②ドラマでも登場したワイナリーのモデル
「ワイン好きの方には、ぜひ今以上に日本産ワインの素晴らしさを知ってほしい」。
岸田さんがそう思うきっかけとなったのが、北海道余市町にある平川ワイナリーとの出会いだった。ここのワインからインスピレーションを受けてメニューも開発し、その一品は『グランメゾン東京』でも採用されたという。
岸田さんがまずピックアップしたのは、デラウェアを使った白ワイン。
「日本ワインの中でもスタンダードな存在であるデラウェア種ですが、この『平川ヴァン・ド・プレジール セレクション』は、程よい甘さと爽やかなバランスを重視して仕上げた果実味豊かな口当たりに仕上がっています」。
色調は艶やかな黄金色。フルーツキャンディやマスカット、熟した杏のような豊かなフレーバーで優しい果実味を演出。まろやかさとフレッシュ感を併せ持った至高の一本。
しかもこの価格で心地良い後味と喜びを与えてくれるのだから、「3000円でお釣りはいらないよ」と言いたくなるレベルだ。
③ワイン通にこそ投げたい“変化球”
最後に岸田さんがイチオシするのは、先ほどに続き、北海道は平川ワイナリーの人気商品。なんとブドウではなく、厳選された北海道産の梅を原料にして生まれたフルーツワインである。
白い花のアロマと爽やかな酸の特徴を生かした果実感の溢れる味わいだが、岸田さんは「ワイン通にこそ飲んでほしい」と話す。
「シャルドネやブルゴーニュワインを飲み慣れている方は、価格グレードを少し抑えたものをデイリーワインとして購入した場合、やはりどこか物足りないと感じてしまうことが多いと思います。そんな方には、ブドウではない梅を原料とした、まったく別の土俵のワインをあえてオススメします!」。
北海道の気候、風土で育った梅を丹念に醸造したこのワイン。梅由来の酒と聞くと梅酒のような甘いものを連想しがちだが、果実味とフレッシュ感を残した、スッキリとした味わいだという。
数々の食通を唸らせてきた岸田さんによる画期的な提案だが、実は発売当初から知る人ぞ知る人気商品。このトップシェフから放たれた変化球、ありがたくキャッチさせていただこう。
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ちなみに、飲み残したワインを料理に使う家庭も多いが、せっかくのチャンスなので岸田さんに「残ったワインを使ったアレンジ料理のアイディアはありますか」とうかがってみたところ……
「そういう質問をよくされるんですが、僕にとっては簡単な行程だと思ってお伝えしても、原材料が30種類くらい必要だったりするので、家庭向きではない難解なものになってしまうんです(苦笑)」。
……次元が違いすぎたのであった。
人気のあまり、数カ月先まで予約が取れない「カンテサンス」だが、現在は新型コロナウイルスの影響で休業中。再開したあかつきには、グラスシャンパーニュとして提供されている「アンリ・ジロー オマージュ・ア・フランソワ・エマール」で、優雅に平和を祝いたいものだ。
[取材協力]カンテサンスwww.quintessence.jp絶対に家飲みすべき安旨ワイン 自宅時間の増加に比例して増える、家飲み時間。そのパフォーマンスを効率良く上げるため、名だたる業界人から愛飲する安旨ワインをヒアリング。ルールは3000円以下! それだけだ。
上に戻る 七瀬あい=取材・文