「絶対に家飲みすべき安旨ワイン」とは?本場フランスで修行し、帰国後の2006年にレストラン「カンテサンス」をオープン。翌年、33歳という日本最年少の若さでミシュランガイドの三ツ星を獲得、以降、今日まで13年間連続で三ツ星を維持する天才シェフ……まるでマンガの主人公だが、実在する。名は岸田周三という。
グルメ好きなら彼を知らぬ人はいないだろう。昨年は木村拓哉主演ドラマ『グランメゾン東京』の料理監修を務め、ますます注目を集めた。そんな孤高の天才フレンチシェフが認めるデイリーワインとは?
話を聞いたのは……
①継ぎ足しで織りなす熟成感はまさに“鰻のタレ”
「僕自身はやはりフランスワインが好きなのですが、最近は価格が沸騰していて3000円以内というのはなかなかハードルが高いと思います。なので、少し視点を変えて、みなさんにオススメできるものをご提案させていただきます!」。
そう話す岸田さんが最初に挙げたのは、スペインのヘレス地区で生産されるシェリー酒。
フォーティファイド・ワイン(酒精強化ワイン)の代表であるシェリー酒は、発酵の途中でブランデーなどの添加アルコールを加え、アルコール濃度を高めて発酵を止めることで幅広い個性的な味わいに仕上げられる。
一般的には口当たりがトロっとした甘口のものが多いイメージだが、発酵のどの段階で添加アルコールを加えるかによって甘口~辛口の味わいが決まるので、辛口ですっきりとしたものも多数あると岸田さんは言う。
「シェリーは古いものに新しいものを注ぎ足していく製法なので、まさに秘伝の“鰻のタレ”のようなイメージです。安価なものでも熟成感があり、飲みごたえがありますよ。エミリオ ルスタウはシェリー酒の中でもメジャーなメーカーなので、安定した品質と供給が得られます。特にこの一本はコストパフォーマンスが素晴らしい」。
岸田さんによると、シェリー酒はフレンチの調理酒としても活躍し、実際にカンテサンスの料理に使用することもあるそう。
「シェリー酒は飲むだけではなく、野菜に少し振りかけて風味づけをしたり、煮込み料理の最後の仕上げに入れてみたり、実に幅広い使い方ができる。そういう意味でも、ぜひ一度手に取ってみてほしいお酒ですね」。
ワインに対して調理用としても向き合う視点はまさにシェフならではだ。
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