2019.08.12
LIFE STYLE

佐賀にある「羊羹日本一の街」へ飛び、日本の夏の風情を味わう

暑い夏は、涼の“摂り方”次第でいくらでも快適になる。大人なら知っておきたい、夏場のクールダウングルメ。

食を求める夏の旅。ところてん、そうめんも最高に美味かったが、ひんやりおいしい夏の風物詩はほかにもある。

突然だが、佐賀県小城(おぎ)市をご存じだろうか?

筑紫山地の豊かな緑の中、全国名水百選のひとつである清水川が流れ、豊かな土壌で育まれた広大な水田が広がる。のどかな光景の中にあって、京都を模したような街並みに風情が薫る……海や山とはひと味違ったチルライフを送れそうな街だ。

佐賀県中央部、博多駅から特急電車と各停を乗り継いで約1時間、人口5万人に満たない小さな街だが、実はここ、日本一の「羊羹」の街として知られている。


Googleマップ上のJR唐津線の小城駅(画像中央下部)から、北に延びる道沿いを中心に連なるピンクのマークはすべて羊羹屋(ちなみに緑のマークは羊羹の資料館)。その数なんと20軒以上! しかもそのほとんどが創業50年以上という、由緒正しき羊羹激戦区なのだ。

夏の甘味といえばかき氷にあんみつもいいけど、ひんやり冷やした羊羹もまた乙。佐賀県にある羊羹の街なんて、旅の目的地としてもバッチリだ。

ということで、小城駅から街道沿いを往くと、連なる2軒の立派な日本家屋が。さっそく手前から入ってみるとしよう。


①八頭司伝吉本舗(やとうじでんきちほんぽ)

この街で食べられる「小城羊羹」は、地名の入った菓子の元祖でもあるという。そんななかでも佐賀県を代表する登録銘菓として知られるのが「小城の昔ようかん」だ。

「昔ひとくち」540円[税込]/八頭司伝吉本舗 0952-73-2355

かわいらしいキャンディー包みがトレードマークで、「小城の昔ようかん」をひと口サイズにカットした「昔ひとくち」は、進物としてのイメージがある羊羹をもっと気軽に手軽にという店主の想いからこのサイズとなったそうだ。

ちなみに羊羹の表面がやや白みがかっているが「小城の昔ようかん」の特徴で、時間が経つにつれて自然に砂糖の結晶ができるのだという。食べてみると、これがなんとも美味! 口に入れると氷砂糖のようにシャリシャリした涼しげな食感。噛むとしっとりやわらかく、意外にも尾を引く甘さはなく、どんどんイケる!

各151円[税込]/八頭司伝吉本舗 0952-73-2355

続いてコチラは「新つれづれ」という名の羊羹。透明感のある本煉り羊羹で、まさに冷やして食べるのに打ってつけ。抹茶、栗羊羹、そしてフォトジェニックな桜をイメージした羊羹まで種類も豊富で、つるんっとした食感からも最高に夏を感じられる。

八頭司伝吉本舗
佐賀県小城市小城町152-17
0952-73-2355

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②橘屋八頭司 羊羹本舗(たちばなややとうじ ようかんほんぽ)

続いて間髪開けず、すぐ横にあるこちらのお店へ。さっきの店と名前が似てるけど、別の店だそう。さて、その羊羹スタイルの違いはいかに……?

中サイズ(280グラム)各930円、大サイズ(220グラム×2本)各1160円/橘屋八頭司羊羹本舗 0952-73-2660

こちらがこの店のイチオシ、「上本煉羊羹」。やはり手間ひまかけて煉り上げた特上の羊羹で、美しく透き通って見た目にも涼やかな“しぐれ羊羹”(写真手前)が人気だとか。

シャリシャリとした砂糖がホロリとほどけ、美味しさが口いっぱいに広がる。こちらもほどよい甘さで後味さっぱり! とても上品な後味で、ついついもうひと口食べたくなる。

橘屋八頭司羊羹本舗
佐賀県小城市小城町152-12
0952-73-2660

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③山田老舗(やまだろうほ)

