クリスマスが近づき、普段忘れがちな“愛”について考える機会も多いこの時期。デザインやコンセプト、あるいは内に秘めたエピソードから、“深き愛”を伝える時計があるのをご存知だろうか。
身につけた時の見た目はもちろん、心までも彩ってくれるようなロマンティックな時計。ただ眺めるだけで、さまざまな思いが去来し、大切な誰かを感じる。そんな一本をこの冬に。
HERMES
エルメス/スリム ドゥ エルメス ルゥール・アンパシアント
アラーム機能を備え、4時位置にあるサブダイヤルに12時間以内の時間を設定すると、その60分前から左のレトログラード針がカウントダウンを開始する。まるで機械仕掛けの砂時計のように感情の昂ぶりを表現しながら、着用者のみに聞こえるような密かな音が一度だけ鳴る。
エルメスにとって時とは単なる時間の移り変わりでなく、日常を美しく彩るものであり、そんなコンセプトから、時もまたオブジェと捉える。この時計は、大切な人との待ち切れない時間の訪れまでを楽しませてくれるのだ。
CARTIER
カルティエ/タンク ルイ カルティエ LM
今年で100周年を迎えたカルティエのタンクは、それまで懐中時計を前身にしたラウンドケースが主流だったのに対し、ラグをケースサイドと一体化した直線基調にすることによって新たな腕時計の時代を拓いた。その先進性は男女を問わず虜にし、愛用者はタンキストと呼ばれたほど。
さらにその存在を際立たせたのは、男性が愛する女性から贈られる時計だったということだ。俳優イヴ・モンタンが愛用したタンクは、女優シモーヌ・シニョレから贈られたものであり、かくしてタンクは愛を語る時計になったのだ。
HARRY WINSTON
ハリー・ウィンストン/HW オーシャン・バイレロトグラード オートマティック 42㎜
地底のマントルで、約40億年の時と偶然が作り上げたダイヤモンド。それは、地球上の天然物で最も硬い石だ。ダイヤモンドが永遠の象徴となり、ふたりの絆となるリングに使われるのもそのため。
例えば女性のエタニティリングに合わせるなら、こんなジュエリーウォッチはいかがだろう。贅沢にあしらったバゲットダイヤモンドは、輝きにも力強さがみなぎる。世界限定20本。
JAEGER-LECOULTRE
ジャガー・ルクルト/レベルソ・クラシック・ラージ
1931年に誕生したレベルソは、もともとは激しいポロ競技にも耐えられるように考案された反転式ケースで知られる。だが、タフネスばかりでなく、その独創性は反転したケースバックにエングレービングを施すという、エレガントでロマンティックな装飾性を生み出した。イニシャルやナンバー、パターンに相手への思いを刻むことができる(有料サービス)。
FRANCK MULLER
フランク ミュラー/トノウ カーベックス パーペチュアルカレンダー 25th
ブランド創設の5年前、かねてより複雑時計を手掛けていたフランク・ミュラーは、親しいコレクターの妻から「ラウンドケースでない、独自のデザインを」という依頼を受けた。
そうして生まれたのがトノウ カーベックスで、はたしてそれはブランドのアイコンとなる。今作は、その“処女作”の復刻。目の肥えた女性をも満足させる凄腕は、さすが天才時計師。
BALL WATCH
ボール ウォッチ/トレインマスター ムーンフェイズ
ムーンフェイズの月の部分に13本のマイクロガラスライトを配置することによって、一般的なトリチウム夜光塗料に比べて70倍の光度で自発光する。
その明るさはまるでスーパームーンを思わせ、月の満ち欠けを通してパートナーへの思いをよりロマンティックに演出するのだ。暗闇に浮かび上がる腕元の月は、まさに夜空と一体になる。是非ともふたりで楽しみたい。
OMEGA
オメガ/シーマスター アクアテラ
二枚貝によって育まれる真珠は、恋人同士を引き寄せる愛の象徴であり、なかでもマザー・オブ・パール(=真珠母貝)は時計の文字盤に使われることも多い。
この時計ではタヒチ産を採用し、見る角度によってダークトーンをピンクやグリーンなどで美しく彩る。と同時に、1万5000ガウスの対磁性能を持つタフネスも魅力。スモールサイズも揃え、永遠の愛を誓うペアウォッチとしても最適だ。
さまざまなエピソードやデザインに込められた意味などを紐解いていくと、腕時計が単なる道具ではないことがよく分かる。そんな愛深き一本は、大切な人との大切なひと時を魅力的なものにしてくれるはずだ。
星 武志(エストレジャス)=写真 石川英治(Table Rock. Studio)=スタイリング