前編の続き。
転移の恐怖と戦った1年
宇留野は、医師の言う通り、月2回の検査は行ったが、プレーをするうえで、体力面での支障は感じなかったという。むしろ、大きな変化が現れたのは精神面だった。
「少し体調が悪くなればガンのせいじゃないかって疑って、すぐに検査をしに病院に行きました。熱い風呂に入ったほうが良いと聞けば、すぐにそうしましたし、漢方薬が良いと聞けばすぐに試してみた。今考えれば正解じゃなかったかもしれないけど、何かをしていないと安心できなくて、とにかく何かにすがるような想いでした。一時は錠剤を毎日30粒も飲んでいるような状態でした。精神的にはかなりきつかったですね」。
それでも、サッカーをしているときだけは転移の恐怖を忘れ去ることができた。プレーできる喜びを噛み締め、サッカーに対する貪欲な姿勢を取り戻した宇留野は、この年のリーグ戦で、自身のキャリアハイとなるリーグ戦9得点をマークし、JFLの年間ベストイレブンに選出されるほどの目覚ましい活躍を見せる。
すると、宇留野のもとには再びJリーグの複数クラブからオファーが届いた。
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