乗りたかったのは、キブンが乗るクルマ Vol.212
2021.02.20
CAR

クーペなレンジ、ロールスのワゴン。カロッツェリア謹製スペシャル別注車

前回、メーカーや企業が作った世界に一台の車の紹介をしたが、世の中には、カタログの載ってる車じゃ面白くないし、オプションでは満足できない…… じゃあカロッツェリアに理想の一台に仕上げてもらおう、という世界が存在する。

そもそも自動車の黎明期には、自動車メーカーはエンジンや車体を提供するのみで、ボディは個別にカロッツェリアに発注する、という時代が存在した。

今もカロッツェリアは健在だが、表立って顧客からのオーダーを募っていないので、一般にはあまり知られていない。

今回は、そんなカロッツェリアの仕事の一例をご紹介しよう。

 

■レンジローバーの2ドアクーペを

いつの時代も富裕層に愛されてきたレンジローバー。

1970年にデビューした初代は2ドアモデルで、4ドアモデルが追加されたのは1981年のことだった。やがて2代目、3代目と代を重ねていくが、2ドアモデルは初代にしか存在しない。

そんな初代を懐かしんだオーナーあたりが、現行モデルで2ドアモデルが欲しいと発注したのだろう。イギリスの自動車デザイナー、ニールズ・ファン・ゴーイは現行型レンジローバーを2ドアの「アドベンタム・クーペ」に仕立てた。

ボンネットやフロントフェンダー、リアゲートのみがベース車からの流用で、残すボディパネルはすべて職人のアルミ叩き出しで製作されている。

もちろん、内装もオーナーの好みに仕上げられており、フロアマットの替わりに世界三大銘木のひとつと言われるチーク材が床に敷き詰められている。

そのほか、カスタマイズの範囲はオーナーの想像力次第。参考までに「アドベンタム・クーペ」の基本価格は27万ユーロ(約3000万円)となっている。

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■ロールスの現代版シューティングブレークを

最近でこそ「シューティングブレーク」というモデルがラインナップされるようになったが、かつては狩猟用車両としてセダンやクーペをベースに特注するものだった。

ステーションワゴンとの線引きが難しく、ほぼ同義と捉えてもいいだろう。

「シルバースペクター・シューティングブレーク」は、ロールス・ロイスのレイスがベースのシューティングブレークで、イギリスの自動車デザイナー、ニールズ・ファン・ゴーイが手掛けたものだ。

レイスはロールス・ロイスのドライバーズカー、つまり運転を楽しむためのロールス・ロイスなのだが、この車の実用性をもっと高めたいというオーナーの要望に応えたもの。

遠い昔に実際作られていたロールス・ロイスベースのシューティングブレークへのオマージュという意味合いもあるようだ。

エクステリアはシューティングブレーク化した以外、変更点がないところが“純正”風で面白い。

インテリアで特徴的なのは天井のスターライト・ヘッドライニングで、ベースのレイスが1340個のライトを搭載しているところ、シルバースペクター・シューティングブレークでは荷室まで流れるように2000個が配されている。

また、荷室は圧巻の総革張り。また、エンジンは640psから710psと1割ほどパワーアップ。世界限定7台のみのシューティングブレークだ。

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■テスラ純正みたいなシューティングブレークを

かつてのシューティングブレークのベース車といえばロールス・ロイスやアストンマーティン、ジャガーなどが富裕層の間で人気を博した。

つまりは「え?あの高級車を?」と思わせる差別化が大切だったようだ。

ところがイギリスの自動車デザイナー、ニールズ・ファン・ゴーイの名を世界に知らしめた最初のシューティングブレークは、電気自動車のテスラモデルSをベースにした「SB」だ。

ゴーイ氏はオランダ人で数多くの著名自動車デザイナーを輩出することで有名な、イギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業。今はイギリスを拠点としている。

この車両はオランダ人の顧客と、オランダのカロッツェリアとオランダのタイヤメーカーの協力を得て製作された。

特徴的なのは、まったく違和感のないシューティングブレーク化だ。テスラが純正モデルとしてラインアップしていたかのような仕上がりに、センスの良さが光る。

そして、シューティングブレークのフォルムを強調するウィンドウ周りのクロームメッキも良いアクセントに。

上の写真で、愛車にシャンパンを注ぐのがオーナー。このようにオーナー自身が広報写真に登場するのは、ゴーイ氏をいかに応援しているかの証左。つまりはアーティストとパトロンのような関係で、現代に残る古き佳きオートクチュール文化を現代に伝える車なのだ。

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■アルファロメオで屋根の開く空飛ぶ円盤を

最後に紹介するのは、イタリアの老舗カロッツェリア「トゥーリング・スーペルレッジェーラ」の一台。

1926年に創業し、1966年に活動を一時停止。2006年に新体制となって復活を遂げた同社は現在、ミラノに拠点を構え、昔と同様、自動車メーカーの依頼を受けてデザインエンジニアリングなどを請け負っている。

2012年のジュネーブモーターショーでお目見えしたのが、アルファロメオ8Cがベースの「ディスコヴォランテ」だった。

アルファロメオは1952年、カロッツェリア・トゥーリング(トゥーリング・スーペルレッジェーラのルーツ)と「1900 C52」を共同開発。当時としては異例なまでにエアロダイナミクス性能を追求したフォルムが特徴的で、空飛ぶ円盤を意味する「ディスコヴォランテ」と呼ばれた。

そんなディスコヴォランテのオマージュが2012年に登場した新生ディスコヴォランテだ。

今回紹介するのは、「新生ディスコヴォランテ」のオープンモデルとして2016年に投入されたモデル。

アルファロメオ8Cスパイダーがベースになっている。写真ではルーフを装着しているが、簡単に外すことができる。

世界限定7台で、すべてが異なるボディカラー。そんなレアな7台のうちの1台がドイツのフェラーリ・ディーラー「ニキ・ハズララグ」の在庫に並んだので、車業界がざわついた。価格は「応談」となっているが1億円は下らないだろう。

 

古賀貴司(自動車王国)=文

# カスタム# カロッツェリア# レンジローバー
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