37.5歳からの愉悦 Vol.162
2020.09.24
FOOD&DRINK

ヨドバシAkibaのチーズカフェで、看板娘がキレのある仕事をしていた

「看板娘という名の愉悦」とは……

2005年、秋葉原駅前に「ヨドバシAkiba」がオープンした。ヨドバシカメラのなかではヨドバシ梅田に次ぐ規模で、秋葉原のランドマークとして存在感を放つ。

建物は地上9階、地下6階(地下2階から下は駐車場)。

メインは1階から6階に展開する「マルチメディアAkiba」だが、8階のレストランフロアも侮れない。

和洋中からエスニックまで、30の飲食店が軒を連ねる。

今回訪れたのは、こだわりのチーズと肉料理が売りの「Grand Breton Cafe(グランブルトンカフェ)」。

こだわりのチーズと肉料理が売りの「Grand Breton Cafe」(グランブルトンカフェ)。
開放的な店内の様子。

内装はフランス、ブルターニュ地方の港をイメージしているそうだ。

なかには看板娘の姿が見えた。

チーズに合うお酒といえばワインだろう。「白のグラスを」と伝えると「ボーリュー・ヴィンヤード」(780円)を勧められた。

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看板娘、登場

「お待たせしました〜」。

「ホワイトハウス御用達のワインで、トーストしたオーク樽から移る香りが特徴です」。

完璧な解説をしてくれたのは店長の玲那さん(26歳)。大学卒業後、この店を含む飲食チェーンを運営する企業に就職した。

「最初に配属されたのは銀座にあるワインのお店。お酒に関する知識は全くなかったんですが、上司がテイスティングの相手をしてくれたり、試飲会に連れて行ってくれたりと、親切に教えてもらいました」。

さて、今日は名物だというチーズフォンデュを楽しみにしてきた。

メニューもチーズ、チーズ、チーズ。

イタリア産の超硬質チーズ、グラナ・パダーノのうえで仕上げるリゾットやパスタも魅力的。しかし、今日の舌はフォンデュだ。「天使のふわふわホワイトチーズフォンデュ(バゲット付き)」(980円)と「野菜の盛り合わせ」(680円)を注文した。

火を点けたらワインを飲みながらしばし待つ。

チェダー、クリーム、エメンタルなどの各チーズをブレンドし、エスプーマでムース状にしている。やがて、そのときが来た。まずは、ブロッコリーから。

ふわっふわでとろっとろ、味も濃厚です。

さて、玲那さんが生まれたのは静岡県沼津市。6歳の頃、お隣の長泉町に両親が購入したマンションに引っ越す。

「自然が多いし、花で有名なクレマチスの丘もあります。子供も住みやすい街ですね」。

玲那さんは三姉妹の長女だ。

左から4歳、1歳、7歳の頃の記念写真。
その姉妹がこんなに大きくなりました。玲那さん(中央)大学4年生の時。

中学と高校では吹奏楽部に所属。玲那さんはクラリネット担当だった。

「高校のときは部長でした。前に出るタイプじゃないんですが、顧問の先生と卒業する部長から指名されて。理由? わかりません。真面目で反抗的じゃないから?(笑)」。

高校の文化祭にて。最前列左が玲那さん。
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2年生からはバイパス沿いのマクドナルドでアルバイトを始める。ここではアルバイトのなかの最高位、スウィングマネージャーまで上り詰めた。

「ドライブスルーが結構混むお店で、忙しいときは2台の車のオーダーを同時に取っていました。ひとりで回しているときは楽しかったですね」。『スマイル0円』ですか? 週に1回ぐらい言われました。私はマイクの前から動けないので、窓口の子に『スマイル入りました!』って伝えます(笑)」。

大学では軽音部に所属し、パートはエレキベース。大学2年の春休みに御茶ノ水の楽器屋で購入した。

後輩に好きなバンドを聞いて、チャットモンチーのコピーなどをやっていた。

「他にコピーしていたのはFLiPとyonige。このふたつは特に思い出深いです。私がボーカルでコピーしたバンドもありますが、やっぱりベースが好きだったので……」。

先に聞いたように「前に出るタイプ」ではないのだ。

夜魅(やみ)ちゃんと名付けて可愛がっている。

大学の卒業論文のテーマに選んだのは、意外にもエルヴィス・プレスリー。当時、関心を持っていた音楽と文化の掛け合わせ事例として、指導教授がエルヴィスをお勧めしてくれた。

「彼はアメリカ南部出身ですが、黒人差別の意識を持ちませんでした。むしろ、『黒人音楽はこんなにイケてるぞ。肌の色で差別するのはおかしい』と訴えたんです」。

アメリカの歴史とともに彼の功績を研究した。

スマホの待ち受け画面チェックも欠かさない。玲那さんは「今、ハマっているモバイルゲーム」のキャラクターだった。女性上司がアニメやライトノベル好きということもあり、こうしたアキバっぽい話もするという。

学園アドベンチャーの『ツイステッドワンダーランド』。

20歳のアルバイトスタッフに玲那さんの印象を聞いた。

「仕事にキレがありますね。ドリンクを作るのもいちばん早いし、お客さんやスタッフへの気配りもさすがという感じです」。

将来の夢は公務員という堅実派。

なお、前出の女性上司は玲那さんの主任昇進をほかのスタッフとともに祝ってくれた。

「『Harold&Co』というテーブルアートのお店で、目の前で描いて下さいます。写真の真ん中の女性が現在の直属の上司です」。

嬉しいサプライズ。

ここで、壁の写真が目に入った。

どこまでがメニュー名なのだろうか。

「全部メニュー名です。先の女性上司が考案したもので、第1章と第2章という中身が違う2種類の抹茶クレープがあります」。

なんとキレのあるネーミングセンスだろうか。秋葉原だけに自身が好きなアニメやライトノベルの世界観を意識したそうだ。

皿に置くと崩れるので手渡しで「どうぞ〜」。

玲那画伯が描いたお茶目なイラストもご紹介しておこう。「ラストオーダーの時刻をスタッフに知らせるためのメモ」とのこと。

「ねずみかな? ハムスターかな?」。

ごちそうさまでした。最後に、読者へのメッセージをお願いしますね。

チーズとワイングラスの省力デッサンも見事。

 

【取材協力】
Grand Breton Cafe
住所:東京都千代田区神田花岡町1-1 ヨドバシAkibaビル8F
電話番号:03-6854-5693
www.dd-holdings.jp/shops/grandbretoncafe/akihabara#/

「看板娘という名の愉悦」Vol.119
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
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石原たきび=取材・文

# Grand Breton Cafe# 看板娘# 秋葉原
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