そこが知りたい! 女性が好きな男服 Vol.20
2020.09.04
FOOD&DRINK

“アペシャリスト” の飲み対談。ニッポン人よ、そろそろ本気でアペリティフをしよう!

海外では当たり前にあるアペリティフという習慣。

それは、大げさではなく、人生を豊かにする時間。日々の時間の使い方が変化している今こそ、日本でも取り入れるチャンスだ。

[左]平野 佳さん [右]「LIFE」オーナーシェフ 相場正一郎さん

[左]平野 佳さん
マーケティングスペシャリストとして「ライフスタイル」に関わるプロジェクトを軸にキャリアを築く。仕事柄、世界各国の食文化にも精通しており、オーシャンズ本誌人気連載「日本“食”記」も執筆。

[右]「LIFE」オーナーシェフ 相場正一郎さん(45歳)
イタリア・フィレンツェで修業したのち、東京・代々木八幡にイタリアンレストラン「LIFE」を、’12年には姉妹店「LIFE son」をオープンさせる。都市と郊外を行き来するデュアルライフ実践者。

アペリティフとは、本来食前酒のことです。けれど単に酒を飲むことではなく、ディナー前のひととき、5時から8時くらいの間に、友人や家族と会話を楽しみながら、軽い酒とつまみで過ごす気持ちの良い時間です。

レストランでの人との待ち合わせなどでは、ウェイティング・バーでカクテルやワインを一杯やっている間に、「やあ、待たせたかな」などと言いながら入ってくる友人と乾杯する……食事テーブルへ向かう前の楽しみです。

この食前の時間が独立し、アペリティフとして楽しまれています。イタリアでは、最近のアペリティーヴォ(イタリア語でアペリティフの意味)は生ハムやチーズ、サンドイッチなどおつまみ類が食べ放題という有り難いサービスが定着してきているようで、今晩はディナーはなし! などということもあるとか。

今回対談に登場いただく、相場正一郎さんは、心地良い時間が流れるイタリアン・レストラン「LIFE」のオーナーシェフとして、数々の本も出し、東京での仕事と、栃木県・那須でのプライベートライフの素晴らしいバランスを実践中。

イタリアのフィレンツェで料理人として修業、帰国後すぐにイタリアンレストランのシェフをまかされ、2003年からスタートした自身のレストラン「LIFE」も、はや17年。那須の「山の家」での週末生活は、まさに多くの人たちの憧れです。

平野 佳さんは、海外の企業やアーティストと日本をつなぐビジネスに永年関わり、世界各国の文化に触れてきました。現在はイタリア食文化を背負うデザインプロダクトブランド、アレッシィの日本でのブランドマネージャーとして、またさまざまな食道具にも関わっています。

リモートワークをきっかけに、日本でも夕方からアペリティフを楽しむことができるようになるかもしれません。そこでアペリティフ対談スタート!

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アペリティフってどんなもの?

平野 フィレンツェにお住まいだったときは、お庭など外でお食事を楽しんでいらっしゃったのでしょうね。今も「山の家」では、テラスでの時間を大切になさっているとか?

相場 いい季節にはそうしています。だから、自分の店にも裏庭やテラスがあって、お客様に楽しい時間を過ごしていただきたいです。外での食事を好むのは外国の方が多いですね。

平野 私もニューヨークにいた頃はテラスで飲んだりしていましたし、みんな春から夏の、日が長い季節を楽しみにしていました。夕方、アペリティフで軽いお酒があると、言葉がなめらかになる、会話がスムーズになる気がします。脳が緩むというか……本当に心が解放されて素敵でした。食欲も湧いてきて。

相場さんおすすめのファーストドリンク

タケダワイナリーの「サン・スフル ブラン」(発泡)
750ml 2000円/タケダワイナリー 023-672-0040

タケダワイナリーの「サン・スフル ブラン」(発泡)
山形県・上山市に位置するタケダワイナリー。山形県産完熟デラウェア種を100%使用し、酸化防止剤無添加・無濾過で造られている。「爽やかなスパークリングワインは前菜との相性が良く、気分も軽やかになります」。

相場 前菜の前のちょっとした一杯とかいいですよね。

平野 仕事に関係ない話ができる1時間は、大切な時間だなと思います。

相場 仕事のディナー前だったら、その人の人となりを知ったり、深く話すきっかけをつくる時間ですね。

平野 お酒そのものや食べ物の話とか、相手の趣味嗜好が見えてきます。

相場 ニューヨークから日本に戻られて違いを感じましたか?

