六本木のダーツバーで、「強烈系」コスプレ看板娘の虜になった
看板娘という名の愉悦 Vol.34
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
努力系。明るい系。気が利く系。看板娘にはさまざまなタイプがいる。しかし、連載34回目にして新しいキャラクターが登場した。「強烈系」である。
訪れたのは六本木のダーツバー、「hello,tomorrow(ハロトモ)」。

店は飲食店ビルの2階にあった。

店内では大きなモニターに海外サッカーの試合が映し出されている。後ほど登場する店長が大のサッカーファンなのだ。

さっそく店長に挨拶をすると、「取材の方が来たから着替えなよ」と看板娘に声をかけた。ビシッとしたスーツにでも着替えるのだろうか。

看板娘はアルゼンチンのユニフォームをまとって登場した。

ところで、そのチューチュー吸っているものは何ですか?
「これは私の栄養源です」

面白くなる予感しかない。それなら、1杯目は「鬼ころし」をいただこうか。
「いや、私が勝手に持ち込んでいるだけでメニューにはないんです。お勧めするならモスコミュールかな」
ドリンクはいずれも700円〜900円程度。チャージは500円だ。

「ウオッカを辛口のジンジャーエールで割って、すり下ろした生しょうがを入れています。美味しいですよ〜」

ご紹介が遅れました。この「強烈系」看板娘は山田忍さん(24歳)。
「みんなからは『山田』とか『山田ちゃん』って呼ばれています。上も下も偽名なんですけど」
話がややこしいが、今回は山田さんで行こう。まずは簡単なプロフィールを伺った。
「出身は埼玉の大宮。授業中もずっと笑っている子供でした。エビが嫌いなので給食に出たときはベランダから投げます。好きな食べ物はハンバーグ。2kgぐらいは余裕です」

さらに、わんこ蕎麦を121杯食べて大食い記念の絵馬をもらったこともあるそうだ。

店長、山田さんの良いところは?
「とにかく元気で盛り上げ上手ですね。あと、意外と真面目だし人の悪口も言いません」

じゃあ、ダメな点は?
「つまんなくなるとお酒を無限にねだるところですかね。しかも、ペースが早いからチューハイ2杯を一度に頼みます」
ここで、カウンターの常連さんからもクレームが入った。
「みんなで海に行ったときに山田が『スク水』を着るっていうから、男が期待して大勢参加したんですよ。そうしたら水着にすらならなくて全員で泣きました」

山田さんのバースデーイベントでは、上の盃にシャンパンを注いで回し飲みしたという。
「日本酒なら一升空けても平気なんですが、あのときは人生で初めて記憶を飛ばしました」
そんな彼女はコスプレイヤーでもある。

「このときは外人さんにたくさん写真を撮られました。姉もコスプレをするので、衣装を一緒に作ったりします」
ここで山田さんがおもむろにロキソニンテープを取り出した。
「さっき、地下鉄の乗り換えのときに階段から落ちたんですよ。よく転ぶから慣れてますけど」

強烈なキャラクターに圧倒されて忘れていたが、ここはダーツバーだ。山田さん、ちょっと投げてみてくださいよ。
「全然ダメですよ。レーティングが4だから初心者よりちょっと上手いぐらい」
全盛期のレーティングが17で、ダーツのDVDにも出演したことがある店長から、「それは初心者だよ」という突っ込みが入る。


さて山田さん、お酒のお代わりをお願いします。
「じゃあ、ジントニックにしましょうか。うちのはちょっと特別なんです」


山田Tシャツに戻った山田さんに色味の正体を聞いた。
「『アンゴスチュラビター』っていう独特の苦味があるリキュールを垂らしているんですよ」
あ、ほんとだ。苦味がアクセントとして効いている。

すっかり山田ワールドの虜になったところで、お会計。最後に読者へのメッセージをお願いします。

【取材協力】
ハロトモ
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石原たきび=取材・文