回収された海洋ゴミ。
“このウェアは海をきれいにする”。このキャッチコピーはカリフォルニアのマリブで生まれたアパレルブランド、マリブシャツのもの。
一読しただけでは疑問符が頭に浮かぶが、詳しく話を聞くと、深く、深く、合点がいった。2020年秋から日本でも展開されているこのブランドの服は、すべて“海ゴミ”で作られているためだ。
「正しくは、海ゴミから再生されたポリエステル原料をもとに糸を作り、生地を作り、製品化しています」と日本サイドの窓口、MNインターファッションの菅井章弘さんは概略を教えてくれた。
その生地の名が「ワン オーシャン」であるのだが、もう少しリサイクルの過程に詳しく触れてみたい。
①プラスチックゴミを分別して砕く。 ②①を溶かして夾雑物を取り除き、ペレットに整形。 ③ペレットを溶かしてステープルという繊維にする。
「まず再生ポリエステルの原料となるペットボトルなどの海ゴミを採取し、選別して洗浄、砕き、溶かして、“ペレット”と呼ばれる小さなチップに。それを溶かして綿状の繊維“ステープル”(上写真③)になります。
ここまではアメリカのリサイクル原料メーカーが行い、我々はそのステープルを購入し、プロジェクトをともにする中国のメーカーに依頼。そこで生地を作るのです」。
ステープルに綿のワタをブレンドして糸を紡ぐ。
ペットボトルを原料にした再生ポリエステルの糸は以前からあった。しかしそれらの採集先は陸の上。今回は“海からのモノ”にこだわった点が比類なき歩みとなっている。
きっかけはブランドの日本展開が決まった際に生まれた“海へ恩返しできる何かを備えたい”という思いだった。
「創業者のデニー・ムーアさんはマリブで生まれ、サーフィンをして育った、海を愛する人物。本国での展開もサーファーのカジュアルウェア的なイメージが強い。
ならば改めて、海があるおかげで生まれ、今日まで続けられたことに感謝しよう。これから先も海と歩めるブランドにしていこう。そう思い、海ゴミのリサイクルにこだわる事業となりました」。
生まれ変わったマリブシャツの製品は、Tシャツなら1.5Lのペットボトルが5本近く使われている。まさに海をきれいにして作られるウェアとなった。
さらに長く愛用される定番だけを手掛けたい思いから、Tシャツ、パーカ、フリースと型を絞って展開。今後は子供向け商品の展開も視野に入れているというが、そうなれば“服育”ができるようになる。
海ゴミをルーツとする服を着る暮らしは、海洋環境問題への意識をわずかでも高める可能性を含むためだ。それは海から離れた場所に住んでいる子供たちにも等しく期待できること。
「マリブシャツ」は、海をきれいにしていく心を育むための教材となりうるのである。