平野 人と集まりにくくなりました。仕事の終わる時間も遅くなりましたし。

相場 僕はフィレンツェに5年いましたが、確かに日本よりも人と集まる機会が多かったです。

平野 文化の違いなのでしょうが、日本人は“おもてなし”精神が強いからか、“気軽”に人を誘ったり招待することが得意ではないですよね。

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アペリティフのつまみには何がいい?

相場 イタリアでは、家でならパスタとサラダの軽いディナーにして、その前にちょっと飲むというのが良かったです。ワインに炭酸水を入れて軽くしてみたりね。

平野 カクテルは作りますか。

相場 僕はたいていワインか日本酒か、そのまま飲めるほうが好きです。

平野 アメリカ人はカクテル好きな人が多いようで、人が集まると、まず適当に果物を潰してスパークリングワインで割るとか、簡単なカクテルを渡しておいて、それからちゃちゃっとおつまみ作ったりします。1時間か2時間話して、一緒にディナーに出かける、なんてことをよくやっていました。

ピーチ、ウォッカ、クラッシュアイスにスパークリングワインという自家製カクテルがお気に入り。ウォッカはなくてもおいしいですよ。

平野さんおすすめのファーストドリンク

平野さんオリジナルカクテル 「ムーンライズ」

平野さんオリジナルカクテル 「ムーンライズ」
シャンパングラスの底1〜2cmにブルーキュラソーとクラッシュアイスを入れ、炭酸水を注ぐ。ラベンダーシロップとプロセッコ入れたら出来上がり!「見た目も味も華やかで、1杯目にぴったりなカクテルです」。

相場 僕も果物カクテルは作ります。ホワイトサングリア、つまりピーチなどのフルーツを潰して、シロップ、そして白ワインを入れたり。

平野 夏ならまだ外が明るくて幸せな感じです。子供にはワインの代わりに炭酸水を入れてモックテル(ノンアルコールカクテル)にしてあげれば、家族みんなで楽しめますし。

相場 そうですね。季節感があってみんなで楽しめます。

平野 旬野菜のアペタイザーに、フルーツを使った爽やかなワインカクテルの組み合わせが、アペリティフ時間には好きです。

相場 「山の家」では季節野菜を使ったイタリアンを楽しく作っています。まずはバジルを大量に買ってペーストを作ったり、野菜は茹でるだけでおいしくて。

平野 近所の食材を使えるのはいいですね。イタリアというとアグリツーリズムや、スローフード運動など、食を中心とした環境に配慮する生活が言われますよね。

相場 地産地消精神は、イタリアは随分進んでいます。

平野 今日作っていただいたアペタイザーは、ピーマンとドライトマト、ケッパーをアンチョビペースト 、そしてオリーブオイルでさっと炒めたものですか? 軽いのに、野菜のうまみがしっかりしていて、まさにアペリティフ時間にぴったりの一皿です!

本日のアペタイザー
「ピーマンとトマトのオイル和え」

本日のアペタイザー 「ピーマンとトマトのオイル和え」

材料(2人分)
ピーマン 6個/セミドライトマト 3個/ケッパー 小さじ1/2/アンチョビペースト 小さじ1/2/イタリアンパセリ 小さじ1/2/乾燥オレガノ 小さじ1/2/オリーブオイル、塩 適量

作り方
① 鍋にオリーブオイルを引き、ピーマンをそのまま入れて塩をひとつまみふる。
② 中火でじっくり焼いていく。全体に焦げ目がつくように、こまめに回しながら焼いていく。
③ 焦げ目がついたら蓋をして10分弱火で蒸し焼きにする。焦げないように蓋を開けてピーマンを返しながらじっくり焼く。
④ ボウルにセミドライトマト、ケッパー、アンチョビペースト、刻んだイタリアンパセリ、オレガノを入れる。
⑤ ④にオリーブオイル大さじ5をふりかけ、よく混ぜる。
⑥ ⑤に焼き上がったピーマンを入れ、全体をよく和える。

相場 イタリアの保存食、ドライトマトやケッパーは、塩味というよりうまみが凝縮していて、単に塩辛いわけではないのです。オリーブオイルの味わいもしっかりしているので、野菜だけの一皿でも満足感のある味になります。

平野 ディナーにはもちろん肉や魚がメインですが、アペリティフ時間には季節の野菜、旬を楽しめるもので、軽いお酒を合わせると最高ですね!

