▶︎すべての画像を見る 着用してみたが、ものすごいデニムだ。加工技術はここまで進歩しているのか。いや技術のみならず、ヴィンテージデニムに対する卓越した知見と愛情がなければ、こういうデニムは決して生まれ得ない。
「僕が実際に好きで着ていた、ヴィンテージの一点もの。デニムもジャケットもシャツも、そういう現物をベースにして作ったんです」。
このデニムを手掛けたのは藤原裕さん。原宿の老舗古着店、ベルベルジンのディレクターを務める人物だ。
藤原 裕●ベルベルジン、ニューマニュアルのディレクター。ヴィンテージデニムアドバイザーとしても活躍する。今年4月には『教養としてのデニム』を上梓した。大人気のYouTubeチャンネルもぜひチェックを。
「1年半ほど前に、岡山のデニム加工会社『癒toRi18(ゆとり)』からオファーをいただいたのがきっかけ。
最初は“古着屋が新品を作っていいのか?”という葛藤もありました。でも生地工場、縫製工場、アートディレクターといった凄腕のプロたちと出会うことで、一緒に作る決心がついたんです」。
2年をかけて合計33アイテムをリリースするプロジェクト。その第1弾・5アイテムのうち、今回はデニム、デニムジャケット、ウエエスタンシャツをピックアップした。
’42年製をモチーフに、裾のミシン補修の跡まで再現したデニム。Gジャンと同じ年代設定なので、セットアップとして着るのも面白そうだ。5万2800円/ニューマニュアル instagram@new_manual
「例えばデニムジャケットの袖には折りジワが入っていますが、これは僕が13年間着ている1942年製のものとまったく同様に加工しました。
背中の“Tバック”(肩ヨークと縦のハギのステッチ)も同じです。でも着丈やアームホールのシルエットなどは、今のファッションに合うよう微調整しています」。
藤原さん所有の1942年製のジャケットをもとに製作。運針や縫い方向まで当時をベースとしながらも、現代でも通用する高い強度で仕上げた。5万2800円/ニューマニュアル instagram@new_manual
年を追うごとに枯渇していくヴィンテージデニム。その価値を引き継ぎ、現代の物差しで新しいデニムのマニュアルを提示したい。
「ニューマニュアル」というブランド名には、そんな熱い思いが込められている。
’50年代のウエスタンデニムシャツがベース。タイトすぎないシルエットと、裾出しが決まる着丈にこだわった一着。3万3000円/ニューマニュアル instagram@new_manual
「デニムの魅力は突き詰めればやはり色落ちです。デッドストックから育てたデニムは、必ず“その人にしか出せない色”になりますから」。
数え切れないほどのヴィンテージデニムと出合ってきた藤原さん。ニューマニュアルのデニムを着ることでその膨大な時間を追体験できるのは、本当に貴重なことだと思う。