たのしい缶詰ライフ vol.3
おっさんの楽しみ、手軽な晩酌のおともである缶詰。その魅力は、開けるだけで料理が一品増やせる、そんな利便性の高さだけではない。近頃はインテリアにもなりそうなオシャレなデザインの缶詰が登場するなど、男のコレクション心をも、どこかくすぐる存在となっている。
そんな缶詰の魅力に浸るこの連載。お気に入りの一杯を携えて、お付き合いいただきたい。
「たのしい缶詰ライフ」を最初から読むボトル片手にぱかっと開ければ、即開店。
ようこそ、缶詰Bar「Ji-bunch」へ。
今夜のお酒は何にしましょうか?
なるほど「ウイスキー」……ですか。でしたら、つまみにこちらの缶詰はいかがでしょうか?
——男37歳ともなれば、ようやく(?)ウイスキーが似合うようになってきたお年頃。お気に入りのつまみを楽しみながら、グラスを傾けようではありませんか。
今回は、缶詰ブームの先駆けとも言える書籍『缶つま』(世界文化社)などで料理製作・スタイリングを手掛けてきたフードスタイリスト・缶づめ料理研究家の黒瀬佐紀子さんに、ウイスキーのつまみにおすすめな缶詰を3つ選んでいただきました。
「ウイスキーにもさまざまなタイプのものがありますが、ビールやワイン、日本酒などと違い蒸留酒であるため基本的にどれも辛口なお酒といえます。誰かと乾杯しながら杯を重ねるより、一人でゆっくり楽しむイメージもありますね。そこでたくさんある候補の中から、特に男性に試していただきたい缶づめを選んでみました」。(黒瀬さん)
『缶つま熟成 霧島黒豚ベーコン』
(国分グループ本社/600円〈希望小売価格・税抜〉)
熟成された肉の旨みと芳醇な香りを楽しめるのが「缶つま熟成」シリーズ。こちらは、自然豊かな霧島山麓の黒豚専用農場で餌から管理を行い育てた『霧島黒豚』のバラ肉を使用。5日以上低温で塩漬けし、熟成させた、特有の脂の甘みと肉の旨さがウリとなっている。
【黒瀬’S おすすめポイント】
「ゴロンとした塊の肉が男ゴコロ(肉ゴコロ)に訴えます。スパイシーかつ、脂のガツンとした味わいが特徴。ウイスキーは高いアルコール分が舌から脂を流してくれるので、脂っこいものと相性がいいんです。もし、アレンジするなら淡白な味のものに合わせるといいですよ。例えば、ふかしたジャガイモに缶の油と一緒にかけてみる。バターをのせた『ジャガバター』とはまた違う深い味わいがウイスキーにぴったりです!」。
『かきくん製油づけ』
(竹中罐詰/831円〈参考小売価格〉)
丹後半島近海で取れる魚介を中心に展開する同社「天橋立シリーズ」のひとつ。機械に頼らず昔ながらの手仕事にこだわる。素材本来の風味を生かした味付けで、人気。『かきくん製油づけ』は、旬の時期に獲れた大きく粒の揃った牡蠣を新鮮なうちに加工し、あっさりとした風味の綿実油に漬けたもの。
【黒瀬’S おすすめポイント】
「牡蠣の缶詰は他にもありますが、こちらは別格。そもそも燻製とウイスキーの相性は抜群ですし、これだけで完成された味なので、そのままで十二分に贅沢なつまみになります。ただこれ、ダジャレというわけではないのですが果物の『カキ』なども添えてみてもいいですね。生ハムとメロン、のように全く違うものの組み合わせですが、塩っけと旨味、スモーキーさがより引き立ちとてもリッチな感じになります。残った油は牡蠣の旨味とスモークの風味がたっぷりで、捨ててしまってはもったいないです。キノコをソテーするなどすれば、さらに1品つまみができますよ!」。
『おいしい缶詰 プレミアムほぐしコンビーフ(粗挽き黒胡椒味)』
(明治屋/594円)
ジューシーなほぐし牛肉に粗挽きの黒胡椒を効かせ、スパイシーに仕上げたプレミアムなコンビーフ。牛肉本来の旨みを味わえるように、繊維を太く残すように丁寧にほぐした贅沢な一品。丁寧に手でギュッと詰めているので、取り出すとかなりのボリュームに。
【黒瀬’S おすすめポイント】
「『プレミアム』と銘打つだけあって、いわゆる普通のコンビーフとは味も食感も段違い。もちろん缶をあけたままで食べても美味しいのですが、そのままあるいは、チーズやトマトなどをクラッカーにのせたりするほんの一手間で、さらに美味しくいただけます。生のレタスに巻いて食べるというやり方も試していただきたいところ。レタスのパリパリ食感もあいまって、さっぱり美味しくいただけます。野菜不足の中年男性に特におすすめしたいですね」。
もちろん、味の好みは人それぞれ。今回紹介した缶詰が、ほかのお酒に絶対合わないこともないし、逆にウイスキーに合う缶詰はほかにもたくさんあります。
それを踏まえて、さらに黒瀬さんからアドバイス。
「魚介、肉を原料とした缶詰は、温めることでより美味しくなるものが多くあります。その際、電子レンジを利用するのは確かに手軽ではありますが、加熱ムラができたり、爆ぜてしまったりと上手くいかないことが多いもの。おすすめは、沸騰したお湯に缶詰のままで2〜3分漬けて加熱する湯煎というやり方。この一手間で缶詰はさらに美味しくなります」。
ーー手軽さ優先、ぱかっと開けてすぐにツマむも良し。一手間かけてからツマむも良し。
あなたのすべてのワガママをかなえる缶詰Bar「Ji-bunch」。あなたが飲みたいと思ったときから営業しています。
缶詰Bar「ji-bunch」
住所:あなたの自宅
営業時間:飲みたいとき〜何時でも
チャージ:なし
※写真の料理は黒瀬さん発案のレシピを参考に筆者が独自再現したものです。黒瀬さんの意図したものと必ずしも一致しない場合があることを承知おきください。
【取材協力】 黒瀬佐紀子/フードスタイリスト、缶づめ料理研究家。著書に『缶つま』(世界文化社)、『さば缶ダイエット』(主婦と生活社)、『缶詰食堂』(文化出版局)ほか。食に関わるイベントの企画や講師など、幅広く活躍している。 オフィシャルウェブサイト omeletyellow取材・文/宇都宮雅之