2018.10.28
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TUDORが日本正式デビュー。それは、本当に腕時計界最後の大物か?

腕時計業界最後の大物が、満を持して日本に上陸する。そんな大げさなタイトルを付けるべきか悩んだけれど、それでもあえて言いたい。とうとう、あのチューダーが日本に上陸するのだから。

まず、チュードル? チューダー? 正解はどっち?

1926年創業の歴史あるブランドであり、近年数々の話題作を発表し続けているチューダー。日本ではこれまで「チュードル」の名で知られてきたが、このたび、本来の「チューダー」の名を冠し、日本デビューを果たすことになった。

ここ数年、ヴィンテージウォッチ市場での評価がうなぎ上りのこのブランド。なかには数年前の5倍以上の価格がつけられているモデルもある。近年は、セカンダリーマーケットの評価が現行モデルのブランド価値に強く反映される傾向があるだけに、その注目度は高い。


ロレックスの廉価版という認識の間違い

チューダーといえばロレックスの廉価版。そう思っている人も多いかもしれない。しかし、それは必ずしも正確ではない。確かに、ロレックスと比べて価格は非常にリーズナブルだが、それは単に安くして大量に売るための価格ではなかった。

ロレックスの創立者、ハンス・ウイルスドルフ氏。

ロレックスの創立者ハンス・ウイルスドルフが、“ロレックスの技術力を世に広く知らしめるために創設したブランド”というのが正しい理解である。チューダーにロレックスの技術を一部移管し、手頃な価格でそれを体験してもらうのが本来の狙いだったのだ。そのため、価格に対してオーバースペックなモデルが歴史的にも多く存在している。

「チューダー オイスター プリンス」。焼けたダイヤルと通称“小バラ”が歴史を物語る。リュウズにはロレックスの王冠マークが。

1952年に発表した「チューダー オイスター プリンス」などはその好例。外部から調達したリーズナブルな手巻き式のムーブメントに、それまでロレックスが門外不出としてきた「オイスターケース」と独自の自動巻き機構「パーペチュアルローター」の2つを惜しげもなく搭載したのだ。

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チューダーは、なぜ今、日本上陸を決めたのか?

ではなぜ、チューダーはこれまで日本で正規販売されず、また、このタイミングで上陸に至ったのか。

まず、前者についてだが、日本では、かなり早い段階からロレックスの技術力が高く評価されたことが大きい。そのため、わざわざチューダーを投入する必要性がなかったのがその理由。一方、このタイミングでの上陸には、修理部門からの声が少なからず影響を与えている。

近年の世界的なチューダー人気により、日本国内にもさまざまな形でチューダーの時計が入ってくるようになった。日本ロレックスではチューダーの販売はなかったものの、修理などメンテナンスに関しては対応してきたのだが、中にはジェネリックパーツが使われるなど、精度に大きな問題をかかえる個体が存在していたという。そうした状況から消費者を守るため日本での正規販売を決めた、というのがその実のようだ。


チューダーは機械がそこそこ、というのはもう古い!?

チューダーの個々の時計に目を向けると、「ロレックスと同様の魅力」と「ロレックスにはない魅力」の2つが共存していることがわかる。ここでは、その点についてじっくり見ていきたい。

まず、ムーブメントについて。かつては社外製ムーブメントを使用してきたチューダー。それこそが低価格の源泉でもあったが、現在、多くのモデルで自社製ムーブメントを採用している。なかでも2015年発表の自動巻きムーブメント「MT5612」の存在は大きい。

人気モデル「ペラゴス」に搭載されている自社製ムーブメント「MT5612」。マニュファクチュールとしても高い自信を覗かせる。

その精度は日差マイナス2秒以内プラス4秒以内。ロレックスの日差マイナス2秒以内プラス2秒以内という基準には及ばないものの、一般的に高精度の象徴として用いられるC.O.S.C.(スイスクロノメーター認定)が定める日差マイナス4秒以内プラス6秒以内という基準は大きくクリアしている。パワーリザーブも約70時間と長めで実用的だ。ロレックスとチューダーでは、技術者の人事交流もあるというから、その機械の完成度の高さも十分にうなずける。

