僕らの愛しい腕時計 Vol.8
2018.03.18
WATCH

2本しか時計を持たないナイジェル・ケーボンは、なぜタイメックスとコラボしたのか?

機構の凄さや稀少性といった一般的な価値観では測りきれない魅力を持つ腕時計。それがミリタリーウォッチである。

事実、街角を行くセンスのいい大人の腕にはかなり高い確率で、ミリタリーウォッチが巻かれている。

そこで、世界を代表するモノ好きファッションデザイナー、ナイジェル・ケーボンさんに聞いてきた。「なんで男はミリタリーウォッチに惹かれるんですか?」

ナイジェル・ケーボンさん。1949年、イギリス・ニューカッスル生まれ。今年、デザイナーデビュー50周年を迎えた大ベテラン。「3度のメシよりヴィンテージ好き」で、来日中には中目黒のジャンティーク、高円寺のサントラップといった古着屋巡りが欠かせない。

アウトドアやミリタリーのヴィンテージウェアのコレクターとして知られるファッションデザイナー、ナイジェル・ケーボンさん。御年69歳。

英国北部のニューカッスルで生まれ育ち、ファッションに興味を持った1960年代からコツコツ蒐集してきたそれらの量は膨大で、それこそガラクタから“博物館” 級のアイテムまでわんさか。

そんな彼だからこそ「時計もさぞかしたくさん持っているんだろうな」と話を聞いてみると、なんと2本しか持っていないという。しかも、どちらもミリタリーウォッチなんだとか。

「エクストリームな環境で確かな情報を得るためのツールとして進化したミリタリーウォッチは、使いやすく、タフで、邪魔にならなくて、武骨で、すべてのディテールに意味があって、歴史もある。モノ好きにとってこれ以上魅力的なものなんてないよ(笑)。と言いつつ、時計は着けるのが煩わしくてずっと興味がなかったんだけどね。でも、“コレならいいかも”と初めて買ったのがIWCの『パイロット・ウォッチ』。無駄を削ぎ落としたデザインが気に入っていて、出会いは確か……1990年だったかな」

以来30年、毎日着けているのだという。ちなみにこれは左手専用で、 針はいつも故郷英国の時間に合わせてる。で、右手に着けているのは?

ナイジェルさんが所有するすべての腕時計。左が「レマニア」のヴィンテージクロノグラフ、右が30年前に購入した「IWC」のパイロット・ウォッチだ。これを毎日“両手”に着けている。

「1967年代のヴィンテージ。LEMANIA(レマニア)というブランドのもので、英国空軍に納入していたアイテム。“ボタン”がゴチャゴチャ付いていないワンプッシュ・クロノグラフがクールだと思ってさ。そしてダイヤルに刻印された英国空軍の象徴『ブロードアロー』マーク。矢印みたいなコレが僕の大好物(笑)。女性にはわからないかもしれないけど、男だったらわかるよね? こういうところに固執しちゃうところ」

5年前に日本で手に入れたという1本について楽しそうに話すナイジェルさん。これは右手専用で、滞在している国の時間にセット。「 超アナログなデュアルタイムさ(笑)」と、使い分けについて教えてくれる。

しかし、これで持っている時計はすべて。そのことについては「簡単さ。この2本を超える魅力的なアイテムと出会っていないだけ。でも、タイメックスと一緒に作ったこれは、3本目のコレクションに迎え入れるのに相応しい出来だね」と、小さなコットンキャンバス製の袋を取り出した。

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中から出てきたのは、タイメックスの代表作「キャンパー」をベースにした見たことのない1本。ブラックフェイスにオリーブグリーンのインデックス、ベルトはベンタイル生地で作られている。しかもベトナム戦争時には米軍官給品だった「キャンパー」の12時位置に、なんと英国空軍の象徴「ブロードアロー」を刻印してしまっているのだ。

「英米共軍(笑)。こういうことができるのはファッションの楽しいところ。ちなみにベンタイルも英国軍が大戦で使った素材で、時計のベルトでコレが使われたことって意外とないみたいなんだ。作ってみたらスゴくいい感じ。経年変化で味も出てくるし、長く使う時計には最適だと思うよ」。

「そういえば今日履いているスニーカーもベンタイルだ!」と言って、コラボウォッチを合わせるナイジェルさん。それをスタッフに「撮って撮って」と指示。

1968年にデビューして、ファッションデザイナーとして50年間活躍してきたナイジェルさんの知識と自由な発想が生んだミリタリーウォッチ。そのデザインの着想源には、ある俳優がいたという。

「ショーン・フリンというアメリカ・カリフォルニアの俳優で、ベトナム戦争に出兵してカメラマンに転身した人なんだ。彼は1970年に28歳で行方不明になってしまうんだけど、きっとその手にはタイメックスが巻かれていた。そして、彼のフォトジャーナリストとしての活躍を知る限り、彼は戦争には絶対に賛成はしていなかった。そういうことに想いを馳せていくといろんなアイデアが湧いてきて、こういうプロダクトに落ち着いたんだ」

そのオマージュを込めて、収納するコットンキャンバス製の袋にはショーン・フリンの顔をプリント。モデル名は「ナム・ウォッチ」と付けられた。確かにコイツは、これまでにない逸品である。

「基本的に時計は毎日着けるもの。傷が付いたらとか、スタイリングによって使えないとか、時間があっているかとか、気にかけることがあるほどにストレスになる。その点、ミリタリーウォッチは優秀だ。頑丈だし、着け心地もいいし、シンプルなデザインで汎用性もある。もちろん機能も素晴らしい。そこに心を満たす喜びまであったら無敵だと思わないか?」

史上初の英米同盟デザインで、使い込むほどに味わいが出るミリタリーウォッチ。これはまさに無敵なのかもしれない。

「ナムウォッチ」SSケース、クオーツ。2万3000円[レザーベルト付属、キャンバスケース付き]/ナイジェル・ケーボン × タイメックス(アウターリミッツ 03-5413-6957)
# タイメックス# ミリタリーウォッチ# 腕時計
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