角形のケースは元来ドレスウォッチに多く見られるが、今回選んだのは、個性を強調する“角が立った”時計。それぞれの魅力に裏付けられた強烈な自己主張に持ち主自身のパーソナリティを映し出す。
VACHERON CONSTANTIN
ヴァシュロン・コンスタンタン/ヒストリーク・エクストラフラット 1968
モダンに進化した1960年代の極薄スクエア1968年に発表された、超薄型角形時計の復刻版。斬新な正方形の文字盤ながら、ケース表面を僅かにカーブさせることで気品を演出し、当時のアヴァンギャルドな空気感までも再現する。ケース厚はオリジナルの6.52mmよりも薄い5.4mmに仕上げ、垂直にブラシをかけたニュアンスのあるシルバー文字盤を合わせる。搭載するのはマルタ十字を象ったローターを備える極薄キャリバー1120。約40時間のパワーリザーブで、利便性も高い。
JAEGER-LECOULTRE
ジャガー・ルクルト/レベルソ・トリビュート・カレンダー
実用機能の進化を続け、時代を超えて支持される角形ひとつの時計の表と裏を反転するという斬新なケース構造を備え、レベルソは1931年に誕生した。機能も進化を遂げ、最新の「レベルソ・トリビュート・カレンダー」は、2つの小窓とインダイヤルによる月齢付きコンプリートカレンダー表示の白文字盤に加え、裏面の黒文字盤ではデイ&ナイト付きの第2時間帯を表示するデュアルタイム機能を装備する。
時差がひと目でわかる機能は、より現代的な用途に応え、美しさばかりでなく、こうした実用性の熟成進化こそ時代を超えて高く支持される理由である。
HUBLOT
ウブロ/アエロ・フュージョン クロノグラフ オーリンスキー キングゴールド
互いのリスペクトに溢れる、腕元の現代アート著名なフランス人現代アーティストのリチャード・オーリンスキー氏とのコラボレーション作。ゴリラやワニ、熊といった獣をダイヤモンドのようなカットで表現する彼独自のクリエイティブをケースデザインで表現しているのが特徴だ。
ブランドのアイコンである「クラシック・フュージョン」の外装をほぼ刷新し、月並みのコラボレーション時計とは一線を画す仕上がりに注目。またベゼルは十二角形を象り、12時間の区切りを思わせる。まさに芸術と融合したタイムピースといえよう。
DIOR
ディオール/シフル ルージュ
ブランドアイコンになったアシンメトリーデザイン2004年に誕生した「シフル ルージュ」は、今やディオールのシンボルウォッチになった。ケースは滑らかなカーブを描く左側に対し、右は直線的にカット。珍しいアシンメトリーなシルエットだが、違和感なく溶け込ませる手腕はさすがだ。さらにベゼルの9〜12時位置にはブランドのデザインコードである“SCAR(キズ)”を刻み、赤をアクセントとしてプッシュボタンやカレンダーにあしらう。その独創性は風格すら感じさせる。
ROBERTO CAVALLI BY FRANCK MULLER
ロベルト カヴァリ バイ フランク ミュラー/RV1G003M0081
ジャンルを超えた十角形のコラボウォッチ“ハイファッションと高級時計”という、異なるジャンルのカリスマの出会いから生まれたユニークピースブランドとして話題を集める。十角形のファセットカットのケースには唯一無二のオリジナリティが漂い、ブレスレットまで統一したマットブラックともシックに調和する。さらに文字盤は2層構造を採用しており、カットアウトされた中央部からピンクゴールドカラーが覗く。
※本文中における素材の略称:K18=18金、SS=ステンレススチール、PG=ピンクゴールド
柴田 充=文