モノが溢れる消費社会において、僕らの「欲しい」の境界は、気分がアガるか否か。エルメスの生み出すプロダクトは、その意味で、常にワクワクを与えてくれる。
見た目が9割、なんて言われるけれど、目に見える事象の裏側にこそ、魅力が詰まっているんだと思う。
例えば、このトートバッグ。モコモコ&ブルーが愛らしく、幾何学的な模様も入る。当然「見た目」においてのセンスは抜群。“ジャケ買い”さえしたくなるものだ。
ただ、その「向こう側」に、最高峰のレザーを世界から供給される名門であることや、この柄が創業からのアイデンティティである「乗馬の世界」、すなわちジョッキーのウェアからインスパイアされたデザインであることなど、「だからこそ」の背景が広がっている。そこに触れて、我々の「欲しい」はマックスまで跳ね上がるというわけだ。
バッグに入れるものに保温性は不要なれど、冬だから、エルメスだから、このモコモコで気分がアガる。冬コーデの背中を預けたくなるんだ。
清水健吾=写真 来田拓也=スタイリング 髙村将司=文