37.5歳からの愉悦 Vol.123
2019.12.12
FOOD&DRINK

永福町の焼き鳥店で、酒と肉を愛する看板娘の表現力が独特だった

看板娘という名の愉悦 Vol.95
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。

京王井の頭線の永福町駅。渋谷と吉祥寺のちょうど中間に位置し、急行も停まる便利な街だ。今回訪れたのは焼き鳥の名店「鳥雅」。

外観
外観からしてすでに名店の匂い。
外観
オーナーが独自のルートで仕入れた明治初期の蔵の扉。

店内は大勢の客で賑わっていた。

内観
看板娘の姿も。
内観
透かし彫りの欄間も明治初期のもの。

さて、何を飲もうか。

メニュー
キリンの樽生ブラウマイスターに惹かれる。

しかし、看板娘いわく「うちはクラフトビールも充実していますよ」。

メニュー
おおお……。

最終的に勧められたのは山梨県北杜市、八ヶ岳の麓にあるクラフトビール醸造所、UCHU BREWINGの「MILKY WAY」。製造数が少ないため、販売開始と同時に売り切れるレアな商品だという。

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看板娘、登場

看板娘
「お待たせしました〜」。

こちらは、群馬県前橋市出身の由香さん(31歳)で165cmと長身。この店は、たまたまアルバイト募集の貼り紙を見て応募したそうだ。

ビール
「宇宙醸造所」が作る「天の川」。

公式サイトには「醸造ごとにメインとなるホップ品種を変え、五次元フルーツの多様性を楽しめるヘイジーなIPAです。パラレル楽園的アロマティーーック!!」とある。このハイテンションに違わない超絶的な美味しさだった。

メニュー
料理も美味しそうだ。

由香さんと相談しながら「国産合鴨のタタキ」(1380円)と「半熟卵黄の唐揚げ」(600円)を注文した。

お酒と料理
贅沢なラインナップである。

1日5食限定の「国産合鴨のタタキ」は当然のように美味しい。しかし、それを超えるインパクトを受けたのは「半熟卵黄の唐揚げ」だ。

料理
そっと噛むと口の中でプチっと弾ける。
オーナー
この店でしか味わえない一品を“発明”したのはオーナーの井上雅之さん(39歳)。

「企業秘密です(笑)。半年ぐらい試行錯誤を重ねて完成しました。これを出すのはうちだけでしょうね」。

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由香さんについては、こう評する。

「常にお店のことを考えて動いていますね。僕が決めたことも違うと思ったらどんどん提案してくれるんです。プライベートでもよく食べに来てくれるのも嬉しい」。

オーナーと看板娘
接客には観察力も重要なのだろう。

そんな由香さんに前橋市について聞いてみた。

「うーん、街がすっからかんで空っ風が強いぐらいしか特色はないですね。あ、元旦のニューイヤー駅伝があるか。県庁をスタートして、その辺をウロウロします」。

独特の表現をする人だ。3歳ぐらいのときの家族写真も見せてくれた。

過去写真
由香さん、弟、両親に祖父母。

「お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの家は同じ市内だったので、よく遊びに行っていました。『テリー』っていう犬と『チビ』っていう猫と遊んだり」。

テリーとチビは他界したが、現在、実家では「ミッキー」という猫を飼っている。

ミッキー
お気に入りのポジションでくつろぐミッキー。

「私と弟が実家を出たから両親は寂しかったんでしょうね。譲渡会か何かで出会った保護猫を飼い始めたんです。気性が荒くて時々しか実家に行かない私には全然懐いてくれません」。

由香さんの趣味は「食べること」。それもあって、飲食店での勤務歴は10年を超えている。

「最近感動したのは渋谷の『サジヤ』というビストロで食べたお肉。ひっそりとした佇まいのお店なんですが、料理もお酒も大好きです」。

ロースト
「絶品だった」という豚のロースト。

グラフィック系の専門学校を卒業後、アパレル業界に就職。都内の駅ビルで販売員として働いたが、アパレルの接客スタイルが肌に合わず退社。以降は飲食一本となる。

「そういえば、販売員のときにラブレターをもらったことがあります。『ひと目見た瞬間からあなたのことを〜』みたいな。初対面なのにあらかじめ用意した手紙をカバンから出してきたので、ちょっと怖かったです(笑)」。

手紙には携帯アドレスが記されていたが、もちろん連絡はしなかった。

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トイレ
トイレには「焼き鳥を芸術にした男」が著した本。

さて、そろそろお暇しよう。次は串焼きと冬限定の「鳥の麻婆豆腐」、そしてほかのクラフトビールを堪能したい。

内観
天の川のように並ぶ空き瓶と空き缶。

由香さん、ごちそうさまでした。お会計をお願いします。

看板娘
「また来てくださいね〜」。

読者へのメッセージも書いてくれました。

メッセージ
ミッキーも前橋から応援しています。

【取材協力】
鳥雅
住所:東京都杉並区永福4-6-2
電話:03-6265-8911
https://torimasa-eihukuchou.owst.jp

 

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石原たきび=取材・文

# 居酒屋# 永福町# 看板娘# 鳥雅
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