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ただし、絶対に「消化の遅い食事」の中で摂取してはいけない。果物と同じように短時間で消化管を下りてくるため、組み合わせを間違えると消化トラブルの原因になるのだ。
したがって、「ファスト(トマト)」と「スロー(パスタ)」を組み合わせた「ファストトマトソースのパスタ」や、「ファスト(トマト)」と「スロー(ピザ)」を組み合わせたピッツァ・マルゲリータなどはNGということになる。残念な話ではあるが、心にとどめておいたほうがよさそうではある。
となると、なにが「消化の遅い食品(スロー)」なのかが気になるところだが、「消化の速い食品(ファスト)」以外のほぼすべてがそれにあたるのだという。つまり私たちが栄養成分を摂取している食べ物の大半が「消化の遅い食品(スロー)」に該当するということだ。
まずは野菜で、生か加熱済みかは無関係(かさが大きいほどよい。繊維が多く含まれるため、消化管で「煙突掃除人」の働きをするからだ)。例外として「スロー」に含まれないのはナスで、これは「ニュートラル」。
「スロー」の食材には、このほか、パスタ、パン、米、ピザ、じゃがいも、とうもろこしなどの穀類、肉、魚、チーズ、卵、豆、豆腐、グルテンミートなどの動物性・植物性たんぱく質、くるみ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、栗、ピスタチオ、ピーナッツなどのナッツ類があります。(131ページより)

ニュートラル=どちらでもない食品

「ニュートラル」は「ファスト」でも「スロー」でも関係なく組み合わせられる食品で、腸の流れを速くしてくれる。
油、酢、にんにく、玉ねぎ、エシャロット、ハーブやスパイス(ただし、カレー粉や唐辛子やパプリカ由来のスパイスは除く)、そして「遅い食品」に入らない野菜、ナスです。
ワイン(赤がおすすめ)、牛乳、砂糖、紅茶、コーヒー、チョコレート(ミルクチョコレートではなくビターチョコレート。カカオ70%以上のチョコレートを選ぶこと)もそうです。(132ページより)
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さて、著者はここで、約2500年前のギリシヤを生きた「現代医学の父」、ヒポクラテスが提唱した“心構え”を引き合いに出している。
<治療にとりかかる前に、病の根源をすべて放棄する覚悟ができているかどうかを患者に尋ねよ>(133ページより)
なぜ、何千年も前の言葉を持ち出してくるのか、それには理由がある。「アダムスキー式腸活法」を進めていくと、人によっては大好きな食べ合わせを我慢しなくてはならなくなるからだ。
とはいえ「身を切るほどの犠牲を払え」ということではなく、「ちょっとした美食の誘惑を断とう」ということなのだが。
つまり、その準備さえできていれば、健康面でも美容面でも、一時しのぎではない具体的な効果が得られるということ。なにかを100%我慢しろというわけではなく、これまで食べてきたものを食べてもOK。ただ、食事の構成を変えることが必要だという考え方なのだ。

「奇跡」でも哲学思想でもない

「アダムスキー式腸活法」は、一時的にやりさえすればどうにかなるというものではないと著者は記している。「奇跡」の健康法でも、哲学思想でもないと。
ただし効果は開始してから数日で表れ、8~12カ月実践することで、機能不全から解放されるために基盤が体の中に整うという。
❶消化管の滑りをよくする
❷蒸発残留物の少ない水を飲む
❸食べ物を正しく組み合わせる
(145ページより)
こうすれば食べ物はひとりでに消化管を滑り落ち、体に必要な物質が正しく吸収されるようになるというのだ。
そう考えると「アダムスキー式腸活法」は、あらゆる視点を考慮しながらバランスをとってつくられた食事健康法にすぎないと言えるのかもしれない。
体や心だけでなく、私たちを取り巻く環境のことも、きちんと考慮に入れてあるわけだ。
個人的には、「奇跡」でも哲学思想でもなく、ちょっとした工夫をすればいいという考え方に納得できるものを感じた。これなら、無理なく取り入れることができる気がするからだ。
 
印南 敦史:作家、書評家
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記事提供:東洋経済ONLINE

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