たのしい缶詰ライフ vol.2
おっさんの楽しみ、手軽な晩酌のおともである缶詰。その魅力は、開けるだけで料理が一品増やせる、そんな利便性の高さだけではない。近頃はインテリアにもなりそうなオシャレなデザインの缶詰が登場するなど、男のコレクション心をも、どこかくすぐる存在となっている。
そんな缶詰の魅力に浸るこの連載。お気に入りの一杯を携えて、お付き合いいただきたい。
「たのしい缶詰ライフ」を最初から読むブームともてはやされる時期は過ぎ、もはや定番化している缶詰人気。店に行けば多様なものが並んでおり、ネットで取り寄せることも容易いもの。しかし、選択肢が増えた分だけ「これは!」と思える缶詰を選び出すのもまた大変になったと言えよう。
そこで、缶づめブームの先駆けとも言える書籍『缶つま』(世界文化社)などで料理製作・スタイリングを手がけてきたフードスタイリスト・缶づめ料理研究家の黒瀬佐紀子さんにオススメの缶詰を5つ選んでいただいた。
「最新イケてる」選出の基準は、オシャレであること、プレミアム感があること。かつ、一般的な入手ルートで購入が可能であることも基準となっている。
さて、どのような5缶が選ばれるのだろうか!?
オススメ「最新イケてる缶詰」5選
『鹿肉パルマンティエ缶』(SOHOLM/1026円)天王洲のレストラン「SOHOLM(スーホルム)」の看板メニューである、ジビエ料理を缶詰にした6種のうちのひとつ。この『鹿肉のパルマンティエ』は、香味野菜などとともに炒めた刻み肉に、マッシュポテトをのせて焼いたフランスの家庭料理「パルマンティエ」を、北海道のエゾ鹿肉を使い缶詰にアレンジしたもの。
【黒瀬’S イケてるポイント】
「レストランの味。ホロホロにほぐれたフレーク状のお肉が缶詰とは思えないボリューム感で詰まっています。もともとは家庭料理ですが、これはもう、レストランの味ですね。雑貨店でおしゃれな小物として並んでいてもおかしくない、かっこよいパッケージも印象的です」。
『缶つまスパイシー 四川風よだれ鶏』(国分グループ本社/432円)ブームの先駆けともなったのがこの同名シリーズ。「よだれが出るほど美味い」ことから名付けられた、蒸し鶏に香辛料や薬味をかけた四川省の中華料理「よだれ鶏」を、缶詰用にアレンジした商品だ。唐辛子とラー油の辛さが際立つソースに黒酢を加えた、奥深い味わいが特徴。
【黒瀬’S イケてるポイント】
「約100種ある「缶つま」の最新シリーズである、スパイシーシリーズ。現在4つの味が出ているうちのひとつがこの『四川風よだれ鶏』です。同社の辛さレベルでは3段階中のレベル2。それでも、かなり辛くてお酒が進むこと必至です」。
『漢方三元豚大和煮』(木の屋石巻水産/1200円)
東北の豊かな自然の中で、ハーブ配合飼料により育てられた漢方三元豚。その柔らかくクセの無い肉を、同社の看板商品「鯨の大和煮」で培った手法によって風味豊かな大和煮に仕上げた一品。
【黒瀬’S イケてるポイント】
「このメーカーさんの大和煮は、どれもすごく美味しいんです。そこで、牛や鯨のものに比べて、ほかではあまり見かけない豚の大和煮を選んでみました。贅沢なお味。なのに、ちょっと茶目っ気のあるパッケージがポイントです」。
『サヴァ缶』(岩手県産/389円〜)
東日本大震災の被災地の食の復興を目的に開発されたという経緯を持つサバの缶詰。『サヴァ缶』のネーミングには、原料のサバとフランス語の「元気ですか?」の挨拶である「Ça va?(サヴァ)」がかかっており、ここにも被災地からのメッセージが込められている。
【黒瀬’S イケてるポイント】
「さばの缶詰とは思えないオシャレでかわいらしいパッケージ。パプリカチリ味が最新でパッケージも3色揃っており、並べるとさらにかわいらしくなります。誕生にいたるストーリーも押さえてから食べて欲しいですね」。
『かきくん製油づけ』(竹中罐詰/参考小売価格820円)日本近海で獲れる魚介を中心に展開する同社「天橋立シリーズ」のひとつ。機械に頼らず昔ながらの手仕事にこだわる。素材本来の風味を生かした味付けで、人気。『かきくん製油づけ』は、旬の時季に獲れた大きく粒の揃った牡蠣を新鮮なうちに加工し、あっさりとした風味の綿実油に漬けたもの。
【黒瀬’S イケてるポイント】
「実はコレ、最新でなくてずっと前からある缶詰なのですが、最新缶詰と並べても『見劣りしないぐらいイケてる』缶詰ということで、紹介させていただきました。手詰めで丁寧に作られていて、味はもちろん最高級。プレミア感はバッチリです。牡蠣を取り出したあとの油も、料理に使えて美味しいんですよ!」。
——「食べたい時までとっておけて、食べたい時にベストの状態で食べられるのが缶詰の魅力」。そう、黒瀬さんは言います。
イケてる缶詰はひとり呑みのおともばかりでなく、友人と、恋人と、家族と一緒に。「ちょっと特別な缶詰があるんだけど」なんて、プチイベント感を演出しながらやおらとりだせば、きっと楽しい時間が過ごせるだろう!
【取材協力】 黒瀬佐紀子/フードスタイリスト、缶づめ料理研究家。著書に『缶つま』(世界文化社)、『さば缶ダイエット』(主婦と生活社)、『缶詰食堂』(文化出版局)ほか。食に関わるイベントの企画や講師など、幅広く活躍している。 オフィシャルウェブサイト omeletyellow取材・文/宇都宮雅之