期進出した社史、高い環境意識が、ビーチクリーン活動と「ビーチクリーナー」開発の根底には流れていたのだ。
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