37.5歳の人生スナップ Vol.79
2019.08.26
LIFE STYLE

純烈・小田井涼平(48歳)「芸能人に向いてない」と思いながらも辞めなかった理由【前編】

小田井さん

「いまだに芸能界に向いてないなと思いながら続けています。本当は裏方気質なんですよね」。

そう苦笑するのはムード歌謡グループ『純烈』のメンバー、小田井涼平さん(48歳)だ。「夢は紅白出場、親孝行」を合い言葉に結成された純烈は、メンバーのほとんどが俳優出身という異色のユニット。全国の健康センターでライブを行うことで着実にファンを増やし、昨年ついに紅白初出場を果たした。

ファン層は40代50代のご婦人から80代のおばあちゃんまでと幅広い。郷愁を誘う音楽と漫談を思わせる息のあったMCで会場を沸かせ、いまやライブのチケットは即日完売する。

ステージの様子

小田井さん自身が『純烈』として音楽活動を始めたのは36歳の頃だった。苦節10年、昨年はタレントLiLiCoさんと結婚するなどめでたいこと続きの1年だったが、本人はまったく浮かれていない。

「挑戦」がもてはやされる時代において、「継続することも大事だ」と話す。

「40代で新しいことに挑戦するのってしんどいじゃないですか。最近はなんでも挑戦がすべてと語られがちだけど、僕は自分がこれまで生きてきた軌跡のなかにヒントが隠れているんじゃないかと思います」。

小田井さんが生きるヒントを見つけるまでの軌跡を追った。

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阪神大震災で大阪に帰れなくなった

芸能界キャリアのスタートはモデルだ。もともと芸能界には興味がなかったという小田井さん。表舞台を選んだキッカケは「友達が欲しかった」という意外なものだった。

小田井さん

「大学卒業後、地元で働きたくて就職先を決めたんですが、蓋を開けてみたら縁もゆかりもない仙台転勤が決まった。同期も友人もいないので寂しくて……思い切って仙台のモデル事務所に所属したんです」。

今ではワイルドで男前な印象が強い小田井さんだが、20代は線の細い美形。身長188㎝の抜群のスタイルで、周囲からモデルを薦められることも多かった。

「仕事はブライダルショーや広告モデルがメインで、たまにCMとか。当時は上司が約束してくれた大阪勤務に戻るまでという軽い気持ちで始めました」。

本業サラリーマン、副業モデルの二足のわらじ生活が続いた。しかし’95年の阪神大震災が状況を一変させてしまう。

「被害を受けたスタッフから本社の大阪に戻ることになり、僕は幸いにも実家も家族も無事だったので仙台での勤務を続けることになりました。大変な方がたくさんいるなかで、とても呑気に大阪に戻れる状況ではなかった」。

そうして見知らぬ土地で歳を重ね、気づけば28歳になっていた。モヤモヤした気持ちを抱えたまま30歳を迎えたくないと小田井さんは会社を退職。順調だったモデル業に専念することを決意する。

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仮面ライダー俳優デビューは32歳

東京のモデル事務所に移って気づいたのは、地方と違って苛烈な競争があることだった。

「仙台ではただ真面目に目の前の仕事をこなすだけでポンポン次の仕事が舞い込んできましたが、東京では自分から掴みに行かなければ何もできなかった」。

そんななかオーディションで勝ち取ったのが、『仮面ライダー龍騎』の仮面ライダーゾルダ役だ。32歳……俳優としては遅咲きのデビューだった。

小田井さん

「当時は特撮俳優ブームや2.5次元俳優が注目を集め始めていて、いわゆる若手イケメン枠の人たちが腐るほどいた。僕は年齢的には若手じゃないけど経験としては新人だから、中途半端なままでした」。

年齢的にヒロインの相手役は難しいが、主人公の先輩や上司役をこなせるほど演技経験を重ねているわけでもない。自分よりひとまわり若い世代に紛れ、若手イケメン俳優として振る舞うことに焦りがあった。

「どんどん歳をとっていくのにマズいなと思っているときに『純烈』の話をいただいて。若かったらほかにやりたいことが見つかって断るか、すぐに辞めていたかもしれない。でも潰しのきく年齢っていうのはとっくに過ぎていて、もう僕には純烈しかなかった」。

時代がまわれば音楽もまわる。これからの社会、歌謡曲が再評価されることもあるはずだ。それは、自らの性格を現実的と語る小田井さんらしい冷静な判断だった。とはいえ当時は何も考えていなかったと小田井さんは笑う。

「なにかを始めるときはなにかを失うときでもあるわけで、考え過ぎても先に進めない。用意周到に準備して無難にまとまったり、失敗して落ち込んだりするぐらいなら、何も考えずに踏み出してみようと思いました」。

“つまらなかったら辞めよう”。そう思って飛び込んだ歌手活動。歌謡曲を歌うのもダンスを踊るのも初めての経験だ。ボイストレーニングなどデビューに至るまでの練習期間は3年にも及んだ。

30代後半でスタートした小田井さんの厳しい『純烈』下積み時代。その続きは【後編】で。

藤野ゆり(清談社)=取材・文 小島マサヒロ=撮影

# 37.5歳の人生スナップ# ムード歌謡# 小田井涼平# 純烈
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