チューダーは、なぜ今、日本上陸を決めたのか?
ではなぜ、チューダーはこれまで日本で正規販売されず、また、このタイミングで上陸に至ったのか。
まず、前者についてだが、日本では、かなり早い段階からロレックスの技術力が高く評価されたことが大きい。そのため、わざわざチューダーを投入する必要性がなかったのがその理由。一方、このタイミングでの上陸には、修理部門からの声が少なからず影響を与えている。
近年の世界的なチューダー人気により、日本国内にもさまざまな形でチューダーの時計が入ってくるようになった。日本ロレックスではチューダーの販売はなかったものの、修理などメンテナンスに関しては対応してきたのだが、中にはジェネリックパーツが使われるなど、精度に大きな問題をかかえる個体が存在していたという。そうした状況から消費者を守るため日本での正規販売を決めた、というのがその実のようだ。
チューダーは機械がそこそこ、というのはもう古い!?
チューダーの個々の時計に目を向けると、「ロレックスと同様の魅力」と「ロレックスにはない魅力」の2つが共存していることがわかる。ここでは、その点についてじっくり見ていきたい。
まず、ムーブメントについて。かつては社外製ムーブメントを使用してきたチューダー。それこそが低価格の源泉でもあったが、現在、多くのモデルで自社製ムーブメントを採用している。なかでも2015年発表の自動巻きムーブメント「MT5612」の存在は大きい。
その精度は日差マイナス2秒以内プラス4秒以内。ロレックスの日差マイナス2秒以内プラス2秒以内という基準には及ばないものの、一般的に高精度の象徴として用いられるC.O.S.C.(スイスクロノメーター認定)が定める日差マイナス4秒以内プラス6秒以内という基準は大きくクリアしている。パワーリザーブも約70時間と長めで実用的だ。ロレックスとチューダーでは、技術者の人事交流もあるというから、その機械の完成度の高さも十分にうなずける。
一方、クロノグラフモデルには、名門ブライトリングと共同開発したムーブメントを搭載したモデルもある。こちらにも自社製ムーブメントと同様にロレックスが誇るシリコン製バランススプリングを使用している。これは磁気帯びの心配がないという優れものである。それでいて、価格は50万円アンダーというから驚きだ。
ではなぜ、これほどまでの低価格が実現できるのか。現在の高級時計の世界では、機械の目に見えない部分にまで細かな装飾を施すのが一般的だが、チューダーではそれをやめることでコストを抑えた。目指すのはあくまで実用的な道具としての腕時計。そんなところも、また男心をくすぐるのである。
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