受容されてから、育つ準備ができる
人事の世界では新しく加わったメンバーが、組織から求められる役割や知識、規範、価値観などを獲得して、適応していくプロセスのことを「組織社会化」といいます。
そのプロセスがうまくいくうえで新メンバーが「組織に役に立つ人になろう」と思う必要があり、その前提として「自分はこの組織に受け入れられた」と本人が受容感を持つことが条件となります。
確かに、自分が受容されてもいない組織のために、わざわざ求められる能力を身につける努力をしようとなんて思いにくいでしょう。
受容されたからこそ、好意の返報性(好かれると好きになるという心の性質)から、自分も組織のためになることをしよう、つまり「育たねば」と思うわけです。
「受容」とは「わかってもらえる」こと
そしてこの「受容」される、つまり、組織に受け容れてもらうということは、勝手な価値判断を経ずにありのままの自分をわかってもらえたと本人が感じることが大切です。
昔、リクルートで採用担当をしていたときに、入社を決めてくれた人の多くがその理由を「この会社が自分のことを一番よくわかってくれたから」と言っていたのを思い出します。
そして、ある人は「自分のことをすごいと言ってくれた会社よりも、ダメな部分も含めてありのままの自分を認めてくれたことがうれしかった」とも言っていました。私自身もそんな気持ちで会社を選んできた気がします。
そう考えると、若手が「やる気があるのかどうかわからない」ではダメかもしれません。
まずは自分から自己開示を始めましょう
このままだと、ご相談者の心配されるように、若手はいつまでも受容感が生まれず、育つ準備ができないままかもしれません。
ですから、まずはとにかく彼らのことをたくさん知ることに努めるべきでしょう。まずは上司である自分から彼らに自己開示を行い(最初はうざがられるかもしれませんが)、「この人には自分をさらけ出してもよいかもしれない」と思ってもらうことからスタートです。
そして、信頼関係が生まれ、心を開き、受容感を得た人は、Z世代であろうとなかろうと、「じゃあ、この場所で役に立つように頑張ってみよう」と思うのではないでしょうか。