乗りたかったのは、キブンが乗るクルマ Vol.170
2020.11.10
CAR

「もはやひとつの“文化”なんですよ」。工業デザイナーにとって憧れのローバー・ミニ

俺のクルマと、アイツのクルマ
男にとって車は名刺代わり。だから、いい車に乗っている人に男は憧れる。じゃあ“いい車”のいいって何だ? その実態を探るため「俺よりセンスいいよ、アイツ」という車好きを数珠つなぎに紹介してもらう企画。


■13人目■
角南健夫さん(47歳)

スナミタケオ。工業デザイナー。メーカー勤務後、2002年に自身の会社「TSDESIGN」を設立。家具、家電、玩具、自転車、ロボットなど、幅広い工業分野の製品デザインを行っている。自身のアウトドアブランド「MONORAL」では、キャンプ用品のほか、自転車も手掛けている。

ローバー・ミニ■

1952年にブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)で開発された「ミニ」。すぐにビートルズやエリザベス女王に愛され、’60年代にはブリティッシュカルチャーのアイコン的存在に。その後イギリスの自動車産業再編により、ミニは80年代にローバー・ミニを名乗るようになる。角南さんのミニは、ローバー時代の最終型である2000年式で、2001年からはBMWが新たな「ミニ」を開発。ローバーまでの時代のミニは「クラシックミニ」と呼ばれている。

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40歳まで、車要らずの自転車生活

車の好みを聞くと、「新しい車で、自分が手を出せる車って、あまり無いんですよね」という。

古い車でいいですよ、と答えたら「ワズやラーダニーヴァのSUVとか…」と、いきなりマニアックなロシア製の車が挙げられた。

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ただでさえ2000年式のローバー「ミニ 」の最終型に乗る角南さんだ。これは昔から数々の車に乗ってきたのでは、と思いきや、免許は40歳になってから取得したという。

「それまでは自転車で事足りていましたから」と角南さん。

学生の頃は春や夏など長い休みを利用して、輪行(電車に自転車を載せて移動)もしながら、日本各地を駆けめぐっていたという。地面にシートを敷いて寝袋に包まる野宿も含め「年間で100泊くらいしたこともあります」。

家電やインテリア雑貨、ロボットなど、多様な工業製品のデザイナーである角南さん。企業などから依頼されてデザインする、というのが基本的な仕事の流れだが、「自分で作ったモノを自分で売ってみたくなったんです」。

そこで2010年から始めたのが、自身のアウトドアブランド「MONORAL」。そのコンセプトは、気が向いたらサッと出掛けて、撤収も簡単。そんな自由なキャンプスタイルに合う道具をデザインし、販売することにした。

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荷物を載せるためにホンダ「ビート」!?

すると「キャンプ場で展示会を開く必要が出てきたんです」。最初は電車で向かったが、電車ではたどり着くのが難しいキャンプ場はいくらでもある。

そこで車があったほうが便利だと思い、免許を取得したという。

ところが購入した車は、中古のホンダ「ビート」。軽自動車のオープン2シーターだ。え!?と思わず驚くと「いや、助手席とリアに付けたキャリアだけで十分載せられますよ」。

何しろ自身のブランド品は「気が向いたらサッと出掛けられる」がコンセプト。家族用キャンプ道具一式なら普通のセダンのトランクに収まるという。

またオープンカーにしたのは、自転車から急に閉塞感のある車に乗り換えるのに抵抗感があったからだとか。

その後2Lエンジン搭載の、これまたオープン2シーターのホンダ「S2000」も追加で購入。さらに最近はコンパクトで荷室が広いホンダ「モビリオスパイク」や、本格的な4WDワンボックスカーである三菱「デリカスターワゴン」も揃え、現在「ミニ」を含めると5台あるという。

「S2000」はホンダ「ビート」からの流れで、「モビリオスパイク」や「デリカスターワゴン」は、積載性に優れているからと、車名を聞いただけで購入理由はなんとなく想像できたが、そうなると余計「ミニ」だけ異質に感じる。

角南さんは「ほぼ衝動買い」だというが、よくよく聞いてみると「ミニ」は「ミニ」で、仕事にとても役立つ一台だった。

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ミニは絵になる車

近所の中古車屋で見つけたミニ。もともと角南さんの大好きな車で、いつかは乗ってみたいなと思っていたという。

「スーパーカーブームの波をザブンと被った世代で、小さい頃はランボルギーニカウンタックとか、フェラーリ512BBとか、いろんな車に憧れていました」。

一方で小さい頃から自転車にも興味を持つようになり、幼心に、自分は乗りモノにハマるタイプだと気づく。

ハマったら最後……なのは、免許取得から7年足らずで現在のラインナップを揃えたことからも、おわかりの通り。だから40歳で免許をとるまで、あえて車を避けてきたのだという。

「ミニは非常に絵になる車です」と角南さんは言う。

「キャンプという行為は、すごく古典的で、野性的。土の上で、木々の中で、布や薪のある中で、近代的な車って、似合わないと思います」。その点、古典的なミニは実は違和感なくテントの横に馴染み、ルーフにカヌーを載せても絵になるという。

「キャンプ用品を撮影する際にも、ミニなら使えるなと思ったんです」。もしほかに置くなら「ランドローバーディフェンダーや、フォルクスワーゲンのタイプII(ワーゲンバス)とか」。これがまず購入理由のひとつ。

さらに「工業製品でこれだけ長く、幅広い層に愛されているモノは、あまりない」ことも衝動を抑えきれずに購入した理由のひとつだ。

角南さんの乗る、いわゆる「クラシックミニ」は、製造が終わってもう20年が経つにも関わらず、未だに世界中に愛好家がいて、彼らの支持もあって今もさまざまな中小メーカーからパーツが供給されている。あるいは中古パーツが流通している。

「ひとつの文化として残っているんですよね。自分も工業デザイナーとして、そういうものをひとつは作りたいなと思う、憧れの存在なんです」。

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自転車も再び。2+4輪活動は続く

絵になる車「ミニ」とともにキャンプイベントがあれば名古屋でも長野でも出掛けていく。プライベートではスタッドレスタイヤを履いて長野へスキーをしに行ったこともある。

「買ってみて初めて気がついたのは、想像以上に荷物を積めること」だという。キャンプイベントで使う展示ブースとテント5つは十分積める。カタログやブースで自分たちが座るイスも載る。

「それで私と、もうひとりの社員が乗って」イベントへ行ける。

パネルに塗られたクリア塗料がはげてきたそう。そのうち全部剥がしてオイルを塗りたいとか

購入した時点の走行距離は10万kmを超えている。それでも懸念していたトラブルは、3〜4年経つが未だにないという。

「ほかの4台もそうですが、走行距離はあまり故障とは関係ないですね。壊れる車は壊れます(笑)」。

「ミニ」で十分事足りている。それでも「モビリオスパイク」や「デリカスターワゴン」を加えたのは、アウトドアブランドで、自転車も手掛けるようになったからだ。

角南さんはその自転車のフレームをデザインしている。「チタン製フレームだから軽いんですが、さすがにミニに5台は載せられないので」。先日、その自転車とともにチベットへ出掛け、商品のプロモーションビデオを制作してきた。

角南さんの身長は178cm。それでも天井に頭がつくことはない。

今気になる車を聞くと、「空冷エンジンのポルシェって、好きな人は多いですよね。いつかは味わってみたいな」という。

自転車と車でどこまでも駆け回る。小さい頃に気づいた“乗りモノ沼”に、40歳から楽しそうに浸かっている角南さんだった。

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鳥居健次郎=写真 籠島康弘=取材・文

# ミニ# ローバー#
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