37.5歳からの愉悦 Vol.65
2018.10.25
FOOD&DRINK

恵比寿のビストロで、看板娘から最上級のBrodo(出汁)が出た

看板娘という名の愉悦 Vol.37
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。

今回訪れたのは「IZAKAYA RESTAURANT」を標榜する恵比寿「AELU&BRODO(アエルアンドブロード)」。店名は日本語の「和える」とイタリア語で出汁を意味する「Brodo」をくっつけたものだ。

店の周辺は工事中。

JR恵比寿駅東口を出てすぐ。たまに行くゲームセンターのすぐ近くにあった。

ビルのエントランス。

エレベーターで3階に上がる。「居酒屋レストラン」という言葉の響きで思い描いていた雰囲気とは異なる瀟洒な店だった。

たしかに、これは「IZAKAYA RESTAURANT」である。

看板娘の姿も見えた。

彼女がそうだろう。

テーブルに着くとカトラリー、ナプキンとともに「ハジマリノサラ」と書かれた紙、そこには、いわゆる日替わりのお通し(650円)のラインナップが記されている。

お酒のオススメはワインだという。
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看板娘のお任せで選んでもらった。

イタリアの赤ワイン、「フランコ・セラ」が登場。

「ピエモンテ州の土着品種、バルベラ・ダスティというぶどうで作られたワインです」

丁寧に説明してくれる彼女は麻里絵さん(29歳)。2018年6月にオープンしたこの店の立ち上げメンバーだ。

「あ、これちょっと見てください。ご予約をいただいたお客様には、リザーブドの札の代わりにメッセージ付きの蝶々の付箋でお出迎えするんですよ」

喜んで持ち帰る客も多いらしい。

「しっかりした味なのに飲み疲れないんですよ」と麻里絵さんが選んでくれた赤ワインは非常に美味しかった。1杯1200円。

軽く喉を潤したら、続いてお食事を。

やがて運ばれてきた「ハジマリノサラ」の本気度に驚いた。

ハジマリ感が半端ない。

バーニャカウダ、大根、シマアジの酒盗マリネ、ズッキーニとペコリーノ。すべてBrodo(出汁)が効いた絶品だ。

さて、看板娘のBrodoについても知りたい。まずは、最近ハマっていることを聞いてみた。

「ハマっているというか、ひたすらかわいいのが姪っ子です。完全に叔母バカになっています」

スマホの待ち受け写真も姪。

「寝ながら笑っているんですよ。たまらないでしょう! 疲れたときはこの写真を見て癒されています」

この日は偶然にも姪っ子ご一同様が来店していた。

2人の看板娘の競演状態。

出不精で休みの日は家でジブリ映画を観ているという麻里絵さん。一方で、レンタル着物で散歩という風雅な趣味も持っている。

中学からの親友らと浅草にお出かけ。

また、父親の実家は千葉県内の食堂。夜になると近所のおじさんたちが飲みにくるという環境で育った麻里絵さんは、自然に飲食関係の仕事を目指す。

「短大で栄養士の資格も取ったのに、なぜか就職したのはコンタクトレンズの販売企業。そこで3年間働きました」

カウンターはトチノキの一枚板。

そんな頃、麻里絵さんは友人に連れられて行った阿佐ヶ谷のダイニングバーで衝撃を受ける。

「オーナーやスタッフが目をキラキラさせて夢を語り合っているんです。逆に、安定志向で落ち着いてしまった自分に気付かされました」

窓からは歩道を広げる工事が見学できる。
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一念発起した麻里絵さんは退職し、そのバーの料理担当として働き始めた。「ああ、この感じ」と子供の頃の記憶が蘇ったそうだ。

「そこからは飲食街道まっしぐらですね。キッチンカーみたいな移動販売に憧れた時期もありましたが、今はこのお店のことしか考えていません」

スタッフからも愛されている麻里絵さん。

恒例の看板娘評を伺うと、店長は「笑顔が最高にいい。あと、チャリを漕ぐのがめっちゃ速いですね」。シェフは「真面目で明るい性格。あと、いい匂いがするのでチャリでは前を走ってほしい」。

ふたりとも、後半に興味深いネタをぶっこんできた。麻里絵さんはオーナーから誕生日祝いでもらった電動アシスト自転車で通勤しているとのこと。

片道約30分、所要時間は電車移動とほぼ同じらしい。

さて、麻里絵さん。お酒のお代わりは何がいいですかね?

「日本酒とおでんという島根のマリアージュで行きましょうか」

ここは貝出汁おでんも名物なのだ。

おでんの出汁は島根産のシジミで取っているという。大根とアメリケーヌソース(400円)、牛タン(500円)を注文した。

出た、絶対に美味しいやつ。

オマール海老や甘海老の殻を炒めて作るのがアメリケーヌソース。そして、島根の日本酒「王祿」(650円)はマイナス5℃で管理できる酒屋にしか卸さないという、こだわりの酒だ。

牛タンは丸々一本を低温調理。大根の上には「食べられる紅葉の葉っぱ」が乗っている。シジミスープはもちろん飲み干す。居酒屋レストランではなく「IZAKAYA RESTAURANT」の真骨頂を見た。

大満足したところで、お会計。麻里絵さんは、就くべくして就いた飲食の仕事で最上級のBrodoを出していた。

悔しいが今日イチの笑顔。

読者へのメッセージもお願いしますよ。

ジブリ好きが高じてキキのコスプレをしたこともあるそうです。

【取材協力】
AELU&BRODO
住所:東京都渋谷区恵比寿1-11-9 3F
電話番号:03-6456-4095
http://aeluandbrodo.jp

石原たきび=取材・文

# ワイン# 居酒屋# 看板娘
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