当記事は「FLUX」の提供記事です。元記事はこちら。 ジャック・ソレン、26歳。サーファーで、グラフィティアーティストで、ミューラルアーティスト(壁画作家)だ。オアフ島のノースショアで生まれ育ち、現在もノースショアを拠点に、文化と商業が日々ぶつかり合う街の空気にインスパイアされた作品を生み出し続けている。
ジャック・ソレンさんは熟考するタイプだ。とことん考え込む。彼に何か問いかけたなら、それがどんな質問でも、思いをめぐらせる彼の頭で歯車がカチッと動く光景が目に見える気がするだろう。自分にとって大切なこと――サーフィン、オフロードバイク、アート、そしてハワイ人としての生きること――について、彼はひたすら考えている。
海、特にサーフィンに結び付きの強い家族で育ち、子供時代はもっぱらビーチで過ごした。10代になってからは、水路の壁を使ったスプレーアートに没頭し、自分が描くキャラクターたちに惚れ込む日々を過ごした。そうしたゲリラ的活動で培った学びやテクニックを活かし、大人になってからはプロとして、多様で多面的な芸術制作に取り組んでいる。
(写真提供:ジャック・ソレン)
今の彼が手掛けるのは、基本的には絵の具やペンキを使った絵画だ。ハワイの名物イベントであるサーフィン大会「バンズ・トリプルクラウン」や、その後援企業のハワイアン航空が、主要なブランディングやマーケティングキャンペーンに彼の作品を採用している。
ホノルルのショッピングセンター「インターナショナル・マーケット・プレイス」やデパートの「ブルーミングデールス」にも大型の絵を提供したほか、美容インスタグラマーのブレットマン・ロックの依頼に応じて彼の自宅にもミューラルアートを描いた。
巨大な作品を生み出す腕に注目され、「パウワウ・ハワイ」や「スプレイシーLA」をはじめとして、世界各地のアートイベントにミューラルアーティストとして招致されている。
作品を通じてハワイ文化を知ってもらいたい、というのが彼の強い期待だ。2021年にワシントンD.C.で開催されたミューラルアート・フェスティバルで描いた壁画には、ハワイ語で楽観主義、希望、明日を待ち望む姿勢を意味する「カ・ラ・ヒキ・オラ」という文字を書き込んだ。
(写真提供:ジャック・ソレン)
ハワイ人であるというのは重要な要素。ソレンさんにとって、ハワイでネイティブ・アーティストとして活動するというのはとても複雑な立場だ。その他のさまざまな要素とともに、彼の作品にそれが表れている。描き出す作品に自分の生まれを反映していくことへの責任感、義務感、情熱、そして充足感があるのだ。
いわゆる「古き良き」ハワイののどかで絵ハガキ的な描写をリメイクする形をとりながら、ステレオタイプ化されてしまったハワイのイメージを再利用して自分自身の表現とすることで、ハワイの姿をハワイに住む者の手に取り返し、外国の商業主義を否定している(それだけが作品の意図ではないのだが)。
それと同時に、印象的なキャラクター描写や、力強くシンプルな色遣いを活かして、ハワイの美しさと文化をあらためて強調しているのだ。
熟考型で、アーティストとして気さくな批判も展開する彼に、描くこと、思うこと、行動すること、学ぶことへの向き合い方をたずねた。デザインとサーフィンへの思いについて、自分自身を知るためにはひとりで制作する必要があることについて、文化と居場所について、そして雄弁なアートを生み出すことについて語っている。
(写真提供:ジャック・ソレン)
2/2