看板娘のお任せで選んでもらった。
「ピエモンテ州の土着品種、バルベラ・ダスティというぶどうで作られたワインです」
丁寧に説明してくれる彼女は麻里絵さん(29歳)。2018年6月にオープンしたこの店の立ち上げメンバーだ。
「あ、これちょっと見てください。ご予約をいただいたお客様には、リザーブドの札の代わりにメッセージ付きの蝶々の付箋でお出迎えするんですよ」
「しっかりした味なのに飲み疲れないんですよ」と麻里絵さんが選んでくれた赤ワインは非常に美味しかった。1杯1200円。
やがて運ばれてきた「ハジマリノサラ」の本気度に驚いた。
バーニャカウダ、大根、シマアジの酒盗マリネ、ズッキーニとペコリーノ。すべてBrodo(出汁)が効いた絶品だ。
さて、看板娘のBrodoについても知りたい。まずは、最近ハマっていることを聞いてみた。
「ハマっているというか、ひたすらかわいいのが姪っ子です。完全に叔母バカになっています」
「寝ながら笑っているんですよ。たまらないでしょう! 疲れたときはこの写真を見て癒されています」
この日は偶然にも姪っ子ご一同様が来店していた。
出不精で休みの日は家でジブリ映画を観ているという麻里絵さん。一方で、レンタル着物で散歩という風雅な趣味も持っている。
また、父親の実家は千葉県内の食堂。夜になると近所のおじさんたちが飲みにくるという環境で育った麻里絵さんは、自然に飲食関係の仕事を目指す。
「短大で栄養士の資格も取ったのに、なぜか就職したのはコンタクトレンズの販売企業。そこで3年間働きました」
そんな頃、麻里絵さんは友人に連れられて行った阿佐ヶ谷のダイニングバーで衝撃を受ける。
「オーナーやスタッフが目をキラキラさせて夢を語り合っているんです。逆に、安定志向で落ち着いてしまった自分に気付かされました」
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