さ、腹ごなしもかねてブラブラと散策していると、突き当りの祇園川のほとりにただならぬ佇まいの羊羹屋が軒を連ねているのを発見。順番に覗いてみよう。

まずはこちらの「山田老舗」はなんと明治28年創業。以来、とにかく餡の風味にこだわり、第21回全国菓子大博覧会においては内閣総理大臣賞を受賞。第22回全国菓子大博覧会では、最高の栄誉である三笠宮名誉総裁賞を受賞している。

もはや羊羹や和菓子という枠を超え、日本の菓子界の頂点に君臨する超一流プレーヤーである。はてさて、その実力は……

各1本388円[税込]/山田老舗 0952-73-2051

当たり前に本物でした。ツヤッツヤで美しいこの羊羹。舌触りはなめらかで、甘さはあっさりめ。餡の深い風味が口内に残る。これは「薄板巻」という商品名の羊羹で、紅練(こしあん)、抹茶、小倉、白練の4種類が用意されている。

このほかにも、表面はサクッと、内側はしっとりとした「小城羊羹竹皮切」もある。コチラは竹の皮でひとつひとつ丁寧に手包みされているもので、風情があってオススメだそう。

山田老舗
佐賀県小城市小城町905
0952-73-2051

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④天山本舗(てんざんほんぽ)

こちらは昭和27年、佐賀の名醸天山酒造より独立して創業。酒業界から羊羹業界に参入した、異色の出自を持つ変わり種。でも、その味は筋金入りの本格派である。

各1本1080円[税込]/天山本舗 0952-72-3356

「添加物、着色料など一切使わず、自然のままの原材料の風味をそのまま羊羹に」。天山本舗はそんな信条を創業以来変わらず掲げ続け、厚い支持を獲得している。

言われてみれば口当たりも甘みも餡の風味もすべてが優しい味わいで、ひと口食べるたびに身体が喜んでいるのがわかる……といったら言い過ぎか? いや、でも本当にナチュラルな味わい。こりゃリピート確定だわ。

天山本舗
佐賀県小城市小城町842-2
0952-72-3356

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⑤村岡総本舗(むらおかそうほんぽ)

ラストはここ。「小城にこの店あり!」「羊羹好きなら知らない人はいない」というほどの名店「村岡総本舗」だ。江戸時代から続く伝統的な製法を守り続ける、大御所でありながら硬派な羊羹店である。

1本1620円/村岡総本舗 0952-72-2131

この時季は水羊羹ももちろん美味いのだが、実は桜の名所でもある小城にちなんで生まれた「櫻羊羹」がイチオシ。備中産白小豆を使い、その小豆の風味は濃厚。絹のように繊細でやわらかい味わいが人気で、実際に桜が使われているわけではないが見た目にも綺麗で気分もアガる。

村岡総本舗
佐賀県小城市小城町861
0952-72-2131

いやぁ、大満足。羊羹を食べ比べてみるとそれぞれの個性もわかるし、こんなに楽しい食べ物だなんて知らなかったからビックリだ。

ところで……


そもそもなぜ小城は羊羹の街になったのか?

それにしてもなぜこの街にはこんなにも羊羹屋があるのだろうか。

江戸時代の鎖国のもと、海外との唯一の窓口となっていた長崎、出島。そこから佐賀を通って福岡の小倉までを結んだルートが旧長崎街道、別名「シュガーロード」である。つまり、当時貴重だった砂糖が手に入りやすい「シュガーロード」沿線では、カステラや金平糖のような、砂糖をふんだんに使った名産品が生まれやすかったのだ。

そして「シュガーロード」沿線で商人が泊まれる宿場のあった小城も、砂糖や製菓の技術を手に入れやすかった。そして良質な水があり、小豆の大量生産もおこなっていたことから羊羹のメッカへと発展。今も日本一の羊羹街として栄えている。

ちなみに、小城の市街地から車で15分ほど、良質な水を供給しつづける清水川の上流「清水の滝」エリアは、鯉料理で知られる名所。羊羹を味わいつつ、絶品の鯉のあらいで涼をとる。こんな旅、最高じゃない?


谷澤修太朗=文 取材協力=小城羊羹協同組合

# 夏休み# 小城市# 羊羹
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