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今宵、缶つまで一杯やりながら傾けたい「缶詰うんちく物語」

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たのしい缶詰ライフvol.1
おっさんの楽しみ、手軽な晩酌のお供である缶詰。その魅力は、開けるだけで料理が一品増やせる、そんな利便性の高さだけではない。近頃はインテリアにもなりそうなオシャレなデザインの缶詰が登場するなど、男のコレクション心をも、どこかくすぐる存在となっている。
そんな缶詰の魅力に浸るこの連載。お気に入りの一杯を携えて、お付き合いいただきたい。

スーパー、コンビニでも一定の棚を独占しつづけ、いまでは当たり前の存在となっている缶詰。2010年に登場した「缶つま」シリーズのブームもあり、保存食としてだけでなく「グルメ」としても地位を獲得している。

この缶詰、気軽に付き合える存在ではあるが、実は掘れば掘るほどその懐は深い。まずはその魅力に迫る始めの一歩として缶詰そもそも話……缶詰はなぜ腐らないのか? 来歴や製造方法は? そんな素朴な疑問を解き明かすところからはじめよう。
今回は、日本缶詰びん詰レトルト食品協会の協力のもと、知ってるようで知らない缶詰のあれこれをまとめてみた。

……とまあ、堅苦しいのもなんなので、缶詰をつまみに一杯やりながら、酒のアテとして気軽に読んでいただければこれ幸い。


ナポレオンが関係していた!? 缶詰はじめて物語

新鮮な食物が不足しており、保存食も乾燥、塩蔵、燻製などに限られていたフランス革命真っ最中のヨーロッパ戦線。革命軍を率いるナポレオンは1804年に兵士の士気を鼓舞し、戦闘力を維持するために、持ち運びしやすくかつ味も優れている保存食についてのアイデアを公募する。

そこで登場するのが、フランス人のニコラ・アペール。調理済みの食品をビンに詰め、コルク栓で密封した後に加熱を行った「ビン詰め」を発明し、賞金の1万2000フランを獲得した。

ニコラ・アペール (画像提供:日本缶詰びん詰レトルト食品協会)

このビン詰は画期的な発明ではあったものの、割れやすいという欠点も持っていた。そこで、イギリスでは1810年にピーター・デュランという人物が容器をブリキにする方法を考案、イギリス政府の特許を取得する。

こうしてヨーロッパ各地に広まった缶詰の製造法は1821年にアメリカに渡って以降、製造がより本格化し産業として成長発展を遂げた。特にアメリカでの缶詰生産を飛躍的に伸ばしたのが1861年に始まる南北戦争である。

ちなみに、缶詰同様の保存性を持ちながら、かさばらず軽く、開封も廃棄も簡易な「レトルト食品」という形態を生み出したのも、アメリカ陸軍の軍用糧食の研究によるもの。保存食の歴史は「ミリメシ」とともにあり、というわけなのだ。

ところで、缶詰自体は約200年前には誕生していたものの「缶切り」の発明は、そこから50年後の1858年を待つことなる。では、その間はどうやって開けていたのか? なんと、発明当時の缶詰には「斧とハンマーで開けてください」と記されていたという。袖なしGジャン姿で思わず自慢してみたくなるワイルドさである。


10月10日が記念日。かんづめは「管詰」。〜日本の缶詰〜

日本の缶詰製造は、1871年(明治10年)。長崎で松田雅典という人物がフランス人の指導でイワシの油漬缶詰を作ったのがその走り。

1877年には北海道の石狩に作られた日本初の缶詰工場「北海道開拓使石狩缶詰所」が誕生、同年10月10日に「サケ缶詰」が製造され本格的な商業生産が始まり、国内博覧会への出品や翌年には輸出も試みられた。なお、当時は缶詰を「管詰」と表記していた。

創立当時の石狩缶詰所(画像提供:日本缶詰びん詰めレトルト食品協会)

そして1987年には日本缶詰協会(現・日本缶詰びん詰めレトルト食品協会)により、10月10日は「缶詰の日」に制定されている。


なぜ長期にわたって保存できるのか。腐らない理由

知らない人も多いだろうが、じつは缶詰は保存料を使っていない。なぜ長期保存が可能なのか?

それは、内容物を詰めた後、(現在では)缶の胴と蓋を巻き込む二重巻締めという方法で完全に密封。次に加熱によって、容器内に存在する(可能性のある)菌を殺すことで、腐敗・発酵をもたらす存在が消滅することによる。この密封、加熱殺菌という行程のおかげで、常温での流通保存が可能となっているのだ。


画像提供:日本缶詰びん詰めレトルト食品協会

以降、外気にも触れないので酸化もせず、数年にもわたって品質が保たれるというわけ。

前述した缶詰の歴史で答えが出ていたようなものだが、実はビン詰、缶詰が登場した当時は食品の腐敗・発酵は空気によるものと考えられていた。密封・加熱により保存性が高まるのは単に「空気を追い出した」結果と思われていたようだ。

ちなみに、世界で一番臭い食べ物として知られる「シュールストレミング」はニシンの塩漬けを缶に入れて密封したものだが、加熱殺菌の工程を経ていないため缶の中で微生物による発酵が続き、独特の風味と匂いが醸成される。これはすなわち、殺菌が完全に行われていないということ。そのため、正確にいうと日本では「缶詰」と呼ぶことはできない。


缶詰って栄養あるの?

なんならあたため(もしくは加温)もせずに、開ければいきなり美味しいという手軽さが魅力の缶詰。かなり加工された状態にあるため、栄養面はあまり期待できないと思っている人も多いかもしれない。

実は栄養の損失も少ないのが缶詰加工品の魅力。ビタミンB1、B2の残存量については若干不利な面はあるものの、熱に弱いビタミンCも空気に触れない状態での加熱なのでそこまで失われることはない(野菜缶詰での残存量は50〜80%とみられる)。ほか、ビタミンA、D、E、タンパク質、脂肪、糖質などは加工前とほとんど変わらない範囲。一方で、サケ、イワシなどの魚の缶詰では加圧加熱されることで骨まで軟らかくなっており、カルシウムの吸収がしやすくなっているのもポイント。手軽なだけ、美味しいだけ、というただの嗜好品ではないのだ。


—保存食としてだけでなく、普段使いの料理として、素材としても優れている缶詰。その誕生に意外性を感じた人も多いのではないだろうか?

ということで、
……最後に、缶詰誕生への貢献を感謝しナポレオンに乾杯!(ブランデーでなく、下町のほうのを片手に)

>>次回は、フードスタイリスト・缶づめ料理研究家の黒瀬左紀子さんに最新のイケてる缶詰を紹介していただきます!

【取材協力】
公益社団法人 日本缶詰びん詰レトルト食品協会
日本において缶詰、ビン詰、レトルト食品工業を営む企業である約270社、350工場が加盟する協会。昭和2年に設立された「社団法人日本缶詰協会」がその前身で、平成26年に名称変更し今日に至る。
www.jca-can.or.jp/index.html

取材・文/宇都宮雅之

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