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看板娘、登場

「お待たせしました〜」。
埼玉県入間市出身の有紀さん(21歳)。小学校6年生のときにお父さんが持っていた映画DVD『ローレライ』を観たのを機に、原作小説も読破。大人用の国語辞典で「橇(そり)」「矜持」などの難しい言葉を「カッコいいなあ」と思いながら夢中で調べたという。
さて、料理はやっぱり「カオマンガイ」?
「あと、『パッタイ』も美味しいですよ。『カエルの素揚げ』もぜひ食べてみてください」。
いろんな意味で迫力のあるセットが登場。
結論から言うと、パッタイは超美味しい。カエルは白身魚のフライのような味で意外とイケる。ストローで飲むバケツ酒は吸っても吸っても一向に減らない。そんな感じだ。
中学時代の有紀さんは放送委員。給食の時間にヴァン・ヘイレンの『ジャンプ』を流すなど、ファンキーな行動が際立つ。
「先生受けはめっちゃよかったけど、生徒はぽかんとしていました。あと、個人的な趣味でアナウンスしていたのが『今日は何の日』シリーズ。一番好きなのは12月23日、東京タワーの開業日です」。
その後、自由な校風で知られる所沢高校に進学。1年生のときに教わった国語の先生が俳句の同人で、授業の始めに俳句を暗唱するコーナーがあった。
「今井 聖さんの『球場に万の空席初燕』とか、いまだに覚えています。『こういうの作れたらカッコいいんじゃね?』と思ったのが俳句の道に入ったきっかけなんです」。
同時に、軽音部では望(のぞみ)さんと「朝(あした)」という名の詩歌ユニットを組む。望さんがボーカルで有紀さんがギター。ライブではチャットモンチーの『海から出た魚』などのカバー曲を演奏した。
昨年の夏に望さんを含む友達数人と高円寺で遊んだときの写真。
高校の卒業制作で望さんと作った共同句集は同じ「朝(あした)」というタイトル。これを読んだ先生に「教師をしていると1000人に一人ぐらい『こいつには敵わないな』という怪物がいるが、この学年には二人も怪物がいた」と言わしめた。
現在も制作は続き、全4巻に達した。
高校卒業後は高円寺のエスニック衣料雑貨店、「元祖仲屋むげん堂」で働こうと思っていた。しかし、大好きな店を職場にして嫌いになったら悲しいという理由で、2番目に好きなエスニック雑貨店でアルバイトをすることにした。
ここ、「999」で働き始めたのは2019年6月。
「酔っ払いのお客さんも結構多くて、『タイ行ったことないの? 一緒に行こうよ』とか言われます。でも、いちばん面白かったのは『磯丸水産行こうよ』と誘ってきたお客さん。なんで磯丸?って(笑)」。
有紀さんの最近のトピックは髪を刈り上げたこと。「ずっとやりたかった」そうだ。
厨房でスタッフの飯田さんが「いいよ、看板娘っぽいよ」と野次を飛ばす。
この流れで飯田さんと話していると、すごい発見があった。2年ちょっと前に取材した看板娘が「恋人と大ゲンカして彼の携帯番号の名前を『死神』に変えた」と言っていて大爆笑したのだが、こちらの飯田さんこそが「死神」だったのだ。「あ、大丈夫っすよ」と言うので、遠慮なく書かせていただいた。
そんな飯田さんいわく、「有紀ちゃんの俳句、読んだけどよかったですよ。なんか虫がいっぱい出てくるやつとか」。
2019年に出席した句会で作った10句。
なお、「元祖仲屋むげん堂」は引き続き大好きで、今日着ているTシャツ、履いているサルエルパンツもそこで買った商品だ。
日本のインドとも称される高円寺にある「元祖仲屋むげん堂」。
初めての一人暮らしを始めた際に“理想の部屋”にしようとした結果、「むげん堂」色満載のしつらいになった。
職場もエスニック、部屋もエスニック。


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