イライラの改善から新型コロナウイルス重症化の予防など、あらゆる恩恵を受けられることがわかったビタミンDの存在。
前編ではビタミンDの驚くべき効果の数々を解説したが、後編では満尾 正先生にビタミンD濃度を上げるための具体的な方法を聞いた。
話を聞いたのはこの人! 満尾 正●東京・広尾にある「満尾クリニック」院長、医学博士。2002年、日本で初めてのアンチエイジング専門院を開設。キレーション治療を中心にした、内科的アンチエイジング治療を行う。著書に『医者が教える 最高の栄養 ビタミンDが病気にならない体をつくる』(KADOKAWA)。
ビタミンD不足の理由は行き過ぎた紫外線対策
――まず、ビタミンDが体内でどのように生成されるか教えてください。 コレステロールから作られる「プロビタミンD3」という物質が、皮膚で紫外線に反応して「プレビタミンD3」という物質を作り出します。
この「プレビタミンD3」は体温によって「ビタミンD3」へ変化し、肝臓へ運ばれると「カルシジオールD3」と呼ばれる成分に変化し、さらに腎臓などで活性型ビタミンD「カルシトリオール」へと代謝されます。
――専門用語が多く、複雑ですね……。 医者でも知らない人は多いので、専門的な知識は必要ありません。重要なのは、
ビタミンDは皮膚に紫外線が当たることによって作られるということです。
日本人の8割がビタミンD不足である理由は、日光を浴びる時間が圧倒的に減ったこと。
紫外線を浴びると皮膚がんになるという、紫外線の弊害ばかりに注目する情報が蔓延するようになったためですが、女性は「美白」「美肌」志向が特に強く、UVカットに余念がありませんよね。太陽の光を浴びるメリットも見直すべきだと私は考えています。
自分の血中ビタミン濃度を調べよう
――健康でいるためにビタミンD濃度は40ng/ml以上であることが望ましいという話でしたが、濃度を上げるためにはどんな方法がありますか? まず、やっていただきたいのは、
自分のビタミンD濃度を調べることです。普段のライフスタイルや体型、肝機能の状態などいくつかの因子によって、個々のビタミンD濃度は左右されます。
たとえば、太っている人の場合はビタミンDが脂肪組織のなかに溶け込んでしまうので、痩せている人と比べて濃度が低くなります。また、脂肪肝など肝臓の機能に異常があると、ビタミンD3が肝臓で代謝されるペースが遅いため、血中濃度は上がりにくい。
人それぞれなんですね。だから、相応しい摂取量を知るためにも、まずは自分の血中ビタミン濃度が今どの程度なのか、血液検査をすることをおすすめします。
――病院で「自分の血中ビタミンD濃度を知りたい」と伝えればいいですか? そうですね。かかりつけのクリニックにビタミンD濃度を調べたいと伝えてください。2018年から骨粗鬆症の疑いでビタミンD欠乏かどうかを調べる検査が保険適用になっていますが、自費の場合でも数千円程度です。
ただ、正確な濃度を調べるためには、
「非活性型ビタミンD」である25(OH)D3を測定しないと意味がありません。なかには「活性型ビタミンD」の1-25(OH)2Dを測定するクリニックもあるので、そこはあらかじめ確認してください。
――非活性型ビタミンDを調べられない場合はどうすればいいですか? 日本人の8割はビタミンDが不足しているので、自分は足りていないという前提に立ち、ビタミンDを積極的に摂取することを心がけるといいと思います。
どれくらいビタミンDを補えばいいかは、さきほど言ったように個人差がありますが、大雑把な目安を挙げるとしたら、
毎日2000IUを目安にするといいと思います。肝臓に問題がある人は5000IUを意識するといいのではないでしょうか。
ビタミンDを補充する3つの方法
――そもそも「IU」とはなんですか? ビタミンDの単位は、IU(アイユー)とμg(マイクログラム)の2つが使われますが、1μgは40IUに相当します。また、ビタミンDの血中濃度を表すのは別の単位で、さきほどから使っているng(ナノグラム)を使用します。
――満尾先生は毎日2000IUのビタミンDを摂ることを推奨されていますが、摂取方法を教えてください。 方法は3つあります。1つは
日光を浴びる、2つめは
鮭などの切り身を食べる、3つめは
サプリメントを摂取するです。どの方法でも効力は変わりません。
裏返すと、この3つができていない人はビタミンDが足りないと考えていいでしょう。
ちなみに先日、うちのクリニックでビタミンDの血中濃度を調べたら、平均の半分以下だった人がいました。本人はいたって健康なつもりなんですけど、遅かれ早かれ、何かしらの不調が出てくると思います。
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