OCEANS

SHARE

2017.01.31

ライフ

『ダーティ・グランパ』 / デ・ニーロに学ぶ、生涯現役オッサン“道”の秘訣


オッサンの醸し出す哀愁やチャーミングさに惹かれる若い女性は意外と多いという。しかし、女性ならではの「ツボ」を理解するのはけっこう難しい。そこで、映画に精通する女性ライターに、オッサン主演映画とその俳優の魅力を伺ってみた。所作や独特の雰囲気、生き様など、作品の役柄から見る「格好いいオッサン」とは一体どんな人物像なのか。それを知れば、「オッサンの格」がまたひとつ上がるかもしれない。
OSSANs IN ACT」を最初から読む
今回はベテランのカメレオン俳優、ロバート・デ・ニーロの新作『ダーティ・グランパ』から、70代でありながら「生涯現役!」と言わんばかりに、本能で生き続ける“レジェンド・オブ・オッサン”を紹介する。
 
【今回の先輩オッサン】
ロバート・デ・ニーロ(ディック役) / 『ダーティ・グランパ』
写真右/ロバート・デ・ニーロ(ディック役)
 
ロバート・デ・ニーロの俳優人生でいちばん、はちゃめちゃなオッサン役で登場
ロバート・デ・ニーロと言えばこれまで100本近い作品に出演している名優。この『ダーティ・グランパ』ではコメディー俳優として徹底的にカラダを張っている。これまでにも『ミート・ザ・ペアレンツ』や『アナライズ・ミー』など、コメディー映画への出演はあるものの、本作のはちゃめちゃレベルはそれを上回っている! なにせ、数々の役を演じてきた彼が台本を読んで、「ここまで際どい脚本を書くとは」とお褒めの言葉(!)をおっしゃったとか。その“際どい役柄”を体当たりで演じた姿は見物だ。
 
朝から酒を飲み、若い女性をナンパする……本能むき出しの姿がアツい!
現在公開中のこの作品はロバート・デ・ニーロと若手俳優ザック・エフロンが“祖父&孫”として共演するバディ・コメディー。1週間後に結婚式を控えた弁護士のジェイソン(ザック・エフロン)の元に祖母の訃報が届き、葬式で久々に祖父のディック(ロバート・デ・ニーロ)と再会。「妻との思い出の地、フロリダへ行きたい……」というディックの半ば強引な頼みを引き受け、2人だけの傷心旅行に出ることろから物語は始まる。
「好きなように生きてほしい」という亡き妻の遺言どおり(?)に、ディックは40年ぶりの独身を満喫するべく、朝から酒を飲み、葉巻を吹かし、ゴルフ場で若い女性をナンパ! 予測のつかないディックの行動に、真面目すぎる孫は振り回されっぱなし。自由すぎるディックのちょっぴりお下劣だけどしっかり感動させてくれる珍道中が面白く、ラストには旅の本当の理由と、思いも寄らない感動が待っているのだ。
 
上半身裸でおちゃらけるシーンも、オッサンから漂う「元マッチョ」さにクギづけ
デ・ニーロが孫世代の女性をナンパ? 自宅でAV鑑賞? と、爆笑と驚きの連続だ。なかでも大爆笑だったのは、全米の大学生が集うというデイトナ・ビーチでのステージ。上半身裸で孫のジェイソンと一緒に一気飲みを披露するシーンだ。20代のようにはしゃぐ姿に多少呆れてしまうが、それよりつい注目してしまうのが、2人の上半身裸。ザック・エフロンの若くてマッチョな肉体は確かにうっとり〜だが、オッサンのデ・ニーロも負けていない!
「きっとディックは昔マッチョだったんだろうなぁ〜」と思わせる胸板や二の腕にドキッとする(残念ながらお腹はややぽっちゃり……だけど、それはそれで、いいのかも)。ちなみに役づくりは常に徹底しているデ・ニーロ。体重の増減や肉体改造をはじめ、演じる役の職業を実際に体験するなど準備は半端なく、その役づくりは「デ・ニーロ・アプローチ」と呼ばれるようになり、多くの俳優に影響を与えてきた。そんな「人生の経験」もカラダに現れているのかもしれない。
その上半身裸で技を披露するステージシーンは、見た目的にやっていることはバカバカしいけれど、祖父と孫の回想が差し込まれることで、2人の絆が垣間見えるという、あたたかいシーンでもある。

 
「年寄りは格好いい」という自信を持って生きている人は素敵!
そしてその後、パーティに繰り出すときのジャケットの着こなし方や、チンピラに絡まれたときの喧嘩のやり方など、決めるところはきっちり決める格好良さのギャップに、女性はやられてしまう。年寄りだからと遠慮するのではなく、「年寄りは格好いいんだ!」という自信がなんとも素敵だ。少し間違うと単なるお下品なキャラ&映画になってしまうところを、絶妙な笑いと横柄さで攻めてくるデ・ニーロの演技力とユーモアさはやっぱりすごい!
自然と人を引きつけて巻き込む力があるオッサンは、若い人にはない「勢い」がある。ストーリーの面で見ても、孫のジェイソンにとってディックは葬式の翌日に旅に出る常識外れの祖父。しかも若い女性をナンパして羽目を外すどうしようもない男……に映っているかもしれないが、ディックと一緒にいることでジェイソンは知らず知らずのうちに自分自身を解放している。孫を想う祖父の気持ち──そして、はちゃめちゃな言動の裏に隠された想いを知ると、より一層格好良く見えるだろう。

 
若い女性に「寝たい!」と思わせるには、チャーミングさと余裕が必要?
世間的には間違いなくオッサンの部類だが、それでも素敵〜♡ と思ってしまうのは、経験を積んできたオッサンの醸し出せる「余裕」「チャーミングさ」「エロス」「優しさ」、中身なのではないかと。この映画の中でもディックに興味を持ち「寝たい!」と迫ってくる若い女性レノーアがいるように、ディックのような格好いい「熟男」を好きになる女性はきっと多いはずだ。オーシャンズ世代にはちょっと上の世代だが、デ・ニーロの持つ普遍的な格好良さは参考になるはず。女性が大人の男性に求める格好良さがこの映画には詰まっている!

 

【information】
『ダーディ・グランパ』

出演:ロバート・デ・ニーロ、ザック・エフロンほか
監督:ダン・メイザー
配給:REGENTS、日活
R15+指定
http://dirtygrandpa.jp
2017年1月6日(金)TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー
© 2016 DG Licensing, LLC. All Rights Reserved.
 
ライター
新谷里映(しんたに りえ)
映画ライター、コラムニスト。女性誌「ESSE」、映画誌「J movie magazine」「CINEMA SQUARE」、ウェブ「cinemacafe.net」「NYLON JAPAN」「T-SITE」などでインタビュー、コラムなどを執筆。日テレ「PON!」の映画コーナーやラジオに出演するほか、映画のトークイベントのMCとしても活動中。http://rierieshintani.tumblr.com/
次回を読む



SHARE

次の記事を読み込んでいます。