37.5歳からの愉悦 Vol.185
2021.03.04
FOOD&DRINK

吉祥寺のスナックで、看板娘に勧められるがまま“昼ピク”をキメた

「看板娘という名の愉悦」とは……

スナックといえば、通常は夜の遅い時間帯から営業を始める。しかし、このご時世。明るいうちから開ける店も少なくない。

今回訪れた吉祥寺の「ピクルス」もそのひとつだ。昨年11月にオープンしたが、現在は緊急事態宣言のため、営業時間を14時〜20時としている。

吉祥寺の「ピクルス」
ヨドバシカメラ裏の気になる一角。

ドアを開けると、看板娘が「ボーナス」という札を手に出迎えてくれた。というか、それ何ですか?

「いらっしゃいませ」の代わり?

「最近始めたゲームで、他の人の会話やカラオケなどで『いいな』と思ったら上げてもらうんです。得点は上げた人のもので、通算して月間と年間の“王者”を決めます」。

ブラボー札は1、3、5、ボーナスの4種類。

出すのは無料。よくわからないが、「ブラボー」と言われれば気分は良い。さて、何をいただきましょうか。ちなみに、店でいちばん高価なお酒を聞いてみた。

「シャンパンの『アルマンド ゴールド』で1本20万円です。さすがに、まだご注文はありません(笑)」。

上段中央が「アルマンド」。左の「ドンペリ」はたまに出るそうだ。

セット料金は2時間2500円という、スナックにしては激安設定。しかも、1杯750円の単品オーダーも選択できる。

「昼ピク」?

何はともあれ、看板娘が「こればっかり飲んでます」という麦焼酎、「いき」のソーダ割りを注文した。

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看板娘、登場

「お待たせしました〜」。

こちらは、練馬区出身の優美さん(34歳)。「昼ピク」についても教えてくれた。

「うちのお店は、吉祥寺のハモニカ横丁にある漬物屋さんの系列店。そこから仕入れたお漬物、すなわちピクルスを肴に昼から飲めるのが『昼ピク』です」。

「昼ピク」の正体見つけたり。

その漬物屋とは昭和20年から続く老舗の「清水屋」。創業時からのぬか床で旬の野菜を漬けている。ここのご主人の息子さんが「ピクルス」のオーナーなのだ。

お父さんは現役のサーファー。

そんな名店が作る漬物で「昼ピク」を楽しめるとは素晴らしい。では、「盛り合わせ」と「うずら」をください。

まだ16時なのにブラボーすぎる風景。

さて、優美さんは3歳からクラシックバレエを習っていたという。

「他にも、水泳、空手、書道とか習い事はいろいろやっていましたが、小4からはバレエ1本に。それぐらいのめり込んでいたんですね。その後は、日本ジュニアバレエ団のオーディションに受かったりして、結局16歳まで続けました」。

しかし、バレエを辞めたあとは本人いわく「非行に走った」という。

「高校に入ったものの、すぐに辞めてここの近くにあった『歌広場』でアルバイトを始めます。その後は、新宿や六本木の夜の世界に入って、テキーラをひとりで1本とか、ワインを2、3本とか空けていました(笑)」。

完全にお酒の魅力にハマった優美さん。やはり、ハモニカ横丁にある居酒屋の清水屋1号店で飲んでいたときに、現在「ピクルス」のママを任されているメメさんと出会う。

右が店のムードメーカー、メメさん。

「優美ちゃん? 明るいし、いつも笑顔。頑張ってるわよ」。

というのも、優美さんはバツイチ。女手ひとつで3人の子供を育てている。しかし、悲壮感はまったくない。自身の子供の頃の写真も見せてくれた。

家族旅行で撮った1枚(場所は忘れたそうです)。

ちなみに、両手で抱えているテディベアには思い出が詰まっている。

「4歳の時に入院してヘルニアの手術をしたんですが、手術が終わって目が覚めたら枕元に置いてありました。病院の先生からのプレゼントだと聞きましたが、おそらく両親が用意したんだと思います(笑)」。

このテディベアは大事に持っており、今は3人の子供たちもかわいがっているそうだ。

11年前に亡くなった父親は80年代から90年代にかけて活躍したアメリカの画家、トーマス・マックナイトのシルクスクリーンがお気に入りだった。

こちらも父の形見として優美さんが引き継いだ。
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メメさんと出会った清水屋1号店のスタッフ、常連さんとは今も昔も非常に仲がよい。

2年前の浴衣デーの写真で、3人の子供たちも写っている。

同じく2年前には、清水屋グループでBBQバスツアーを企画した。

行き先は秋川渓谷。

吉祥寺グルメといえば、優美さんが通い詰めるのは「ビストロ エピス」。南口にあるカジュアルフレンチの店だ。

好きなメニューは「前菜の盛り合わせ」(写真右)。

また、麦焼酎以外に日本酒も好んで飲む。

イチ推しは数々の賞を受賞している高知県土佐酒造の「桂月」。

壁には吉祥寺生まれ、吉祥寺育ちのオーナーの同級生が開店祝いにくれた熊手が飾ってある。

愛が込められている。

オリジナルのコースターも作った。

「4328」で清水屋と読ませる。

さて、一時は「非行に走った」ものの持ち前の明るさから多くの人々に愛され、「昼ピク」シーンを牽引する看板娘。お会計を頼むと2130円という驚きの安さだった。

そして、お見送りは総員体制。写真の右から2人めが若きオーナー、右端はたまたま近くにいた知らない紳士。

これは完全に50ブラボーです。

最後に読者へのメッセージをお願いしますね。

クラシックバレエを踊っているかのような文字。

【取材協力】
スナック ピクルス
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-25-3 本町ビル1F
電話番号:0422-29-3020
www.instagram.com/snack_pikurusu/

「看板娘という名の愉悦」Vol.142
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
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石原たきび=取材・文

# スナック ピクルス# 吉祥寺# 看板娘
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