37.5歳からの愉悦 Vol.179
2021.01.21
FOOD&DRINK

吉祥寺の和食居酒屋で、看板娘が麻雀に“どハマり”していた

「看板娘という名の愉悦」とは……

寒い日が続く。吉祥寺駅北口広場の“ゾウのはな子”も首にマフラーを巻いていた。

井の頭自然文化園で飼育されていた国内最長寿の象です。

69年の生涯に思いを馳せつつ、末広通りを歩く。数分で目指す和食居酒屋「福郎」に到着した。

和食居酒屋「福郎」
店のロゴはニューヨーク在住のアーティストが手掛けたという。

現在はランチ11時半〜15時、ディナー16時半〜20時の時短営業中。

看板娘の姿も見える。

皆さん、静かに飲んでいらっしゃる。何のお酒をいただこうか。棚には佐賀の光武酒造場と『北斗の拳』がコラボした芋焼酎のボトルがあった。

トキとラオウの競演。

しかし、和食といえば日本酒だろう。東京ではなかなかお目にかかれないレアな銘柄も置いているという。

目に留まったのは壁の「おすすめドリンク」に書かれた「日本酒ハイボール」(580円)。

数年前からブームになっているようだ。

さっそく注文しましょう。

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看板娘、登場

「お待たせしました〜」。

今回の看板娘は東京・荻窪生まれの絵美さん(32歳)。名前の漢字を聞くと「“絵にも描けない美しさ”の絵美です!」という力強い回答が返ってきた。

そして、フードメニューはと……。おお、握り寿司が1貫から頼めるのか。

がっつり食べるほどはお腹が空いていないときにありがたい。

ウニ(400円)、イクラ(200円)、真鯛(200円)、そして豆腐の味噌漬け(580円)をオーダーした。

上品な晩酌セットが完成。

ハイボールの日本酒は日によって変わるが、この日は曙酒造(福島)の「天明 MITSUGO『銀』 生もと純米」だった。ラベルのデザインはグラフィックデザイナーの対馬 肇氏によるもの。

さて、絵美さんには小学生の娘さんが2人いる。初婚は18歳のとき。その後、いろいろあってシングルマザーになった。

微笑ましい家族スナップ。

「まあ実際にいろいろありましたが、いまは毎日楽しいです。このお店は平和だし、お客さんもみんな大好き。愛されています。イヤな人がひとりもいないって珍しくないですか?」。

絵美さんの本業はネイリストだ。最初は下北沢のサロンで働いたが、「速さ」重視の運営方針のためスキルアップが望めない。その後、何店舗かで働いて、現在は荻窪のサロンに勤務している。

丑年仕様のネイルは3時間かかったという。

「お客さんに同じネイルをしたら2時間かかりません。自分で塗るのはめちゃくちゃ難しいんです。向きも逆だし、筆の使い方がわからなくなるし」。

ネイルサロンのスタッフからも愛されている。誕生日にはサプライズでケーキをもらった。

このあとロウソクに火を点けて吹き消しました。

絵美さんはアルバイトをもう一つしている。吉祥寺のスナックだ。

常連さんとシャンパンで乾杯(左は22歳の妹)。

「スナックが大好きで、自分が飲みに行くのもスナックばかり。だから、吉祥寺のグルメとか全然詳しくないです(笑)」。

「スナックは私が安心してぼーっとできる場所」だという絵美さん。コロナ禍が収束したら自分のスナックを出したいそうだ。

さらに、1年ほど前から“どハマり”しているのは意外にも「麻雀」。

スマホには麻雀アプリが3つ入っている。

「ひょんなことから麻雀漫画で有名な片山まさゆき先生と仲良くなって、月に2回、仲間内の麻雀教室を開いてくれています。しかも、無料。ものすごく面倒見がいい方なんですよ。今はコロナの影響でなかなか集まれませんけど」。

左端が漫画界最強雀士と呼ばれる片山先生。
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ちなみに、ここ「福郎」を切り盛りするのは吉祥寺出身のオーナー料理人、牧野大輔さんとその妻の理映さん。店名には「みんなが幸せに楽しくいられる場所にしたい」という思いを込めた。

確かに「平和」に満ち満ちたお店だ。

そんなご夫婦に絵美さんの印象を聞いた。大輔さんは「明るい、おもろい、嘘をつかない。信用できるいい奴です」。理映さんは「こう見えて、じつは細かく気遣いができる子。酔っ払った人にそっとお水を出したり(笑)」。

理映さんが活けた花が幸せな雰囲気を演出。

ディンプレックス社製の電気暖炉も店内を暖める。

揺らめく炎に癒されます。

カウンターで気持ちよさそうに酔っているご婦人も言う。

「この子がいるだけで、お店の中が明るくなるのよ。あとね、やさしい。私が日本酒をこぼしたときもこっそり注ぎ足してくれたり」。

「それ内緒だから言わないでください(笑)」と慌てる絵美さん。

やがて、ご婦人から「一杯飲む?」と嬉しい申し出。

これが日常の光景なのだろう。

というわけで、愛と平和に満ちたひとときでした。次回は名物の海鮮チラシ「福郎丼」をいただきたい。では、最後に読者へのメッセージをお願いします。

好きな麻雀牌は「東(トン)」と「5筒(ウーピン)」だそうです。

 

【取材協力】
福郎
住所:東京都武蔵野市吉祥寺南町2-9-10
電話番号:0422-49-8978
https://fukurou-kichijouji.owst.jp

「看板娘という名の愉悦」Vol.136
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
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石原たきび=取材・文

# 吉祥寺# 看板娘# 福郎
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