身近なものを楽しむ、例えば植えているハーブをちょっと摘んでアペタイザーを作ったり、カクテルに入れてみたりできたら本当にいいなと思っています。アペリティフのためのキッチンガーデンです。飲み物にミントやローズマリーを入れたりとか。

相場 そうですね、季節感を出して飲むのは贅沢です。「山の家」には毎日いないので家庭菜園はできませんが、地元の旬野菜を楽しんでいます。

平野 アペリティフそのものはイタリア発祥です。イタリアは、ベリーニ(ピーチピューレとプロセッコ)などフルーツを使ったカクテルも多くて、さまざまな味わいがあります。

相場 ハーブ類も豊富で、それでリキュールを作って、おいしい果物と割って飲むのも定番。カンパリオレンジとかね。

平野 まさに地中海の恵みですね!

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アペリティフの主役は会話

平野 アペリティフは、夕方時間に「話しませんか」ということがメインで、お酒や食べ物は潤滑剤という感覚でしょうか。これからは日本でも、もっと気軽にアペリティフがしたいし、リモートワークのおかげで、できるのではないでしょうか。

相場 夕方の明るいうちから、優しい風が吹いているなかで飲めるのは気持ちいいです。

平野 贅沢ですね。英語だとハッピーアワーですが、ニュアンスが違う感じです。アペリティフの、ご飯の前にちょっと話したい、という時間が大切な気がします。

相場 本当にそうですね。

平野 ニューヨークでは家で2時間ほど飲みながら話して、ご飯は外へ食べに行けばいい、とか、また、ディナーはしないけれど、夕方5時から7時くらいに話をしない? というのは普通でした。夕食には誘いにくい状況でも、夕方ちょっとおつまみ作るから、とか、ワイン買ったのでご一緒しませんか? とかはまだ言いやすいかもしれません。

相場 それはイタリアだと、旬のものや収穫祭のとき、新しいワインができる季節に人を呼ぶっていう感じでしょうか。旬野菜や、スイカが手に入ったよ、というのに近かったかもしれませんね。私も、友人から、まだラベリングもされていないようなワインを振る舞われた経験があります。

平野 ちょっとシェア的な感覚でしょうか。おすそ分けのお誘いですね。「食事時間は邪魔しないので」と言って、おつまみ一品とワインでアペリティフにお誘いするのは、これからいいのでは。

相場 イタリアでは金曜の夜や週末よくやっていました。ワインとつまみを持ち寄って。

平野 今ならリモート飲みならぬ、リモートアペリティフもありですね。

まずはビール派にはコレ!

まずはビール派にはコレ!ヒューガルデンの「ヒューガルデン ホワイト」
330ml 299円[税込]/ヒューガルデン(アンハイザー・ブッシュ・インベブ ジャパン 0570-093-920)

ヒューガルデンの「ヒューガルデン ホワイト」
ベルギーのヒューガルデン村を発祥とし、世界中で愛されているビールのひとつ。「ヒューガルデン ホワイト」はオレンジピールとコリアンダーシードの独特の清涼感が、アペリティフに打ってつけ。

これまでの生活だと、夕方の時間を家族と、あるいは友人と過ごすのはとても難しいことでした。けれどリモートワークが進んでいくなかで、今までとは違う時間の使い方、人との関わり方が広まっていくでしょう。

アペリティフのもとになったラテン語は「オープン」という意味、つまり食欲を目覚めさせることがアペリティフの役割でもあります。人と会話を楽しみながら、身体にディナー時間の準備をさせるひととき、実は心身をともに「オープン」にするかけがえのない時刻なのです。

アルコールが飲めても飲めなくても、「オープン」な時間を過ごしたいものです。

【飲み対談の場所となった相場さんの店】 「LIFE」

【飲み対談の場所となった相場さんの店】
「LIFE」
住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-9-19 1F
電話番号:03-3467-3479
営業:11:45〜14:30、17:30〜21:30 (20:30LO) 無休
www.s-life.jp

 

恩田拓治=写真(取材) 鈴木泰之=写真(静物) 増山直樹、甘利美緒=文

# アペリティフ# ライフ# 平野 佳# 相場正一郎
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