一方、クロノグラフモデルには、名門ブライトリングと共同開発したムーブメントを搭載したモデルもある。こちらにも自社製ムーブメントと同様にロレックスが誇るシリコン製バランススプリングを使用している。これは磁気帯びの心配がないという優れものである。それでいて、価格は50万円アンダーというから驚きだ。


ブライトリング社と共同開発したムーブメントMT5813を搭載する「ブラックベイ クロノ」。 ファブリックストラップや味わいのあるレザーストラップなどバリエーションも豊富。左から46万5000円、49万5000円、46万5000円 ※すべて予価/すべてチューダー(日本ロレックス 03-3216-5671)

ではなぜ、これほどまでの低価格が実現できるのか。現在の高級時計の世界では、機械の目に見えない部分にまで細かな装飾を施すのが一般的だが、チューダーではそれをやめることでコストを抑えた。目指すのはあくまで実用的な道具としての腕時計。そんなところも、また男心をくすぐるのである。

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次に、チューダーのデザインに目を向けてみよう。ケースにオイスターケースが採用されているため、一見、ロレックスに近い質実剛健な印象を受けるかもしれない。しかし、チューダーの魅力はそれだけにあらず。その面白さはむしろ針やロゴといったディテールにある。

例えば、同社のアイコンの一つにもなっている「スノーフレーク針」。1960年代に誕生し、主にダイバー系のモデルの時針として用いられてきたこの針は、ヴィンテージの世界でも人気が高い。現在、この針はチューダーの多くのモデルに採用されている。

また、カラバリの面白さも、チューダーならではの魅力と言えるだろう。特にヴィンテージデザインを現代に甦らせた「ヘリテージ」ラインで目につくのがブルーやオレンジ。挿し色を効果的に使っていて、ほかにない楽しさがある。

左●40万円、右●43万円※ともに予価/ともにチューダー(日本ロレックス 03-3216-5671)

ロレックスの持つ質実剛健な印象に、ちょっとした「遊び心=ディテール」が共存する。これこそが、チューダーがファンを引きつけてやまないポイントだ。


1日18本しか作れないファブリックストラップ

見た目上の特徴として、もう1つ無視できない存在が、ファブリックストラップだろう。一般に「NATOバンド」とも呼ばれるこのストラップは、その名の通り、もともとはミリタリーの世界で使われてきた。今でこそ多くのブランドが選択肢の1つに用意しはじめたが、チューダーでは半世紀近く前から、オリジナルストラップとして製造してきた。

TUDOR
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その背景には、1950年代〜1970年代にチューダーのサブマリーナが、フランス海軍、そしてアメリカ海軍の支給品として採用されていた事実が大きく関係してくる。軍に納品した時計がファブリックストラップを装着して使用されていることを知ったチューダーは、その魅力を発見。ブランドとしても独自に製造するようになったという。

現在はフランス・リヨンのサン・テティエンヌにあるジュリアン・フォア工房でファブリックストラップを製造しているが、これがとにかくすごい。木製の古い織機で織ることができるファブリックは、1日にわずか6m。1mで作ることができるストラップは3本のみというから、1つの機械で1日に作られる本数はわずか18本ということになる。

とにかく質感がよく、サテンのような肌触りで着け心地は抜群。それでいて、ガンガン洗うこともできる。使い込む程にアジが出る、デニムのように楽しめるストラップなのである。

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ほかにも、フランス海軍に依頼され、左利きの人のためにリュウズを逆側につけた「ペラゴスLHD」や、チタン製ケースを採用したモデルなど、ロレックスにはないディテールを備えたラインナップを多く有するチューダー。日本では「ブラックベイ」「ペラゴス」「ヘリテージ」など、限られたラインナップでスタートする予定だが、上記のような“ツボを押さえた”モデルはほぼほぼ網羅されている。

10月31日(水)からは伊勢丹新宿店、大丸東京店、タカシマヤウオッチメゾン 東京・日本橋、阪急メンズ大阪店、11月14日(水)から名古屋松坂屋、12月19日(水)から髙島屋大阪店と、年内は6店舗からのスタートとなる予定だ。価格が30万円〜50万円代と求めやすい半面、それぞれの入荷数はそれほど多くなさそう。意中のモデルがある人は、早めの行動が求められるかもしれない。


安藤夏樹=編集・文


# チューダー# ロレックス# 腕時計
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