F1の絶対王者であり、市販車においても最高速度は300㎞/hを超える超高性能なスポーツカーを製造するフェラーリ。“走りを第一”と考えるブランド哲学から生まれるクルマは、最高にエキサイティングなドライビングを楽しめる半面、実用性においてはやや不向きな部分があるのも事実。
しかし、昨年発売された「GTC4ルッソ」は、これまでとは少し違ったコンセプトから誕生した、新世代のフェラーリとでもいうべきモデルなのである。
まず、目に留まるのはそのボディ形状。広い荷室を確保し、キャンプ道具やリアシートを倒せばサーフボードだって積むことができる。
最新の4WDシステム「4RM Evo」が装備されたことも特徴だ。フェラーリが特許を取得した4WD機構で、雪道やウエット路面でも優れた操縦安定性と車両コントロールを実現した。
そして最も魅力的なのが、車名の「4」が意味する、フル4シーターのキャビンだ。スポーツカーによくある後席が窮屈な「2+2シート」ではなく、大人4 人がゆったりと乗れる。
つまり、このGTC4ルッソなら、荷物が積めて、家族や仲間と出かけられる。そして悪路だって走行可能というわけだ。これってアクティブライフを謳歌する、多くのオーシャンズ世代が理想とするクルマ。もちろん、フェラーリが伝統とする比類なき速さとエレガンスを継承しながらの、この実用性。フェラーリでサーフィン、キャンプ、家族旅行。想像するだけでもワクワクしてこない?
フェラーリ GTC4ルッソフェラーリ初の4WDモデル、シューティングブレークスタイルを採用した「FF」の後継モデルとして昨年登場。乗る人を高揚させるエキゾースト音や圧倒的な加速力を実現する6.2LのV12エンジンにラグジュアリーなインテリアは、実用度の高いクルマとはいえスーパーカーそのもの。また、より都市生活者へ向けた日常使いのモデルとして、後輪駆動の3.8L、V8ツインターボエンジンモデル「GTC4ルッソT」が追加ラインナップされた。GTC4ルッソは3470万円、GTC4ルッソTは2970万円。
4つの視点からGTC4ルッソを徹底解剖!
1.スポーツ性とGT的要素を融合させたデザイン実用的であり、ロングドライブにも適した広い荷室やリアシートが確保できるシューティングブレーク。そんなボディ形状を採用しながらも、フェラーリが伝統とするスポーツ性能と美しさを継承している。また、クーペのようにリアに向かってルーフがなだらかな曲線を描いているのも特徴だ。
2.V型12気筒エンジンにオフロードも走れる走行性能最高出力690PS 、0→100㎞/h 加速3.4秒、最高速度335㎞/hといった速さに関する数字はまさに超高性能スポーツカーそのもの。また4WDに、4WS(4輪操舵)を組み合わせたシステムは同社初となる。砂浜や雪道など、あらゆる路面に対応するためであり、同時に安全性と速さにも直結しているのだ。
3.大人4人がゆったり座れて荷物も積める広い居住空間と荷室後席足下のスペースも広く、大人4人でのロングドライブも楽々可能。また、荷室の積載量は通常時450ℓだが、後席を倒せば最大で800ℓに。この居住空間や積載量は、フェラーリでは唯一。普段の買い物からアウトドアまで使える、オールラウンダーだ。
4.パッセンジャーディスプレイが装備された先進的なコクピットシステムウインカーをボタン式にして、極力ステアリングから手を離さずに運転ができるのもフェラーリ車の特徴。ナビ&インフォテイメントシステムはHDタッチスクリーン式パネルで、Apple CarPlayにも対応している。また、ドライバーと同じような感覚を共有できるよう、助手席前にも8.8インチのディスプレイを用意。エンジン回転数やスピートなどが表示される。
“一部の特別な人だけが乗るクルマ”から、“より多くの人にフェラーリ”を。生粋のスポーツカーとはひと味違う、フェラーリのなかでは特異な存在ともいえるこのクルマは「まさにオーシャンズ世代がターゲット」だ。「フェラーリ=スーパーカー」だけで語るのは、もう昔の時代の話なのかもしれない。
鈴木 新(go relax E more)=写真