──時代小説は時代の解説が入るから読みにくかったりしませんか?平山「『村上海賊の娘』もそういうところはあるし、現代口調でもない。だけど読めるんですよね。これは和田 竜さんの本が独特だからかな。『のぼうの城』や『忍びの国』もそう。なんか、現代モノのように読めるところが不思議なんですよ。
史実に基づいて書いてはいるんだけど、基本はフィクション。フィクションに史実をうまく織り込んでて、話の途中で『こういう書物にはこう書かれているけど、こっちのほうが正しい』みたいなことを入れるんだけど、すぐ話に戻ったり。この押し引きや織り交ぜ方がすごくうまくて、だからスラスラ読める」。
──特に好きな登場人物は?平山「七五三兵衛は海賊の家の息子で、実質、家を継いでいる。見た目も中身もまるでプロレスラーなんですけど、優しさや戦略の細かさを端々に感じる。物事をよく考えているけど、生まれ持った陽気さで笑い飛ばす。ただの力任せの馬鹿じゃないというのが魅力です」。
──具体的に、この作品のどこに面白みを感じましたか?平山「そうですね。景が女の子だから海賊の中でも異質で、それがすごく面白い。男だったら『なんて甘ったれたこと言ってるんだ』って思いそうなところも、女の子だからゆえに『そりゃそうだよなぁ』と素直に共感できる。一度は海賊を辞めると決めましたが、そこで終わらず奮起してクライマックスに向かうんですよね。
ちょっとネタバレになっちゃうかもしれないんですけど、景があるとき父親に対して、『男たちはみんな自分のことだけを考えて戦をしている』って言うんですよ。でも、私利私欲ではなく、恩義に報いるために『行かないでもいい戦に行って命を捧げた人たち』ってのがいて、彼らのために景は再び戦場に戻るんです。『オレはそういう立派な奴らを助けてやりたい。あいつらのために戦ってやりたい』って言うところがあって」。
──カッコいいですね。平山「僕自身は日本に住んでいるから、現状、戦争に参加することはない。平和な国に住んでいるがゆえの利点でもあるし、平和ボケって言われることでもあるんですけど。人のために死を決心するって、すごいですよね。景は人を殺生することも覚悟のうえで戦場に戻った。
そんな景の姿に触発されて、海賊仲間たちも彼女を助けに向かう。やはり自分の命を顧みずにね。そしてそれぞれのキャラクターがそれぞれにキャラクターに相応しい戦をして、その姿が読者の魂を揺さぶるのですが……ここから先は、実際に読んでください(笑)」。
実に活き活きした表情で語り尽くしたユースケさん。本の面白さがひしひしと伝わってくるインタビューだった。次回は最終回、『僕のマーチン君』(枻出版社)について語ってもらう。
清水健吾=写真 TAKAI=ヘアメイク ぎぎまき=取材・文