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有紀さんのひそかな楽しみは多肉植物の鑑賞と女子プロレス観戦。まずは、多肉植物から。
「見た目がかわいくて、ちょっとやそっとじゃ枯れない丈夫さが魅力。あと、『高砂の翁』『星の王子』『雅楽の舞』とか、名前がいちいちカッコいいんです(笑)」。
いちばん手前の「立田」を含め、約30種類をベランダで育てている。
そして、女子プロレス。
「ふと、北斗晶の現役時代って知らないなと思って映像で観てみたらめっちゃ良かったんです。対戦相手の紅夜叉は生意気な感じで、『北斗、潰してやるからな』なんて言いながら木刀で先制攻撃したり。でも、北斗が一撃で沈めたという伝説の試合です」。
これを機に長与千種の大ファンにもなる。
「2019年12月、長与さんのお誕生日興行でもあった後楽園大会に行きました。何度も通っているので顔を覚えて下さっていて、『おっ!来たね!』と満面の笑みをいただきました」。
「2020年はプロレスの観戦に行けずじまいでしたが、今年は絶対行きます!」。
そんな話を聞いているうちも、厨房ではベトナム人のトアンさん(28歳)が黙々と料理を作っている。
「トアンはとくに揚げ物が上手なんですよ。あと、笑うとかわいい」。
大のサッカーファンで、推しメンはメッシというトアンさん。
この日の有紀さんは、賄いで唐揚げをリクエスト。「めっちゃ美味しい」そうです。
唐揚げだけはウーバーイーツに対応している。
この店で働き始めて1年7カ月。最近は宣伝用のPOPも任されるようになった。
色使いに独特の感性が現れる。
味の確かさとバラエティに満ちたメニューで著名人の贔屓筋も多く、今をときめく総合格闘家の那須川天心も訪れた。
今日は不在の店長といちばん仲がいいのは、中央の総合格闘家・石渡伸太郎さん。
夜も更け、店内の席も埋まってきた。
ほろ酔いの脳にタイの歌謡曲が心地いい。
客が来ると「サワディカー(こんにちは)」、オーダーが入ると「コップンカー(ありがとうございます)」。東京・中野でタイ屋台の雰囲気が味わえるお店だった。
好きな俳句は三橋鷹女の「夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり」「鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし」。「でも、最近全然作れていません。スランプです」という有紀さん、読者へのメッセージをお願いします。
キャップにピカチュウ、付いてましたね。
 
【取材協力】
タイ屋台999(カオカオカオ)中野店
住所:東京都中野区中野5-53-10 エイトゥリービル1F
電話番号:03-3386-0383
www.thailand999.com/nakano/
「看板娘という名の愉悦」Vol.137
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
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石原たきび=取材・文


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