「業界のパタゴニアン・パパラッチ」とは…… これまで、数多くのアメリカブランドを国内に紹介してきたビームス。
なかにはブランド自体が消滅したり、泣く泣くリストから外されたものも少なくないが、変わらずセレクトされ続けているのがパタゴニアだ。
ビームスのクリエイティブディレクター・中田慎介さんのワードローブにもパタゴニアは欠かせない。今回紹介してもらったのは、10年来の付き合いというウエストバッグだ。
▶︎すべての画像を見る 中田慎介●クリエイティブディレクター。自社アイテムの企画・製作にとどまらず、他社とのコラボレーションや別注、さらにはブランドのプロデュースなども手掛けるビームスきってのご意見番。高校時代からパタゴニアを愛用し、所有するバギーズは何日もローテーションできるほど。
憧れの先輩たちが身に着けていたパタゴニア
パタゴニアとの付き合いは高校時代にまでさかのぼる。
当時はまだ通販は充実しておらず、手に入れるならば並行輸入の店へ足を運ぶか、古着で探すかが関の山。ただ、中田さんの場合は、そんな正攻法とは一線を画す手立てを用いた。
その背後には、MADE IN USAへの憧れもチラリとのぞく。
「友人と海外通販のカタログを取り寄せ、メールオーダーをしたのがパタゴニアのシンチラ スナップT。ヘザーグレー×フォレストグリーンの配色だったと思います。いまだに忘れられませんね」。
さすがビームスのディレクター、高校時代からレベルが違う。同時に、目白にあるパタゴニアストアへも頻繁に足を運んだという。以降、ドレッサーの中にはいつでもパタゴニアのアイテムがあった。
「当時5、6万を出して買った、『ナイトロ2』というマウンテンパーカがあるんですよ。僕の中では名作なんですけど、あまり知られていないかもしれませんね。周りはたいてい、スーパーアルパインジャケットやストームジャケットに手を伸ばしてましたから。まあ、当時から捻くれていたんですよね(笑)」。
そして、大学も卒業に近づく頃、ビームスと運命の出合いを果たし、視点や考え方は一変する。ビームスには、周囲とは異なったアプローチでファッションを楽しむ先輩方が多かったからだ。
「ビームスの人が着用しているカラーなら間違いない、といった風潮はありましたよね。ウィメンズカラーを着ている男性スタッフもいましたし、やっぱり普通の人とちょっと違う。
いるじゃないですか、『なんですか、それ?』っていちいち着ている物や持っている物が気になる人。誰もがヘインズの白Tを着ているときに、グッドウェアを着ているみたいな。それが当時、なんだかカッコ良く見えたんですよ」。
もはやそれはビームスのアイデンティティでもある。
「そんな人たちに憧れる人生を送ってきちゃったんで、何か会話のヒントになったり、仕掛けがあったり、そんな人に憧れるんですよ。そして、彼らは総じてパタゴニアを着てましたね」。
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